新興市場見通し:投資家心理が悪化する中、米CPI控え神経質な展開
■週末にムード急変
今週の新興市場は続伸。米国で長期金利の上昇が一服したことや、東京市場全体で週末の3月限の株価指数先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)に向けた買い戻しが進む中、新興株も週後半までは堅調が続いた。一方、週末は大幅に反落。米国で新興テクノロジー企業を中心に商業銀行事業を展開するSVBファイナンシャル・グループ株が急落したことを契機に金融不安がにわかに台頭。個人投資家心理が悪化する中、週末は手仕舞い売りが膨らんだ。それでも週間では週前半の貯金が残り、上昇した。なお、週間の騰落率は、日経平均が+0.78%であったのに対して、マザーズ指数は+0.47%、東証グロース市場指数は+0.63%だった。
時価総額上位銘柄では、全般下落した中、そーせいG<4565>が+5.7%と上昇。15日から東証プライム市場に上場区分を変更すると発表。4月の最終営業日から東証株価指数(TOPIX)の構成銘柄となるため、パッシブファンドからの資金流入が期待されたようだ。プラスアルファ<4071>は+6.9%。タレントマネジメントシステム「Talent Palette」がSaaS表彰イベント「BOXIL SaaS AWARD Spring 2023」で高い評価を得たことや、国内証券による目標株価の引き上げが材料視された。ステムリム<4599>は+17.2%と急伸。主力パイプライン「レダセムチド」に関する変形性膝関節症を対象とした医師主導治験(第II相試験)の結果速報で、主要評価項目の達成発表が好感された。
■個別に過熱感、注目決算多数、3月IPOのBB続々進行中
来週の新興市場は弱含みか。今週末に投資家心理を急速に冷やした米SVBは10日に経営破綻した。事態の早期収束と連鎖波及を防ごうとする当局の動きを評価し、システミックリスクには至らないとの見方も多い。しかし、市場はすでに「次のSVBはどこか」と疑心暗鬼になっている。投資家心理は確実に悪化しており、市場のムードを一変させるにはすでに十分な材料になっている。先行き不透明感が強まる中、「よく分からないから、とりあえず手仕舞っておこう」といったポジションクローズの動きが強まっても不思議でないだろう。
また、米金融引き締め懸念も重しなる。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のタカ派な議会証言を受けて、一時は3月21-22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)における0.5ptへの利上げ幅拡大が7割超の確率で織り込まれた。しかし、米金融不安の台頭と今週末の米2月雇用統計の結果が予想を下回ったことを背景に、足元では再び0.25ptの利上げが6割の確率で織り込まれ、優勢となっている。しかし、米雇用統計の平均賃金の伸びは予想を下回ったとはいえ下振れは小幅で、前年比での伸びは前月から加速、前月比もプラスとなっている。14日に発表される米2月消費者物価指数(CPI)の結果次第では利上げ加速を再度織り込む展開も想定されよう。
東証グロース市場の信用買い残増加ランキングや週間売買代金ランキングの上位銘柄では騰勢一服感が見られる。業績など実体の裏付けを無視して投機的な動きで急騰していた銘柄も多く、個人投資家の物色意欲は確かに直近まで強かったのだろうが、市場のムード急変で資金が急速に引っ込む可能性はあるため注意したい。
ほか、来週はセルソース<4880>、ANYCOLOR<5032>、スマレジ<4431>、INTLOOP<9556>、pluszero<5132>、ビジョナル<4194>など注目決算がある。ANYCOLORやビジョナルは再評価されるかに注目したい。また、3月IPO(新規株式公開)銘柄のブックビルディング(BB)が多数始まっている。来週からBBが開始される企業も多いため、注目してほしい。
《FA》