明日の株式相場に向けて=「日銀プレー」錯綜する思惑の先に待つ未来
きょう(17日)の東京株式市場は主力株を中心に終始買い優勢となり、日経平均株価が前営業日比316円高の2万6138円と3日ぶりに反発。日経平均は300円を超える上昇で2万6000円台ラインを再び跨いできた。思ったよりも値幅が伴う切り返しではあったが、その一方で高揚感は感じられない地合いだったともいえる。日銀の金融政策決定会合の結果公表と黒田日銀総裁の記者会見をあすに控え、デイトレーダーを除き投資家サイドとしては身動きができないというのが実情ではなかったか。
きょうの後場寄り時点で市場関係者に聞いた話では「先物主導で全体指数が高いとはいえ、売りも買いも新規での参戦組はかなり少数派といってよく、総じて見送りムードが強い」(ネット証券アナリスト)という。また、別の市場筋からは「日銀の手の内は限られているようでいて、何が出てくるのかフタを開けてみないことには分からない怖さがある。この怖さを感じているのは、むしろショートポジションをとっている方で、きょうはその持ち高調整(一部買い戻し)の動きが出ている」(中堅証券ストラテジスト)という声が聞かれた。この2つの話を総合すると、全体株価が上昇したのは先物絡みのインデックス売買中心で実需の買いは乏しく、前週末と週明けに日銀プレーで売りから入った向きが、決定会合後の株価上昇の可能性を警戒してポジションを軽くした、というのが真相のようである。
普通に考えれば、今回の決定会合で考えられるケースは主に二つ。一つは前会合に続く連続の政策修正は行わず「現状維持」で様子を見るというパターン。そしてもう一つはイールドカーブ・コントロール(YCC)の許容変動幅を更に広げるか、もしくは撤廃するというYCC政策の変更である。
なお、日銀にはマイナス金利をどうするかという課題も残っているが、「マイナス金利を解除するという動きがあるとすれば、それはYCC撤廃の後もしくは同時に行うのが蓋然性の高い選択肢」(生保系エコノミスト)という指摘で、今回の会合でいきなりマイナス金利にメスを入れる公算は小さい。また、YCCの許容変動幅を広げる場合、常識的には現状から0.25%引き上げ0.75%にするという手法が考えられるが、それを行ってもまたもや日銀の防空圏を突き破るような海外投機筋による債券売りの仕掛けを誘発するだけという声もある。それならば、いっそのこと全面解除の方がすっきりしていて、短期的に波乱に見舞われても、結果的に海外投機筋の揺さぶりが延々と続く状況からは解放される。
では国内の経済状況はどうか。ここに焦点を当てずして日銀の一挙一動のみを注視するのは本末転倒となるが、直近の経済指標もやはり現在の日銀政策の妥当性欠如を示唆している。昨年12月の企業物価指数は119.5と前年同月比で10.2%の大幅上昇を示し、これにより22カ月連続で前年同月を上回るとともに、指数として1960年統計開始以降の最高を更新した。燃料コスト上昇を価格転嫁する動きが加速し、もはや止まらなくなっている。これはいわゆる「BtoB」の価格動向であるわけだが、これが「BtoC」つまり消費者を対象とする価格に漸次転嫁されてくるのは時間の問題であり、国内のインフレ高進が大波と化して消費者に襲いかかるという絵図が見えているのだ。
こうした背景から日銀の政策修正の動きは避けられないとの思惑が広がり、会合後に日経平均が大きく下値を試す展開となることを予想した空売りを呼び込んだのは、容易に推察できる流れである。ところが、にわかにもう一つの思惑が浮上した。それは「日銀が最近は単なる見せ札と化していたETF買いを再び本格始動させることで、YCC撤廃による株式市場への衝撃を和らげる」(ネット証券アナリスト)というもの。日銀のETF買いは実質的に金融緩和効果があり、ある意味「逆噴射的」な動きだが、株価を下支えして消費意欲の減退を防ぐという大義名分が立つ。これをやられたら売り方としては悶絶するよりない。実現性は低いが、そうした思惑が発端となって高揚感のない戻り相場を演出した可能性がある。いずれにせよ、あすの株式市場が錯綜する思惑の結末を示すこととなる。
あすのスケジュールでは、このほか2022年11月の機械受注、11月の鉱工業生産確報値、12月の訪日外国人客数などが発表される。海外では、12月の英消費者物価指数(CPI)、12月の米生産者物価指数(PPI)、12月の米小売売上高、12月の米鉱工業生産・設備稼働率、11月の米企業在庫、1月のNAHB住宅市場指数などが注目される。(銀)
最終更新日:2023年01月17日 17時22分