為替週間見通し:米利上げ長期化予想でドルは下げ渋る可能性
【今週の概況】
■米長期金利上げ渋りでリスク選好のドル買い縮小
今週のドル・円は伸び悩み。3月1日発表の2月米ISM製造業景況指数を受けてドル・円は135円26銭まで下落したが、仕入れ価格指数は昨年9月以来の水準に上昇したことから、インフレ緩和の期待は後退し、まもなくドル買いが優勢となった。米ミネアポリス連銀カシュカリ総裁が政策金利のピークは12月時点の見通しである5.4%を上回る可能性があるとの見方を伝えたこともドル買い材料となった。2日発表の10-12月期非農業部門労働生産性改定値は大幅に下方修正され、新規失業保険申請件数は減少したことから、米長期金利が一段と上昇したこともドル買い・円売りを促す一因となった。2日のニューヨーク市場でドル・円は昨年12月以来となる137円09銭まで買われた。
3日のニューヨーク外為市場でドル・円は、136円42銭まで上昇後、135円75銭まで反落した。ボスティック米アトランタ連銀総裁が小幅な利上げを推奨したため、長期金利は低下し、ポジション調整に絡んだドル売り・円買いが優勢となった。この日発表された2月ISM非製造業景況指数は市場予想を上回ったものの、長期金利は低下し、ドルの上値は重くなった。ドル・円は135円83銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:135円26銭-137円09銭。
【来週の見通し】
■米利上げ長期化予想でドルは下げ渋る可能性
来週のドル・円は下げ渋る可能性がある。米国でインフレ鎮静化への期待感が後退するなか、2月以降に発表された米国経済指標の多くは雇用統計を含めてまずまず良好だった。2月ISM製造業景況感指数では仕入れ価格指数が上昇。直近発表の新規失業保険申請件数は市場予想を下回った。来週発表の2月米雇用統計は、非農業部門雇用者数が1月の大幅増の反動で前月比+22万人程度と予想される。また、失業率は歴史的低水準の3.4%と前回から横ばいの見通し。一方、平均時給は堅調とみられ、賃金コストの上昇によるインフレ高進が意識されやすい。今月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25ポイント幅の利上げが予想されているが、一部で0.50ポイント幅の利上げも予想されている。
一方、3月9-10日に開催される日銀金融政策決定会合では、現行の緩和政策を維持する公算。来月任期満了の黒田総裁は大規模緩和政策を維持する必要性を強調するとみられ、リスク回避の米ドル売り・円買いは後退する見通し。ただし、金融緩和策継続は織り込みのため、リスク選好的な米ドル買い・円売りが一段と強まる可能性は低いとみられる。
【日本銀行金融政策決定会合】(9-10日開催)
日本銀行は9-10日に金融政策決定会合を開催し、現行の緩和政策を維持する公算。黒田東彦総裁による最後の記者会見が注目される。大規模緩和政策を維持する必要性が強調されれば、円買いは後退しよう。
【米・2月雇用統計】(10日発表予定)
10日発表の米2月雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比+22.0万人と、前回から減少、失業率は3.4%と前回と同水準となる見通し。一方、平均時給は堅調とみられ、米金利高・ドル高の材料に。
予想レンジ:134円50銭-137円50銭
《FA》