米国株式市場見通し:金融セクターやPCEコアデフレーターに注目
引き続き金融状況の動向に神経質な商状になるだろう。上院銀行委や下院審議会はFRBのバー副議長、連邦預金保険公社(FDIC)委員長を含め、破綻したシリコンバレー銀、シグネチャー銀を巡るヒアリングを開始するため注目だ。ハイテクセクターは比較的堅調に推移しているが、地銀を筆頭に金融セクターは依然回復が鈍い。地銀のファースト・リパブリックは複数の大手銀が支援供給を決定したにもかかわらず、シリコンバレー銀破たん以降、大量に預金が流出していると報じられたほか、同業のパックウェストも年初来預金の20%が流出したと報じられており警戒だ。格付け会社のムーディーズは当局が現在の混乱を制御できず事態が長期化し、潜在的に金融セクターだけでなく、他のセクターにも深刻な影響が波及するリスクが上昇、想定以上の金融、経済の損傷につながる可能性を警告しており、予断を許さない状況だ。
また、FRBがインフレ指標として注目しているPCEコアデフレーターにも注目だ。前年比+4.7%が平均予想で、FRBのインフレ目標の2%をいまだに大きく上回ったままとなる見込みだ。
FRBのパウエル議長は3月FOMCで利上げ停止を議論したものの、コンセンサスは利上げだったことを明らかにしている。金融混乱を受け市場は5月の利上げ見通しを撤回、早くて6月には利下げに転じると見ている。一方、FRBのメンバーは年内の利下げを予想していない。3月FOMCで示されたスタッフ予測においてもピーク金利は前回から変わらず、市場の金利予想との乖離は拡大している。過剰なFRBの利上げが景気に損傷を与える可能性には警戒だ。パウエル議長は、FRBは金融混乱への対処と、金融政策は別物と判断しているようだ。金融システムは依然強く、今回の金融混乱に関して、利上げを巡る軌道を市場に十分に伝達してきたとし、一部の金融機関の管理の甘さが今回の事象を招いたと見ている。万が一、インフレが想定通り鈍化しなかった場合には利上げを継続することになる。ただ、不透明感が強いことにも変わりはなく、当面は状況を注視し、展開次第では利上げ停止など、今後の金融政策にも影響を及ぼすことになるだろう。
経済指標では、3月ダラス連銀製造業活動(27日)、2月卸売在庫、2月前渡商品貿易収支、1月FHFA住宅価格指数、1月S&P20都市住宅価格指数、3月コンファレンスボード消費者信頼感指数、3月リッチモンド連銀製造業指数(28日)、2月中古住宅販売契約(29日)、週次新規失業保険申請件数、10-12月期GDP確定値(30日)、2月個人所得・個人支出、PCEコアデフレーター、3月シカゴPMI、3月ミシガン大消費者信頼感指数(31日)、などが予定されている。
主要企業決算では、カルバンクラインなどの衣料ブランド運営のPVH、クルーズ船運営のカーニバル(27日)、半導体のマイクロン・テクノロジー、ドラッグチェーン運営のウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、ヨガアパレルのルルレモン、スパイスメーカーのマコーミック(28日)、高級家具販売のRH(29日)などが予定されている。ドラッグチェーンを運営するウォルグリーンの決算では、高インフレが影響し引き続き売り上げ鈍化が警戒される。一方で、ルルレモンは在庫や売り上げの改善が期待されている。また、携帯端末のアップルは28日に新たにクラッシック音楽のサービスを開始する。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》