新興市場見通し:トレンド転換に期待も含み損の状況は気がかり
■米債務上限問題の解消や米金利低下で投資家心理改善
今週の新興市場は反発。5月ミシガン大学消費者調査(確報値)の1年期待インフレ率が予想外に低下したことや米債務上限問題を巡る不透明感の後退などが投資家心理を改善させた。また、米景気指標の下振れが相次ぐなか米長期金利の低下も追い風となった。週末は米ADP雇用統計の賃金指標の低下や米1-3月期単位労働コスト改定値の下方修正、米ISM製造業景気指数の支払い価格の急低下を受けて米長期金利が一段と低下したことが追加の支援材料になった。なお、今週の騰落率は、日経平均が+1.97%だったのに対し、マザーズ指数は+4.43%、東証グロース市場指数は+4.14%だった。
個別では、東証グロース市場の時価総額上位20銘柄のうち、週間で下落したのはわずか2銘柄にとどまるなど、全般堅調だった。時価総額上位では、証券会社による新規買い推奨が確認されたビジョナル<4194>(+14%)とカバー<5253>(+11%)、8日付けで東証プライム市場への鞍替えが承認されたANYCOLOR<5032>(+11%)、アクティビストファンドとしても知られるオアシス・マネジメントによる大量保有が判明したライフネット生命<7157>(+9%)、ほか、バイセル<7685>(+27%)、M&A総研HD<9552>(+22%)、JTOWER(+12%)、サンウェルズ<9229>(+11%)などの上昇が目立った。週間上昇率ランキング上位には、日鉄ソリューションズ<2327>との業務提携を発表したエクサウィザーズ<4259>などがランクインした。
■マザーズ指数は75日線・200日線を回復、BBラッシュ入り
来週の新興市場は続伸か。週末に発表された米雇用統計は雇用者数の伸びが市場予想を大幅に上回った一方、平均時給の伸びは予想に概ね一致し、失業率は予想以上に上昇するなど強弱感が入り混じる内容だった。ただ、6月13-14日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ一時停止予想を変更させるほどの内容ではないとの見方から、週末の米株式市場は大幅に続伸した。米長期金利は反発しているが、節目の4%には距離があり、警戒される水準ではない。こうした流れを好感し、今週末に大幅高となり、下放れたばかりの75日、200日の移動平均線を早々に回復したマザーズ指数は週明け続伸して始まりそうだ。
一方、日経225先物は週末の夜間取引の間に一時32000円を付けるなど一段と上昇している。日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信<1357>の買い残や日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信<1570>の売り残の状況をみる限り、まだ日経平均の下落を予想した売り持ちを続けている個人投資家は多いとみられ、週明けの日経平均の大幅続伸により、含み損の悪化が懸念される。
また、来週から6月の新規株式公開(IPO)のブックビルディング(BB)が多く始まる。IPO に備えて投資資金が拘束されるタイミングにはまだ少し早いが、既存銘柄については徐々に需給環境の変化を意識しておきたい。
個別ではVTuber銘柄のカバー<5253>に注目したい。ANYCOLOR<5032>の東証プライム市場への鞍替えが関連銘柄としての手掛かり材料となったことに加え、証券会社の新規買い推奨が確認されたことも追い風に週末に上場来高値を更新している。ほか、中長期での高成長が期待されているBuySell Technologies<7685>は今週ようやく底入れを感じさせる動きを見せており、トレンドの転換に期待したい。
《FA》