富田隆弥の【CHART CLUB】 「日銀新総裁には市場の活性化を期待する」
◆日銀総裁への就任が予定される植田和男氏の金融政策運営について、「期待できる」との回答が7割を超えたという(2月27日付日本経済新聞)。QUICKが証券会社や生命保険会社などの債券市場関係者を対象に調査を実施したもので、「植田氏のもとで緩やかに金融政策の正常化を進めてほしいとの期待が高まっている」と伝えている。ただ、「金融政策の正常化」が何を指しているのか筆者にはよく分からない。
◆金利をコントロールしていた黒田現総裁の政策は正常でない、ということか。確かに、これまで日本の金利は実質的に固定され、債券市場は動きを失って「商い出来ず」となる日も珍しくなく、投資マネーは遠のいていた。これは誰が見ても正常と言える状況ではなかった。
◆株式でも日銀のETF(上場投資信託)買いが市場を歪めている。日銀のETF保有額は51兆円を超し、日経平均株価はここ2年間、2万6000円~2万9000円のレンジで膠着している。「大胆緩和」も当初は“アベノミクス”とのタッグによりマーケットにインパクトと好結果をもたらしたが、5年、6年、7年と月日の経過とともに新鮮味は薄れ、マンネリ化した印象は否めなくなった。
◆ならば、債券も株式も、市場関係者が植田新総裁に期待するのは、「黒田踏襲」でなく「市場の活性化」であるべきだろう。金利も為替も、そして株価も下落することはあろうが、動くところにマネーは集まり、市場の「活性化」をもたらす。経済学者の植田氏ならこのマネーの基本を知らないはずがない。そこに筆者は期待している。
◆さて、日経平均株価だが、2月22日に2万7046円まで下落して日足は「陰転」を暗示したが、翌営業日の24日にすかさず切り返して、集束する移動平均線(25日、75日、200日線)をクリアした。その後もこれら移動平均線を割ることなく推移しており、22日の下落が「ダマシ」だった可能性もある。
◆だが、まだ方向感は出ていない。日経平均株価のチャートを上昇基調に戻すには、2月6日の高値2万7821円を抜かねばならず、逆に2月22日の安値2万7046円を割り込むと陰転を確定させることになる。当面は、この上下のポイントを抜く方向が焦点になる。
(3月2日 記、次回更新は3月11日を予定)
情報提供:富田隆弥のチャートクラブ
株探ニュース