明日の株式相場に向けて=大型株に押し寄せる海外マネー
きょう(18日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比480円高の3万573円と大幅高で6日続伸。前日の米国株市場でNYダウが400ドルを超える上昇を示し、ハイテク系グロース株の占める比率が高いナスダック指数も急伸し上昇率でダウを上回ったが、このリスクオンの流れをそのまま引き継ぐ格好となった。前日に1年8カ月ぶりに3万円大台に乗せた日経平均だったが、きょうはヤレヤレ売りなどというコンセプトとは全く次元の異なる猪突猛進型の上げ相場に突入した。一時は前日比で570円あまり上昇し3万667円まで駆け上がり、21年9月につけたアベノミクス相場における高値(終値ベースでバブル後の最高値)3万670円にあと3円に迫る場面があった。
目を見張る勢いといってよい。足もとの外国人買い加速の背景には、日銀の超緩和政策を背景とした円キャリートレードによる日本株買いという手法も市場筋の間で静かな話題となっている。今の日経平均の上昇は不合理とはいわないまでも、規格外の強気相場であることは論をまたない。ただし、この超強気が形容している部分は「日経平均」や「TOPIX」といった全体指数であって、相場の実態や個人投資家の懐具合とは大分隔たりがある。仮に、全体指数の動向と持ち株の状況にカイ離が生じ悶々としている投資家がいても、それは今の相場では至って普通の現象である。前日は値下がり銘柄数が1000を超え値上がり数を大きく上回っていた。きょうも値上がり銘柄数は5割を若干上回る程度である。
個人投資家マインドを如実に映す信用評価損益率の方が相場の実態に近い。ネット証券大手の店内では、「旧マザーズ銘柄の信用評価損益率は前日時点でマイナス23%と極度に冷え込んだ状態にある」(同証券マーケットアナリスト)という。通常これがマイナス25%前後までくると追い証多発ゾーンであり、新興市場銘柄(旧マザーズ銘柄)という括りで見た場合、もうひと波乱あれば追い証を誘爆するような瀬戸際に来ている。
日経平均やTOPIXはバブル後最高値水準にあるが、総論として個人投資家は決して意気軒高という状態ではなく、逆に「空売りを入れていた向きは、損失覚悟で買い戻しを強いられているケースも多い」(中堅証券ストラテジスト)とする。きょうは大きく上値を伸ばす日経平均を横目に、グロース市場指数やマザーズ指数はほぼマイナス圏で推移した。
心理的にもプライム市場の主力どころを追撃するのは正直難しいが、物色対象としては低PBR株の押し目か、もしくは復活著しい半導体関連株の動きをマークしたい。半導体関連 は、岸田首相がきょう午前中に首相官邸で欧米及び韓国、台湾の半導体関連7社の幹部と面会し、日本企業との連携や投資を呼びかけたことが伝わっており、これが新たな思惑を呼んでいる。信用買い残がかつてない水準に膨らんでいたレーザーテック<6920>が、唸りを上げて株価を戻している。同社株は常にプライム市場の売買代金トップの座を占めており、半導体関連のバロメーターともいえる。このほか東京エレクトロン<8035>、アドバンテスト<6857>などが値を飛ばし、台湾のTSMC<TSM>と熊本新工場で連携するソニーグループ<6758>が上値指向を強めた。ルネサスエレクトロニクス<6723>も人気の中心軸にあり、プライムの新星ソシオネクスト<6526>の上昇パフォーマンスも目を引く。
こうした半導体の主力どころを敢えて追撃するのも一法だが、それよりは相対的に出遅れている同じセクターの穴株を探すという手段の方が実践的である。独立系で化成品や電子材料を手掛ける大阪有機化学工業<4187>は最先端半導体分野に対応し、EUV用のフォトレジスト原料を手掛けている。また、最先端半導体工場向けシステム開発や運用を手掛けるティアンドエス<4055>も要マークといえる。主要顧客であるキオクシアだけでなく、日の丸半導体新会社のラピダス向け案件でも商機を捉える可能性がありそうだ。このほか、総合人材サービスを展開する日総工産<6569>にも着目したい。熊本半導体工場の稼働を前に、半導体工場で働く人材の育成センターを開業しており、今後頭角を現しそうだ。
あすのスケジュールでは、4月の全国消費者物価指数(CPI)が朝方取引開始前に発表されるほか、3月の第3次産業活動指数が午後取引時間中に開示される。このほか、3カ月物国庫短期証券の入札が予定される。また、21日までの日程でG7サミット(主要7カ国首脳会議)が広島で開催される。海外では米国でウィリアムズNY連銀総裁の講演などFRB高官の発言機会が相次ぐ。(銀)