桂畑誠治氏【中銀ウィークで要注意!? 6月後半相場を読む】(1) <相場観特集>
―下値切り上げ波動継続の日経平均、SQ通過後の相場は?―
12日の東京株式市場は目先筋の利益確定売りをこなし日経平均株価は続伸した。前週末にメジャーSQ算出後に買いが加速、600円を超える上昇をみせたが、きょうもその余韻冷めやらぬなか強調展開を維持した。ただ、今週は日米欧の中銀の政策金利発表を控えていることで、足もとはやや買い手控え感も浮上している。6月後半から7月初旬にかけての相場展望について、第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。
●「強気相場継続で上値は3万4000円が視界」
桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)
東京株式市場は強い動きを続けているが、今週は日米欧の中銀による金融会合が相次いで開かれることで、この結果にマーケットの関心が高く、全体相場に影響が及ぶ可能性が意識されている。ただ、実際のところ大きな波乱は見込みにくいと考えている。
世界的に注目度が高いのが13~14日の日程で行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)だが、現状では利上げは見送られる公算が大きい。FOMC初日の13日に5月の米消費者物価指数(CPI)の発表があるが、4月と比較して物価上昇率は鈍化する可能性が高く、よほどのことがなければ連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利を据え置くであろうと思われる。問題は7月のFOMCにおける利上げ再開の可能性だが、これは見解の分かれるところ。ドットチャートは中央値が上方シフトするケースが想定され、当面、金融引き締め継続のムードは拭えないだろう。ただ、景気の減速や労働市場の逼迫緩和のほか、CPIなどのインフレ指標の鈍化傾向が続けば、結果的に今週開催されるFOMCで維持された政策金利がそのまま最終金利となることもあり得るとみている。
一方、15日に結果が判明する欧州中央銀行(ECB)理事会については、ユーロ圏は物価が米国より高いにもかかわらず、政策金利の水準が低いため、0.25%の利上げ継続がコンセンサスだ。ただし、これは株式や債券相場に織り込まれており、ネガティブ視される公算は小さい。国内では週末16日に日銀金融政策決定会合の結果と植田和男日銀総裁の記者会見が予定されている。イールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃の思惑がくすぶるなかも、これまでの植田総裁の言動から、今回の決定会合で政策変更に動くとは思えず、現状維持が濃厚だ。結論として、今週に相次ぐ金融会合が相場の波乱要因となる可能性は低そうだ。
日経平均の向こう1ヵ月のレンジは上値が3万4000円近辺で下値は3万400円前後。また、NYダウのレンジは上値が3万5000ドルで下値3万2500ドル程度を想定している。基本的に強気相場が続くが、そのなか東京市場で物色対象として有力視されるのは医薬品のほか、引き続き半導体関連に投資妙味が感じられる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。
株探ニュース