明日の株式相場に向けて=波乱相場の狭間で静かに輝く「半導体株」
週明け13日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比311円安の2万7832円と大幅続落、終値で6営業日ぶりに2万8000円台を割り込んだ。好事魔多しというが、前週末の日経平均株価はまさにそのケース。それまでの楽観ムードを吹き飛ばす急転直下の大幅安に見舞われた。そして、きょうも波乱の地合いが継続した。
全体相場がショック安の様相をみせるのは、悪材料の軽重によらず突発性に起因することが多く、予期していなかった方向から球が飛んでくると思わず目をつぶって頭を伏せてしまう原理に近い。SVB(シリコンバレーバンク)の経営面の不安は、親会社(持ち株会社)であるSVBファイナンシャルグループ<SIVB>の株価推移などを横目に確かに取り沙汰されてはいたが、いきなり業務停止状態に陥るのは青天の霹靂といってもよく、破綻を織り込みに行ったのは前週末の欧州時間からだった。
欧州では各国の株価が全面安商状となったが、そのなか例によってドイツ銀行<DB>が連想売りで急落し、金融不安の4文字がチラつく状況に。ちなみに経営破綻したのはSVBだけでなく、暗号資産関連企業との関係密接な米シルバーゲートキャピタル<SI>やニューヨークを本拠とするシグネチャー・バンク<SBNY>も同じ時期に破綻し、3連弾となった。連鎖性がないとはいっても背景は同じようなもので、時間軸でみればドミノ的に金融機関が倒れていくこの景色はリーマン・ショック前のデジャブのようでもある。
米国株市場はNYダウが4日連続安となり、この間に1500ドル以上の大幅調整となった。一方、ここ最近はNYダウよりも強さを発揮していたハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数も後を追うように下げが加速、前週末は下落率でNYダウを上回った。こうなると東京市場もリスクオフの荒波には抗えない状況となる。きょうの日経平均は一時500円超の急落を余儀なくされた。米長期金利が前週末終値ベースで3.70%台まで急低下したことで、為替市場ではドル売りの動きが加速した。一時1ドル=133円台まで3円以上も円高が進んだこともマイナスに作用している。
ただ、取引時間中に米株価指数先物は急上昇に転じた。これはSVBの破綻に関し米政府が預金を全額保護することを決めたのが大きい。取り付け騒ぎが伝播することを防ぐ構えを前面に押し出した。「元をたどればFRBの金融緩和策からの急ブレーキが債券急落を呼び、(SVBは)債券市場に資金をつぎ込んでいて身動きが取れなくなったところに預金引き出しが加速して潰れた。パウエル議長の舵取りの悪さが元凶となっている」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。いずれにしても、バイデン米政権の迅速な対応で、とりあえずコロナバブル収縮によるパニックは沈静化されそうだ。今回の件は金融システムリスクにはつながらないという見方が強く、個別株も直近の押し目形成は結果的に拾い場を提供する形となった銘柄が多そうだ。
テーマ別では半導体関連に照準を合わせたい。前週土曜日11日の株探トップ特集「ラピダスが鳴らす復活の鐘、超買い場の『日の丸半導体・特選6銘柄』」では半導体関連で先端技術分野に強みを有する6銘柄を紹介しており、プライム市場の9割が下落するなかで健闘する銘柄が多かった。これは投資家が暴風雨でも目をつぶらず、しっかりと前を見ている証ともいえる。
直近、好決算を発表した半導体などの電子部品製造装置を手掛けるサムコ<6387>も高技術が売り物で、きょうは逆行高したが、上昇一服場面は狙えそうだ。また、パワー半導体関連にも強い銘柄が目立つ。ワイエイシイホールディングス<6298>、シキノハイテック<6614>はそのツートップ銘柄として引き続きマーク。このほか、穴株では半導体フォトマスクを手掛ける日本フイルコン<5942>は値ごろ感がある。高配当利回りにもかかわらず、0.4倍前後の超低PBRも念頭にチェックしておきたい。
あすのスケジュールでは、目立った重要イベントは見当たらないが、午前中に5年物国債の入札が予定されている。海外では2月の英失業率のほか、2月の米消費者物価指数(CPI)に対するマーケットの関心が高い。(銀)
最終更新日:2023年03月13日 20時14分