後場に注目すべき3つのポイント~踏み上げの様相強める日本株

市況
2023年3月9日 12時20分

9日の後場の取引では以下の3つのポイントに注目したい。

・日経平均は5日続伸、踏み上げの様相強める日本株

・ドル・円は下げ渋り、日米金利差を意識

・値上がり寄与トップは東エレク<8035>、同2位はアドバンテスト<6857>

■日経平均は5日続伸、踏み上げの様相強める日本株

日経平均は5日続伸。160.37円高の28604.56円(出来高概算6億1142万株)で前場の取引を終えている。

8日の米株式市場でダウ平均は58.06ドル安(-0.17%)と小幅続落。金利の上昇一服を好感した買いが先行。その後、予想を上回った雇用関連指標や、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が下院での議会証言で3月会合での大幅利上げも除外しない姿勢を表明すると金利が上昇に転じて売りが再開。ただ、概ね織り込み済みの内容で終盤にかけては買い戻され、ダウ平均は下げ幅を縮小。ナスダック総合指数はプラス圏を回復し+0.39%と3日ぶり反発。一方、東京市場では需給主導の形で買いが先行し、日経平均は203.92円高と大きく上昇して始まった。寄り付き直後に28734.79円(290.6円高)まで上昇した後は騰勢一服となったが、ハイテク株などに買いが入る中、その後も28500円を優に超えた水準での推移が続いた。

個別では、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅高を受けてアドバンテスト<6857>、ディスコ<6146>、ルネサス<6723>、ソシオネクスト<6526>のほか、村田製<6981>、イビデン<4062>などのハイテクが大きく上昇。三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>の銀行、東京海上<8766>、MS&AD<8725>の保険のほか、三井物産<8031>、双日<2768>の商社、日本製鉄<5401>、神戸製鋼所<5406>の鉄鋼、ファナック<6954>、SMC<6273>の機械なども高い。イトーヨーカ堂の店舗数大幅削減が報じられた7&I-HD<3382>は大幅高。

レーティング格上げが観測されたサンケン電気<6707>は急伸。採用管理システムを提供するHRクラウドへの投資を発表したピアラ<7044>、決算が好感されたBガレジ<3180>、既存店売上動向が材料視されたトレファク<3093>なども大きく上昇した。

一方、サイボウズ<4776>、Sansan<4443>、ギフティ<4449>などグロース(成長)株が軟調。立会外分売の実施を発表したソーダニッカ<8158>は需給悪化懸念から大きく下落。

セクターでは保険、鉄鋼、パルプ・紙を筆頭に全般上昇した一方、鉱業のみが下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の78%、対して値下がり銘柄は18%となっている。

前日の米株式市場はまちまちで全体的には動意薄の展開。一方、前日の東京時間との比較で為替の円安は進行していないが、東京市場は本日も上昇、日経平均は心理的な節目の28500円を軽々と超え、一時28700円を超える場面もあった。

先週末からのこうした想定以上に強い東京市場の動きについて、前日までは明日に控える3月限先物・オプション取引に係る特別清算指数算出(メジャーSQ)に絡んだ海外短期筋の買い戻しが主因と考えていた。しかし、メジャーSQの前日時点でも強い基調が続いているあたり、どうも背景はそれだけではないようだ。

考えられる要因としては、個人投資家の踏み上げなどが挙げられる。一昨日に発表された3月3日時点の信用取引状況をみると、日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(ETF)<1570>の売り残が前週から大きく増加している。また、日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信<1357>では買い残が急増しており、信用倍率は前週の9.5倍から13.7倍までに拡大した。逆張りで臨んでいた個人投資家を中心とした売り方が、足元の想定以上に強い日経平均の動きを受けて、損失覚悟の買い戻しを迫られていると考えられる。

一方、米国株は上値の重い展開が続いている。前日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の下院での2日目の証言は、一昨日の上院での証言とほとんど変化はなかったが、3月21-22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)については「何も決定していない」とした。明日の米2月雇用統計、来週の米2月消費者物価指数(CPI)次第で利上げ幅は0.25ポイント、0.50ポイントのどちらもあり得る状況といえる。

ただ、前日に発表された米労働省による1月求人件数(JOLTS)とADPによる民間雇用者数はともに市場予想を上回り、労働市場の需給逼迫が依然として続いていることを示唆。明日の米雇用統計に対する警戒感を高めている。

また、来週の米CPIについても、やや気掛かりなデータが出てきている。世界最大の中古車再販業者であるマンハイム・オークションズによると、2月の米中古車価格指数は前月比で4.3%上昇したという。さらに、米国のガソリン価格についても昨年12月半ば以降は上昇傾向が続いている。これまでCPIの鈍化に寄与してきた中古車価格とガソリン価格がともに上昇傾向にあることは今後の物価指標に対する警戒感を高めよう。

足元の日本株は需給主導で堅調な動きを見せている。今後も3月期末に向けた配当・優待権利取りの動きに加え、金融機関の決算対策目的の売り一巡、期末に向けた年金基金のリバランス売りの一巡、そしてパッシブファンドの配当金再投資などを背景に底堅さが続きそうだ。ただ、米国株が崩れた場合にはさすがに無風とまではいかないと考えられ、外部環境の動向については注視しておきたい。

■ドル・円は下げ渋り、日米金利差を意識

9日午前の東京市場でドル・円は137円49銭から136円80銭まで下落後、137円付近に値を戻した。米10年債利回りの上昇一服を受け、ドル売りが先行。ただ、日米金利差拡大が意識されるなか、ドル・円は下げづらい。クロス円もドル・円に追随した値動きに。

ここまでの取引レンジは、ドル・円は136円80銭から137円49銭、ユーロ・円は144円31銭から144円89銭、ユーロ・ドルは1.0538ドルから1.0553ドル。

■後場のチェック銘柄

・高見沢サイバネティックス<6424>、カーメイト<7297>など、4銘柄がストップ高

※一時ストップ高(気配値)を含みます

・値上がり寄与トップは東エレク<8035>、同2位はアドバンテスト<6857>

■経済指標・要人発言

【経済指標】

・日・10-12月期GDP2次速報:前期比年率+0.1%(予想:+0.8%、1次速報:+0.6%)

・日・2月マネーストックM3:前年比+2.2%(1月:+2.3%)

・中・2月消費者物価指数:前年比+1.0%(予想:+1.9%、1月:+2.1%)

・中・2月生産者物価指数:前年比-1.4%(予想:-1.3%、1月:-0.8%)

【要人発言】

・パウエルFRB議長

「高過ぎるインフレ抑制に失敗することはリスクに」

「本年のデータはピーク金利が引き上げられることを示唆」

「金融政策が経済に反映するまで時間差があることを認識」

「2%は引き続き我々の長期インフレ目標」

「3月会合での利上げペース決定していない」

<国内>

・日銀金融政策決定会合(10日まで)

<海外>

・バイデン米大統領予算教書発表

《CS》

提供:フィスコ

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