明日の株式相場に向けて=吹き荒れるバイオ旋風、mRNAの思惑も
きょう(16日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比194円高の2万7696円と反発。日経平均は日々上げ下げを繰り返しているが、直近まで4営業日連続陰線で、引けにかけて手仕舞い売りに押される傾向が目立っていた。株価の先高期待が強いと足の長い資金が入りやすく、取引開始時よりも大引けの方が高くなる。その場合は陽線となるのだが、株価が上昇していても陰線が多い場合は、翌日に買いポジションを持ち越したくないという投資家心理が投影されている。しかし、きょうは小さめではあるが陽線で引けており、根強い物色意欲を映した。TOPIXはフシ目の2000大台を終値で回復している。
米国株市場の方は、根拠なき楽観と言えば叱られそうだが、リセッションを回避して米景気を軟着陸させようというソフトランディング期待にとどまらず、直近はノーランディングすなわち着陸せず飛行を続けたままで、今回のインフレをやり過ごせるという見方が浮上しているようだ。サービス価格の沈静化は時間がかかりそうで、金融引き締めが長期化するという懸念とノーランディングのシナリオは相容れないようにも見えるが、この妙な強気ムードが逆回転し始めると怖い意味もある。東京市場も油断は禁物であり、足もとをよく確かめながら、急がず焦らずの気持ちで相場と対峙していくことが求められる。
個別ではバイオ関連株が一斉蜂起の様相をみせている。当欄で取り上げたオンコリスバイオファーマ<4588>やクリングルファーマ<4884>の上げ足が一段と鮮烈となっているが、現状はもはや総花的な上昇に近い状況となってきた。個別にリリース(買い材料)が出てこないと元来動意しにくいのがバイオの特徴ではあったが、ここにきて状況が変化し、ピンポイントではなく”バルク買い”に発展している。材料が発現した銘柄はもちろん、そうでない銘柄も同じ歩調で株価水準を切り上げるケースが目立ってきた。
当該企業が手掛ける分野に関係なく、いわば全体の水かさが増すような買われ方だが、市場では「バイオ関連は外資系証券経由などで貸株調達によるショートポジションが溜まっていたが、これが解消される動きが観測され、株価に浮揚力を与えているようだ」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘がある。バイオ関連は空売りができない片道信用銘柄が多いが、そうした銘柄の中で買い残高が高水準に積み上がっているものに、貸株調達による売りが仕掛けられやすい。先行投資型のビジネスモデルゆえ足もとの収益は赤字が続いているような銘柄も多く、PERなど指標面でのストッパーが機能しないのが弱み。追い証に絡む投げを誘発すれば下げが加速するため、売り方はそこを衝いてくる。
しかし、今はその逆流が始まっている。キャンバス<4575>などは材料不明のまま噴き上げ、値幅制限いっぱいの500円高に買われたが、踏み上げ相場の色彩が濃い。これ以外にも個人投資家の提灯買いだけでは動かないような銘柄が軒並み急騰している。
では、なぜこの時期にということになるが、一つは企業の決算発表が大方終了し、一時的なエアポケット状態にあることで、決算プレーに集中していたホットマネーが次の入り江を探していたということ。もう一つの背景はメッセンジャーRNA(mRNA)医薬品の研究開発絡みだ。具体的には「福島県で今春から稼働開始予定にあったバイオ工場の存在が思惑を高めているのではないか」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。mRNAは新型コロナワクチンだけではなく、その他にも応用が利く可能性が高く、第一三共<4568>が発表して話題となったインフルエンザワクチンへの応用や、がん治療薬の開発にもつながるものとして脚光を浴び始めている。バイオセクターを一括りで「mRNA医薬(ワクチン)」関連というのは乱暴だが、まだ初動で見えない部分が多いだけに思惑の宝庫となっている。創薬支援のアクセリードと協業体制にあるナノキャリア<4571>は動兆しきりだが、株価はまだ200円台に位置する。このほか、株価中低位のバイオ関連としてリボミック<4591>、ブライトパス・バイオ<4594>、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所<4576>、プレシジョン・システム・サイエンス<7707>、そして当欄でも継続的に追ってきた免疫生物研究所<4570>などもあわせてマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、3カ月物国庫短期証券の入札が午前中に行われる。また、海外では1月の英小売売上高のほか、1月の米輸出入物価、1月の米景気先行指標総合指数などが発表される。このほか、バーキン・リッチモンド連銀総裁の講演も予定されている。(銀)
最終更新日:2023年02月16日 18時11分