明日の株式相場に向けて=果たして最後に狼は来るか

市況
2023年4月6日 17時00分

きょう(6日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比340円安の2万7472円と大幅続落。前日の米国株市場ではNYダウがプラス圏を維持したものの、ハイテク系銘柄への風向きが悪く、ナスダック総合株価指数は3日続落となった。3月の米ISM非製造業景況感指数と3月のADP全米雇用リポートがいずれも低調で、米経済がリセッションに向かっているとの見方が買い手控えの背景にある。東京市場でも米株市場の地合いを見て、きょうも下値を模索する動きを強いられた。もっともチャートを見比べれば一目瞭然で、米国よりも日本株の方が先行して値を崩している。米景気の先行きに対する懸念で叩かれているのは、当の米国よりも日本の方が先というあまり笑えない状況となっている。

前日の日経平均の急落は高値圏で突風に煽られた感もあった。が、きょうの大幅続落は方向感を伴う下げで、雰囲気的にも再び重苦しさが漂ってきた。基本的に過去1年を振り返っての日経平均は、値動きは派手に見えても結局ボックス圏内の上下動であり、市場関係者に言わせると「(買い方の立場から)ヤレヤレであってもイケイケだったことはない」(中堅証券ストラテジスト)という。つまり、高揚感なき上昇。本気で日経平均3万円台を目指す展開と思っている投資家は少なく、常に及び腰になっている。かといって空売り筋が調子に乗って売りを仕掛けると担がれてしまう、というパターンが繰り返されてきた。売りも買いも気迷い局面から抜けられず、微妙なバランスの中で漂っている。安ければリバウンド狙いで買うが、高くなると様子見を決め込むというのが個人投資家の基本戦略で、実際これまでの経緯を見る限りそれが正しい選択肢であったことが分かる。

これまでは2008年のリーマン・ショックが引き合いに出されるような波乱含みの相場であっても、その後少し時間が経てば、踵(きびす)を返すようにリバウンドに転じてきた。これが繰り返されると、空売りでフラッシュ・クラッシュを狙おうとする動きは徐々に鳴りを潜めることになる。ただ一方では、どこかのタイミングで本当に狼が来るのではないかという思いも、投資家の頭の片隅に置かれている。

米国経済や株式市場を見れば、素人目にもパウエル氏の舵取りの拙さが浮き彫りとなっていて、これほど鮮明に逆イールド状態が続き、インフレで振り回された後に財務脆弱な銀行の経営不安が取り沙汰される環境となれば、このまま相場が何事もなかったように長期上昇トレンドに回帰するとは考えにくい。今後も過剰流動性を高める作業を続ければ、銀行経営は落ち着きを取り戻すかもしれないが、今度はインフレに突き上げられる。今見えている綻(ほころ)びを繕えなくなれば、日本風な言い回しで「ご破算で願いましては」という場面が訪れる。FRBは既にそれを回避する術(すべ)を持っていないようにみえる。

今、最も優先すべき課題は銀行に対する信用不安の連鎖を止めること。サブプライム・ショック時のような証券化による不良債権の連鎖はなくても、シリコンバレーバンク(SVB)の破綻は局地的な事故では片づけられない。銀行が自己防衛で預金流出に備えて貸し出しを絞る動きが強まれば、今度は財務脆弱な民間企業破綻の端緒となる。

もともと米国ではインフレ環境下で、顧客がより高い金利の商品に預け替えるという健全な動機が折り重なって、中小金融機関からの資金流出が観測されていた。それがSVB破綻を境に不安心理が加わって、その動きが加速した。市場関係者によると「取り付け騒ぎといっても、今は銀行の店頭に人が並ぶという以前にネット経由で静かに資金が抜かれる。これまでは中小地銀から大手銀行に預け替えるという動きが主流だったが、最近は分別管理によって預金が全額保護されるという点が着目され、証券会社のMMFやMRFに移し替えるケースが多い。いずれにしても危険な状態にある米地銀は少なくない」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。前日の米国株市場では地銀のウエスタンアライアンス<WAL>が再び急落。日本も対岸の火事とは言い切れなくなっている。

あすのスケジュールでは、2月の家計調査、2月の毎月勤労統計、3月上旬の貿易統計、2月の景気動向指数速報値、消費活動指数などが発表される。海外では3月の米雇用統計に対するマーケットの関心が高い。このほか2月の米消費者信用残高など。なお、英国、ドイツ、フランスなど欧州主要国市場や香港、フィリピン、シンガポールなどアジア株市場が休場。このほか、南アフリカ、オーストラリア市場なども休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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