日経平均は続伸、上昇スタート後は上値の重い展開/ランチタイムコメント
日経平均は続伸。225.40円高の26199.25円(出来高概算5億7192万株)で前場の取引を終えている。
国内連休中の米株式市場のダウ平均は6日に700.53ドル高、9日に112.96ドル安となった。6日は12月雇用統計が労働市場の過熱緩和を示唆したため、金利先高観が後退。長期金利が一段と低下したことでハイテク株の買いが活発化した。9日はFRB高官が依然としてターミナルレート5%以上が必要との見解を主張したため失速。インフレ指標の結果発表を警戒した売りが優勢となった。ナスダック総合指数は264.05ポイント高、66.36ポイント高と連日上昇、堅調に推移した米株市場を受けて、日経平均は202.76円高の26176.61円と3日続伸して取引を開始。その後は、プラス圏での堅調もみ合い展開が続いている。
個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が堅調に推移、ファーストリテ<9983>やキーエンス<6861>、SMC<6273>、ダイキン<6367>などの大型株が上昇した。また、郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株、三井物産<8031>や三菱商事<8058>などの商社株、ソニーG<6758>や日本製鉄<5401>、信越化<4063>なども上昇している。アルツハイマー病薬が承認を取得したエーザイ<4523>、アームのロンドン上場めぐる協議再開と伝わったソフトバンクG<9984>も大幅上昇。ほか、力の源HD<3561>、ソシオネクスト<6526>、TOTO<5332>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。
一方、三菱UFJ<8306>やみずほ<8411>などの金融株の一角が軟調に推移した。また、NTT<9432>やKDDI<9433>などの通信株も下落。東京電力HD<9501>や関西電力<9503>、東北電力<9506>などの電力株、武田薬<4502>、リクルートHD<6098>なども軟調に推移した。そのほか、第1四半期は想定下振れで大幅減益となった良品計画<7453>が大幅下落。エスプール<2471>、日医工<4541>、JINSHD<3046>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。
セクターでは鉄鋼、機械、非鉄金属が上昇率上位となった一方、電気・ガス、パルプ・紙、銀行業が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の63%、対して値下がり銘柄は32%となっている。
本日の日経平均株価は、上昇スタート後にプラス圏での堅調もみ合い展開が続いている。連休中に米株式市場で主要指数が上昇したことが東京市場の株価の支えとなった。中でも、ナスダック総合指数が2日間合計で3.21%上昇、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が6.68%上昇となり、東京市場でハイテク株やグロース(成長)株、半導体関連株の株価支援要因となった。国内要因では、「全国旅行支援」が本日再開されることもあり、経済の本格回復への期待感が高まったことも市場の雰囲気を明るくした。一方、外為市場で円高・ドル安に振れたことは東京市場で輸出株などの重しとなった。
新興市場でも堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇してスタート。その後は、上げ幅をじりじりと広げており、日経平均よりも上昇率は大きい。賃金上昇圧力に緩和の兆しが見られて米国株が上昇したことは国内の個人投資家心理の改善につながった。また、米長期金利が低下しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとっては追い風となっている。前引け時点で東証マザーズ指数が1.23%高、東証グロース市場Core指数が2.06%高と時価総額上位銘柄が上昇をけん引している。
さて、6日に発表された米雇用統計の結果を再度確認しておく。非農業部門雇用者数の伸びが22.3万人と市場予想(20.5万人)をやや上回った。失業率は3.5%と11月の3.6%から改善。一方で、平均時給は前年比+4.6%と市場予想(+5.0%)を下回り、11月(+4.8%)から減速した。雇用者数及び平均時給の伸びは共にまだ水準としては高く、米労働市場の逼迫継続を示唆している。
10日のブルームバーグでは、アトランタ連銀のボスティック総裁が「われわれは決意を固く持ち続ける必要がある」と発言し、政策金利を5-5.25%に引き上げることが正当化されると述べた。また、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁も米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、政策金利は5%を幾分上回る水準まで引き上げられるとの見方を示したようだ。ただ、両氏とも利上げ終着点の具体的な水準は今後発表されるインフレ統計次第としている。今後は、12月CPIの結果と、1月31日-2月1日開催のFOMCで2会合連続となる0.5ポイント利上げか、0.25ポイントへの利上げ減速か、市場の注目が集まるだろう。
そのほか、弱気派として知られるモルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏は、「リセッション(景気後退)不安の中で米国株は悲観論者の多くが想定する以上の大きな下げに見舞われ、年間では金融危機以降で最大の下落率となる公算が大きい」と予想しているという。また、「市場のコンセンサスは方向としては正しいかもしれないが、程度を見誤っている」と述べ、S&P500指数は現水準より約22%低い3000前後で底打ちする可能性があるとの見方を示した。
また、前週5日のブルームバーグ記事で恐縮だが、「2022年の株式市場では痛い目に遭ったが新しい年には一息付けるのではないかと期待している投資家は落胆する公算が大きい」とパイパー・サンドラーのストラテジストであるマイケル・カントロウィッツ氏が指摘した。FRBががむしゃらにインフレ抑制に動いており、市場は幾分か普通ではない状況と闘っていると説明したうえで、S&P500指数が16%下落し3225になると見込んでいる。
昨年末の同欄でも示唆したように、筆者や多くの市場関係者が今年初めにかけて株式市場が更に下落するというシナリオを警戒している。引き続き、インフレ指標やFRB高官の発言、地政学リスクの動向など、警戒する材料は多い。昨年から何度も言っているが、世界的に様々なリスクが散見されるなか、暗号資産業界に衝撃を与えた暗号資産取引所FTXの破綻のように、株式市場でもいきなり市場が動揺する材料が飛び込んでくる可能性も0ではない。何が起こるかわからない市場環境であるからこそ、今年前半は警戒心を忘れずに相場を見守っていきたい。さて、後場の日経平均は堅調もみ合い展開が続くか。米株先物の動向を横目に、日経平均がプラス圏を維持できるかに注目しておきたい。(山本泰三)
《AK》