明日の株式相場に向けて=風立ちぬ早春、黒田節一人舞台

市況
2023年1月16日 17時00分

週明け16日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比297円安の2万5822円と続落。再びフシ目の2万6000円台を下回った。米国株市場は前週末も主要株指数が朝安後に切り返し、しぶとく上値指向を継続している。米国以上にドイツ・フランスなど欧州主要国の株式市場は年初から軒並み上げ足を強めている。また、中国、韓国、台湾などその他のアジア株市場も一斉につむじ風に巻かれるような株高基調にある。目先はこの世界株高の構図になぜか乗ることができない日本という構図が出来上がってしまっている。

いうまでもなく日銀の金融政策変更に対する思惑が株価の上値を重くしている。世界的にインフレが進むなか、現状は日本だけがマイナス金利政策を継続中という状況下にあるが、この稀有な存在であることを返上し、異次元から脱却を図ろうとする日銀が悪者となって株売りの材料にされている。まだ思惑段階ながら、中央銀行が金融政策で正常化、つまり他国と足並みを揃えようとする動きによって売りの砲火を浴びる、というのも不条理ではあるが、マーケットでは歪みを矯正する過程で痛みが生じるのは基本避けられない。

具体的には足もとの外国為替市場で強力な円高誘導が起こっていることが、全体企業業績にマイナス方向の影響を及ぼすという論理で株安とリンクしている。マイナス金利脱却の前に、順番的にはその外堀を埋める形でイールドカーブ・コントロール(YCC)の解除が優先される可能性が高いとみる市場関係者が多いようだが、いずれにしてもYCCとマイナス金利撤廃という、この2つの関門をくぐる過程において日経平均のボラティリティは高まらざるを得ない。今週の17~18日に行われる日銀金融政策決定会合は近年では類を見ないくらい、マーケットにインパクトを与える会合となりそうだ。仮に十年一日のごとく“黒田節”で「現状維持」を貫いたとしても、それはそれでニュース性があり大きな風が生じることになる。

しかし、大勢的には近視眼的な見方に偏っている可能性も否定できない。例えば、ちょうど1年前の今ごろのドル円相場は1ドル=114円前後で推移していた。実勢と比べ13円程度も円高水準にあったのだが、日経平均の方は2万8000円台前半に位置していた。足もとの株式市場では今後の円高余地を織り込む形で企業業績への影響を懸念した売りが出ているとしても、1年前と比べ大幅な円安水準にありながら、2万5000円台まで叩かれているのは、冷静に見ればオーバーシュートした売られ方という判断も成り立つ。すべては日銀プレーに帰結する不合理な株の値動きであり、だからといって今すぐに買い向かって報われるというものでもないが、早晩訪れるであろうアンワインド局面を見込んで今週の下値を買い下がっておくのは、投資戦略として十分に合理的だ。

一方、米国株市場では相変わらず金融引き締め策の打ち止めだけでなく、その先の“利下げ”を織り込むような楽観がマーケットを支配している。これもやや行き過ぎている感が否めず、こちらは1月31日~2月1日の日程で行われるFOMC前後に夢から醒めるように下値を試す展開も想定される。そのタイミングで日本株が上値を目指すというのは出来過ぎだが、1月後半から2月初旬にかけて米国株と日本株のデカップリングがマーケットの隠れテーマになるかもしれない。

物色対象は全体指数の影響を受けにくい中小型の個別材料株ということで、当欄でもその路線で銘柄を取り上げてきたが、全体が戻りに転じる局面となれば、ショートカバーも含め大型株にも資金が還流する。そうしたなか、やはりNISAの政策的支援が利いているのか、高配当利回り株に対する投資家のニーズが思った以上に強い。それを考慮して、長期スタンスで仕込み場提供の可能性がある大型株にも着目。海運株以外で、配当利回りが5%を超える今期増益見通しの大型株では、日本特殊陶業<5334>、大和工業<5444>、兼松<8020>、ソフトバンク<9434>などが挙げられる。

あすのスケジュールでは、日銀の金融政策決定会合が18日までの日程で行われる。このほか、2022年11月の第3次産業活動指数も経済産業省から発表される。海外では10~12月の中国国内総生産(GDP)、12月の中国工業生産高、12月の中国小売売上高、1~12月の中国固定資産投資、1~12月の中国不動産開発投資、12月の英失業率、12月のZEW独景気予測指数、1月のニューヨーク連銀製造業景況指数など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2023年01月16日 17時15分

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