「想定超の底堅さを過大評価しない」第2弾/後場の投資戦略
日経平均 : 28638.24 (-19.33)
TOPIX : 2038.45 (-1.28)
[後場の投資戦略]
本日の日経平均は一時28778.37円と3月9日に付けた28734.79円を超え、ザラ場ベースで年初来高値を更新した。けん引役は半導体株だ。前日の台湾積体電路製造(TSMC)が発表した1-3月期決算では売上高が会社計画のレンジ下限にも届かず、低調な内容だった。しかし、事前の報道などから設備投資計画を下方修正するとの見方が広がっていただけに、計画が維持されたことがポジティブに捉えられたもよう。また、米ラム・リサーチの1-3月期決算は実績が会社想定内に収まった一方、4-6月期の見通しは市場予想に届かなかったが、一部アナリストからは底入れの確度が高まっているとの指摘があった。加えて、会社側が中国に対する半導体規制の影響が想定よりも小さくなるとの見方を示したことも好感されたようだ。
さらに、東京市場では前日に決算を発表したディスコ<6146>が急伸し、上場来高値を更新。注目された2024年3月期第1四半期の出荷ガイダンスが想定程には落ち込まなかったとの指摘があり、安心感が台頭しているもよう。また、消耗品需要の底打ち見通しを示したこともポジティブ視されたようだ。
一方、日経平均はザラ場高値を更新した後は失速し、前日比マイナス圏に沈むなど不安定な動きを見せている。上述したように半導体株は軒並み高で全体を支えているが、他の主力処の景気敏感株は総じて売られている。米経済指標の悪化を受けた景気後退懸念や為替の円高への揺り戻しが要因と思われる。
前日に発表された米4月フィラデルフィア連銀製造業景況指数はマイナス31.3と前月のマイナス23.2から低下し、約3年ぶりの低水準を記録。市場予想(マイナス19.2)も大きく下回った。また、週間新規失業保険申請件数は前週から5000件増加の24万5000件、市場予想(24万件)を上回った。失業保険の継続受給者数も186万5000人に増加し、市場予想(182万5000人)を上回り、2021年11月以来の高水準を記録。総じて労働市場が徐々に減速していることが示唆された。
一方、国内で発表された3月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除くコアCPIが前年同月比+3.1%と、市場予想(+3.0%)にほぼ一致し、2月から伸びは横ばいにとどまった。ただ、岸田政権の政策によって価格が抑制されているエネルギーも除いた指標(生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPI)では同+3.8%と、2月(+3.5%)から伸びが加速、市場予想(+3.6%)も上回った。
経済指標の下振れに伴う米国経済の景気後退懸念に加え、国内でのインフレ圧力による日本銀行の金融緩和修正に対する思惑の高まりが、為替の円高リスクを意識させていると考えられ、ドル円は東京時間に入ってから1ドル=134円を割り込んできている。来週の日米主力企業の決算発表の本格化および日銀金融政策決定会合を前にやや警戒感が台頭しているようだ。
先週に連騰劇を見せた日経平均は短期調整が予想されていた今週も想定以上の底堅さを見せ、株価指数だけをみると相場のムードは強気に傾いているようにも見られる。前日に日本取引所グループ(JPX)が発表した投資部門別売買状況によると、4月第2週(10-14日)に、海外投資家は現物株で1兆円以上も買い越した。これは正直やや意外な印象を抱いたが、足元の買いたい意向をもつ投資家にとってはサポート材料として捉えられそうだ。
しかし、先週から連日にわたり、東証プライム市場の売買代金は2兆円台前半の状況が続いており、商いは盛り上がりに欠けている。上述の海外投資家の買いについては、東京証券取引所によるPBR1倍割れ企業への改善要請の動きや、米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の追加投資報道などをきっかけに日本株の見通し機運が高まっている故との指摘もあるが、1-3月の間に日本株を大きく売り越してきた海外勢が買い戻したに過ぎないとも言える。年始からの累計でみると、海外勢は最新の4月第14日時点において現物株を1700億円程の買い越しに転じてきた。これは米シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻に端を発した金融システム不安が後退する中、主力企業の1-3月期決算シーズンの本格化を前にポジションを一度中立に戻したかったからかもしれない。
本腰の入った買いが入っているようには見られない中、足元の想定以上とも言える程に底堅い株式市場を過度に評価しない方がよいと考えている。(仲村幸浩)
《AK》