明日の株式相場に向けて=圧倒的強気ならばそれは備える時
きょう(7日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比8円安の2万7685円とわずかながら反落。朝方は買い優勢で始まったものの後場は息切れする展開となった。出足こそ円安を頼りに高く始まったものの、その後は徐々に下値を切り下げる展開で、取引後半には小幅ながらマイナス圏に転じる格好となった。一方、下値では買いが厚く底堅さを発揮した。銀行株が買われたこともあってTOPIXは3日続伸して引けている。値上がり銘柄数も値下がりを上回っており、依然として買い気満々のようにも思えるが、実際は短期筋が中心で、半身に構えた投資スタンスが透けて見える硝子の上昇トレンドといってもよい。
前日まで日経平均は4連騰とはいえ、この間の上げ幅は360円強にとどまっている。欧米と比べ依然として出遅れ感の強い日本株が、この程度で目先買い疲れ感が生じているというのも憚(はばか)られるのだが、後ろを振り返れば既に年初から結構なハイペースで急勾配の坂道を駆け上がってきた。前日まででサイコロジカルラインは10勝2敗と強気偏重が明らかで、プライム市場の騰落レシオ(25日移動平均)も118%と過熱ゾーンとの境界線である120%ラインに前日時点でほぼ到達していた。
米国株市場はインフレ警戒感のピークアウトと同時に金融引き締め懸念の後退を買いの拠りどころとしているが、一方で企業業績の悪化という現実の風景を見ないふりをしているようなところがある。米国株を見て動く日本株も同様だ。“外部環境から判断して云々”ということ自体が、相場の流れを見誤る悪しき作業であるケースも多く、実際その大局観からショートポジションを高めた挙げ句に踏まされる(買い戻しを強制される)というのが、これまでの典型的な“売り方が作る相場”でもあったわけだ。ただ、今は妙に危険な匂いが漂う楽観に包まれている雰囲気がある。
個人投資家心理も強気に傾き過ぎているきらいがあり、ネット証券大手の話によると「同社店内では個人の土俵であるグロース市場への資金流入が目立ってきた。グロース市場の信用買い残高は直近9カ月で最高水準に積み上がっている」という。これは米国市場でも同じような状況が観測されていて、小型株指数のラッセル2000は前週2日に2000の大台を突破、1日に行われたパウエルFRB議長の会見中にミーム株の一角が値を飛ばすといった現象も話題となった。
個人だけではない。機関投資家もまるで“買わざるリスク熱”に浮かされるかのように資金を投下している。目先の市場で話題となっていたのは全米アクティブ投資マネージャーズ協会が算出している指数「NAAIM持ち高指数」が、前週1日の時点で78%台まで上昇、昨年4月上旬以来約10カ月ぶりの水準に拡大しているという話で、「これはロングポジションを取る機関投資家の比率がショート筋を凌駕するほど圧倒的に勝っている状況を示唆している」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。また、「投資家マインドの偏りを示す指標として注目度が高い恐怖・強欲指数についても直近76まで上昇しエクストリームグリード(超強欲)のレベルに到達した」(同)とし、これは言うまでもなく歯車が逆回転を始めるタイミング、アンワインドに身構えておく必要性を暗示している。
今週末10日はオプションSQの算出日で、あすは“SQ前の魔の水曜日”にあたる。仮にここをうまくやり過ごしても、足もとはかなりの道悪で足を取られる可能性は当面の間付きまとう。日銀の次期総裁候補として雨宮正佳副総裁が有力視されており、それにマーケットがやや安堵しているようなムードもあるが、万が一その既定路線から外れたシナリオになった場合なども考慮して、今週はできるだけキャッシュポジションを高める算段をしておいた方が無難かもしれない。
あすのスケジュールでは、22年12月の国際収支統計、1月の貸出・預金動向、1月の対外・対内証券売買契約、1月の景気ウォッチャー調査など。また、海外ではインド中銀、ポーランド中銀が政策金利を発表するほか、12月の米卸売在庫・売上高、ウィリアムズ・NY連銀総裁の討論会参加など。国内主要企業の決算では東レ<3402>、富士フイルムホールディングス<4901>、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532>、日本マクドナルドホールディングス<2702>、ユニ・チャーム<8113>などがある。海外ではウォルト・ディズニー<DIS>の決算発表が注目される。(銀)