【杉村富生の短期相場観測】 ─引き続いて個別銘柄対応の投資戦術を!
「引き続いて個別銘柄対応の投資戦術を!」
●預金の全額保護はそもそも無理な話?
各国中央銀行、政府の迅速な対応によって、金融危機は回避されたようにみえる。破綻したシリコンバレーバンク(同社の持ち株会社だったSVBファイナンシャルグループ<SIVB>も経営破綻)、シグネチャー・バンク<SBNY>の預金は全額保護された。本来、預金保険(ドット・フランク法)による保障の上限は25万ドル(約3300万円)だが、特例措置を講じたのだ。パシフィック・ウェスタン・バンクなど取りつけ騒ぎの連鎖が起こっていただけに、やむを得ない面があろう。
同様の事態に見舞われていたファースト・リパブリック・バンク<FRC>には米大手銀行11社が預金を預け入れ、急場をしのいだ。クレディ・スイス・グループ<CS>はスイス中央銀行が7.1兆円を貸しつけるとともに、UBSグループ<UBS>が救済合併する。「できちゃった婚」と酷評されているが、「クレディ・スイスは救う」との意志の現れだろう。
ただ、ECB(欧州中央銀行)、スイス中央銀行は0.5%、FRB(米連邦準備制度理事会)は0.25%の利上げを行うなど、金融引き締めを継続している。金融システムを守るという視点では矛盾する。さらに、イエレン財務長官は「預金の全額保護の特例措置を続けるつもりはない」とけん制している。当然の発言だろう。
アメリカは自己責任の国だ。全額保護はモラルハザードにつながる。それに、イエレン財務長官、パウエルFRB議長は「公的資金を投入しない」と明言している。預金保険は銀行の拠出だ。これが中小銀行の経営を圧迫する(総資産1000億ドル以下の銀行はストレステストがない。その分、預金保険料率が高くなる)。全額保護は無理な話である。
なお、今回のアメリカの金融危機の背景には(1)コロナ対応のばらまき→過剰貯蓄の存在、(2)債券投資に傾斜、(3)ネットバンキングの隆盛、などの要因がある。アメリカの銀行は5.8兆ドル(約7600兆円)の債券を保有し、約85兆円の含み損(債券投資額の1割強)を抱えているという。利上げ(金利上昇)、債券価格下落のダメージだ。金融危機の“火種”はくすぶっている。
●北川精機、ユークス、Atlasなどに妙味あり!
一方、FRBの利上げとは裏腹に、金利は急低下(2年物米国債利回りは3.84%、10年物は同3.42%)を示している。これは利上げ打ち止めが近いとの読みに加え、金融システム不安、景気後退リスクを反映したものだろう。これを受け、為替市場ではドル安・円高(1ドル=130円台割れ寸前)が進行している。
当面の投資作戦、戦術はどうか。ここは引き続いてアメリカの金融情勢、為替の動きをにらみつつ個別銘柄対応で臨みたいと思う。
具体的には「焼肉きんぐ」を展開する物語コーポレーション <3097> [東証P]、電子部品の回路に不可欠なプリント基板プレス装置を手掛ける北川精機 <6327> [東証S]は狙える。
北川精機のPERは8.2倍と出遅れている。株価は540円絡み。最低5万円程度で買える。ヤマイチ・ユニハイムエステート <2984> [東証S]は野村証券幹事銘柄だ。昨年6月のIPO銘柄だが、公開価格950円をようやく今年3月23日に上回った。商いの薄さが難点である。時価のPERは5.3倍、PBRは0.63倍と超割安である。
本店は和歌山市、地盤が近畿圏とあって知名度の乏しさを指摘できる。しかし、今年1月に埼玉県の商業施設開発会社(年商約30億円)を買収、関東進出の足掛かりをつかんだ。あとは会社側のIR活動次第だろう。Atlas Technologies <9563> [東証G]には先高期待が膨らむ。決済・送金・融資分野に強い。最先端企業といえる。
ユークス <4334> [東証S]が絶好の押し目を形成している。高値は3月14日の1939円だ。ゲーム機器、パチンコ・パチスロ機の受託開発をメーンとする。業績は好調だ。2024年1月期は84.3%増収、35.0%最終増益を予想、1株利益は141.7円となる。前期の配当は20円増の30円とした。さらに、今期は12円増の42円とする。
2023年3月24日 記
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株探ニュース