明日の株式相場に向けて=AI関連に奔流、シンギュラリティの兆候
きょう(15日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比7円高の2万7229円と小反発。全体相場はとりあえず下げ一服となったがどうにも上値が重い。前日の欧州株市場や米国株市場の戻りを考えると、もう少し派手に値幅を出して良さそうなものだが、現状は米銀破綻の余波を警戒してか半信半疑ともいえる足取りで、結局前日終値をわずかに上回る位置で着地した。日経平均は朝方取引開始直後に200円あまりの上昇で2万7424円をつけたが、そこがきょうの高値となった。
後場終盤に値を崩す形となったが、市場関係者の話では「米銀破綻の余波は日本でも警戒されており、金融庁の査察を前に地銀が外債と株式を合わせ切りしてポジション圧縮に動いている」(ネット証券マーケットアナリスト)という。もっとも、それほど嫌な感じのする下げではなく、日経平均はほぼ寄り付き天井に近いものの、値上がり銘柄数は大引け時点でも1500近くに達し、全体の約8割以上の銘柄が上昇している。
米国では注目された2月の消費者物価指数(CPI)が事前コンセンサスと合致、昨年6月をピークに8カ月連続で鈍化していることで、とりあえずひと安心。来週21~22日の日程で行われるFOMCでは政策金利の引き上げ幅が0.25%にとどまるとの見方が強まった。これをもって一件落着というには虫が良すぎるが、今はFRBがいつ利上げ打ち止めとするのか、ブレーキから足を離すタイミングにマーケットの関心が集中している。今回相次いだ米銀破綻が本当に局地的な嵐で済むのであれば、金利上昇懸念の後退が“怪我の功名”となる可能性もゼロではなくなった。もちろん、しばらくは様子見が続くことになる。
個別では三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などのメガバンク が足並みを揃えて切り返しに転じた。おそらく債券売り・銀行買いのロング・ショートの巻き戻しが一服し、メガバンクへの売り圧力が緩んだところで、セオリー通り踵(きびす)を返してきた格好となっている。だが、数%程度のリバウンドでは自律反発の領域を出ない。三菱UFJでいえば900円手前にある75日移動平均線近辺が、14日に開けたマドを埋める水準とほぼ一致していることもあり、当面の戻りメドとして意識される。ただし、そこから再び下値を試すようなケースも考えられ、追撃買いは慎重に対処したい。
一方、投資テーマとしては人工知能(AI)関連に改めて風が吹き始めている。前日に米オープンAIが対話型AIの基盤技術である大規模言語モデル「GPT―4」を発表したことが耳目を集めた。同モデルは専門的・学術的分野においては既に人間と比べ遜色のないレベルに到達しており、米国の司法試験の模擬で受験者の上位10%の水準に入ったという実験結果が示されている。チャットGPTはこのひとつ前のモデルが下から10%程度のレベルであったというから、あっという間に人間を抜き去る可能性は否定できない。昨年来AIの進化スピードは明らかに加速しており、時間軸的にみても既に人間の叡智の総和をAIが上回るという「シンギュラリティ(技術的特異点)」に片足を踏み入れている状況と考えられる。
きょうはヘッドウォータース<4011>がストップ高で新高値圏に突入。インフォネット<4444>は急動意後にひと押し入れているが1000円近辺は拾い場となる可能性がある。また、HEROZ<4382>の上げ足が鮮烈。きょうは今月7日につけた戻り高値を上抜くとともに、昨年9月14日につけた昨年来高値1409円を半年ぶりにブレークした。ここから改めてマークしたいものでは、昨年12月に東証グロース市場に新規上場した直近IPO銘柄のnote<5243>。2月8日を境に急速人気化し、上下にウネリながらも上値指向にある。同社はCtoCプラットフォームを手掛け、チャットGPT活用にも力を入れている。同じ観点でユーザーローカル<3984>も目が離せない存在だ。
あすのスケジュールでは、2月の貿易統計、1月の機械受注が朝方取引開始前に開示されるほか、午後には1月の鉱工業生産確報値、2月の首都圏マンション販売などが発表される。また、1年物国庫短期証券と20年物国債の入札も行われる。海外では2月の中国70都市の新築住宅価格動向、2月の豪失業率、インドネシア中銀による政策金利発表、ECB理事会の結果発表などが注目されるほか、2月の米住宅着工件数、2月の米輸出入物価指数、3月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数などに関心が高い。(銀)