明日の株式相場に向けて=“外国人売り”アノマリーを打破できるか

市況
2023年6月8日 17時00分

きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比272円安の3万1641円と続落。前日は先物が主導し日経平均は600円近い下げで安値引けとなる悪地合いだったが、きょうもインデックス売りに抗えず下値模索の動きが続いた。朝方は方向性の定まらない動きとなり前日終値近辺の狭いゾーンで右往左往したが、後場に入ると急速に売り優勢に傾き、一時500円弱下げる場面に遭遇した。その後下げ渋ったものの不安定感は拭えない。これまで、外国人投資家は記録的な日本株への買い攻勢を続けていたが、当然ながらどこかで足を止めることになる。果たして今週を境に変化の予兆はあるのか。

今朝方、財務省から発表された前週分の「対外・対内証券売買契約状況」によると、外国人投資家は10週連続で日本株を買い越しており、依然として海外マネーの日本上陸が続いていることが分かった。過去10年間を遡って、5月に外国人が日本株を買い越したのは3回にとどまる。つまり7回は売り越しているわけで、ウォール街の「セル・イン・メイ」は海を渡って東京市場でもそれなりに作用している。今年は異例である。しかし、もっと刮目すべきは6月の外国人動向で、過去10年間では実に8回売り越した。しかも昨年まで8年連続の売り越しとなっている。

きょうの日経平均の後場の崩れ足について、市場関係者は「海外筋は引き続き日本株を現物で買っているが、株先物は債券とのデリバティブで積み上げたロングポジションの手仕舞い売りが観測される」(ネット証券マーケットアナリスト)という。これまでは「現物買い・先物買い」のセットだったが、直近に来て「現物買い・先物売り」のセットにメニュー変更されたということだ。これがSQ算出前に駆け込みで行われ、前日は久々に“SQ前の魔の水曜日”が演出された。そして、きょうもその地合いを引き継いだ格好となっている。

問題はメジャーSQを通過後に相場の流れがまた元に戻るのかどうかである。きょうも、市場では半導体関連をはじめ指数寄与度の高い主力銘柄に、国内機関投資家で出遅れた向きの押し目買いの動きがみられた。後で振り返ってこれが絶好の拾い場だった可能性は十分にあるが、その意味で来週は大きなヤマ場となる。13~14日に米FOMC、15~16日に日銀金融政策決定会合と日米の金融会合が連続で行われる予定にあり、このヘアピンカーブを上手くクリアできれば、全体相場は上昇トレンドに回帰する公算が大きい。

来週のFOMCについては、これまでは利上げ見送りとの見方が大勢を占めていたが状況がにわかに変わりつつある。今週に入って6日に豪中銀が2会合連続の利上げを決め、前日7日にはカナダ中銀も3会合ぶりに政策金利を引き上げた。いずれも事前予想は「現状維持(利上げ見送り)」だったから、マーケットは少なからず動揺した。FRBも右に倣えで、6月会合で0.25%利上げを行うのではないかという思惑が浮上するのも無理はない。ただ、FRBは「6月か7月のFOMCいずれかで利上げを行う」というのが不動のコンセンサスとなっていたが、「直近では6月、7月連続で0.25%引き上げの可能性を指摘する声も少数派だが出てきた」(前出のアナリスト)という。このシナリオは新しいもので、仮に今回引き上げられた場合、その代償として「打ち止め」という切符を手にすると思っていた投資家サイドにすれば、ネガティブな響きが強い。

一方、鉄壁のハト派路線とみられていた植田日銀総裁はどうか。次の日銀会合で現状維持以外の選択肢が示されれば、それはそれで事件である。国内のインフレ圧力はもはや疑いのないもので、企業の賃上げの動きも実質賃金は低下傾向を強めている。データ重視を標榜している植田総裁の立場として「一過性のインフレもどき」と強弁し続けられるのかどうか。マイナス金利の解除は諸処の事情で難しいとしても、イールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃は遅かれ早かれ俎上に載る。市場では今のところ「YCCに手をつけるのは早くても7月の日銀会合だろう」(中堅証券ストラテジスト)という意見が出ていたが、意外な展開が待っている可能性もゼロではない。

あすのスケジュールでは、5月のマネーストック、4月の特定サービス産業動態統計が開示される。また、この日は株価指数先物・オプション6月物の特別清算指数(メジャーSQ)算出日にあたる。海外では、5月の中国消費者物価指数(CPI)、5月の中国生産者物価指数(PPI)のほか、ロシア中銀が政策金利を発表する。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2023年06月08日 17時17分

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