明日の株式相場に向けて=強気も弱気も当たらないボックス往来相場
きょう(22日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比520円高の2万7466円と大幅反発。日本時間あす未明に予定されるFOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見を控え、様子見ムードが台頭しやすいタイミングではあったが、個別株の物色意欲の強さを背景にそれをものともしない強気優勢の地合いが演出された。
前日の東京市場は祝日に伴い休場となったが、その間に欧米株市場では、金融システム不安をネタに構築された売りプログラムのアンワインドが一気に進んだ。イエレン米財務長官が今後の政府方針として、銀行の経営不安が広がった際に預金の全額保護という異例措置を行う可能性に言及し、これがプラスに作用した。もっとも、この政府主導の金融不安への対応は今さらの話でサプライズ的な要素はない。しかし、これまでショートポジションを積み上げていた向きにとって、これ以上は相場を売り叩けないと思えば買い戻すしかない。結局、米国ではNYダウが2営業日で約700ドルも水準を切り上げた。東京市場では週明け20日に日経平均が400円近い下落を示していたこともあって、売り方にすればクロスカウンター気味に買い戻しを強いられることとなった。今週に入ってからの欧米株高ときょうの日本株の上昇は、買い方の歓声らしきものが聞こえてこない。全体指数については混じりっ気なしの“ショートスクイーズ100%”といって過言ではない相場である。
なお、この日の朝から放送メディアはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)一色。前日にメキシコに劇的な逆転勝ちをした日本代表が、日本時間午前8時から米国と決勝戦を行い、破竹の勢いで優勝を果たした。その御祝儀買いということでもないのだが、後場の取引でも日経平均は戻り売りをこなし切り、結局2万7000円台半ばで着地した。
FOMCを直前にしても手仕舞い売りの動きは限定的であり、マーケットは0.25%の利上げをほぼ織り込んだ状態だ。市場関係者によると「一部には金融システムへの不安を考慮して、パウエル議長は“利上げしない”というウルトラC的な選択肢をとるとの観測もあったようだが、それを期待した雰囲気は感じられない。ECBが前週行われた理事会でインフレ対応の手綱を緩めず0.5%引き上げたのに、FRBの方で利上げを見送るという選択肢はまず考えられない。むしろこのタイミングで利上げを打ち止めにしたら、様々な観点から恐怖しかない」(ネット証券マーケットアナリスト)という。ここでの様々な観点というのは、まずFRBに対する信用失墜、そして利上げできないほど金融不安が根深いということへの懸念、更にインフレが再加速してしまうことへの警戒感といったところだ。したがって今回は0.25%の利上げ一択という見方が強い。そしてそうであれば、相場の波乱要因とはなりにくいというのが大方の市場関係者の意見だ。
しかし、この金融システム不安の問題はまだ幕引きには遠いという印象がある。やはり警戒されるのはドイツ銀行<DB>で、どこかのタイミングでネガティブな思惑が浮上する可能性が少なくない。売りを仕掛ける側としては同案件が切り札となるが、金融不安に対し欧米政府が足並みを揃え全力で支える姿勢を示している以上、仮に幕引きには時間を要すとしても、今回の「銀行破綻シリーズ」で相場が瓦解することはなさそうだ。壊れるとすれば、ワンテンポ遅れて企業業績の悪化及びインフレ進行というスタグフレーションの波が押し寄せてきた時。その兆候は否定できず、それなりに蓋然性は高いが今すぐではない。
当面はボックス圏往来相場が続くと踏んで、日経平均の2万7000円台後半からは手を出さず、2万7000円台割れとなったら買い下がるという算段が有効と思われる。個別株では人工知能(AI)関連が無類の強さを発揮している。大相場に発展したインフォネット<4444>に続く銘柄の発掘を念頭に、出世株候補を焦らず絞り込んでいきたい。
あすのスケジュールでは、2月の全国スーパー売上高、2月の全国百貨店売上高のほか、統一地方選で行われる9道府県知事選の告示が予定される。また、IPOが3社予定されており、日本ナレッジ<5252>、ハルメクホールディングス<7119>、アイビス<9343>がいずれも東証グロース市場に新規上場する。海外ではフィリピン中銀、スイス中銀、ノルウェー中銀、トルコ中銀の政策金利発表のほか、英中銀の金融政策委員会の結果と議事録の開示。米国では週間の新規失業保険申請件数、2月の新築住宅販売件数、10~12月期の経常収支などが発表される。(銀)
最終更新日:2023年03月22日 18時21分