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日経平均急騰で気になる「高所恐怖症」銘柄と「波に乗り損ねた優良」銘柄を探せ

特集
2023年6月14日 10時55分

大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第114回

大川智宏大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。

前回記事「知られざる「小型優良・放置銘柄」を探せ!」を読む

日本株市場の異常なまでの高騰が続いています。海外投資家が好む大型~中型株に資金が集中して指数が押し上げられており(下のグラフ)、この相場は彼らの需給が主体となっていることは明らかです。

その一方で、ここまで急速な上昇が続くと、今後は「いつ利益確定の需給に巻き込まれるのか」という恐怖感との戦いになるでしょう。

■過去3カ月間の大型株の投資効果(TOPIX500÷TOPIX Small)

【タイトル】

出所:リフィニティブ・データストリーム

今回の上昇の背景は、主に半導体銘柄の躍進と円安ドル高の進行によるところが大きいようです。しかし、5月の米国の雇用統計を見ても、雇用者数は予想を大幅に上回ったものの、失業率は悪化を見せ始めており、米国の金利高騰とドル高による円安の進行には疑問符が付き始めています。

仮に、円高方向へと転換すれば、株価は過熱感の是正も含めて短期的な強い下落を巻き起こす可能性があります。

欧米では景気後退の懸念が高まり、日本もそれほど好況の実感がない中でバブル崩壊後の高値を更新しているのですから、いわば足元の日本株は「高所恐怖症」の状態にあります。

そこで、今回は、この異常な上昇相場に巻き込まれる形で過度な上昇を見せている高所恐怖症銘柄を定量的に探り、今後の利益確定の流れに備えようと思います。

同時に、ファンダメンタルズは良好ながら今回の上昇に乗り遅れた波に乗れなかった優良銘柄を今後の投資対象の候補として抽出します。

予想PBRを使って選別

まずは、銘柄の選定方法です。今回は、株価が過大評価されているかの判断基準について「予想PBR」を用います。

PBRをはじめとするバリュエーション指標は銘柄間での横比較には役に立ちませんが、同一銘柄の過去比較には、プレミアムの過多を判断するうえで一定の意味を持ちえます。

その際、純利益を用いるPERは、赤字や黒字回復があると継続性や数字の変化が過大になってしまう問題が生じます。

一方、PBRの計算の基礎となる純資産は、債務超過に陥らないかぎり基本的に推移は安定しており、過去比較では利用価値が高いといえます。

今回は、この予想PBRの計測を、次の3つの値で行います。

1、 今回の急騰直前の2023年4月末時点の値

2、 足元の値

3、 4月末から過去10年間の日次の予想PBRの平均値

――になります。この3つを比較することで、今回の急騰劇の間の切り上がり方を確認しつつ、過去の平均水準と比べることで、発射台となる4月末時点の水準が何らかの理由で低くなっていたのかなどを確認します。

足元の値を、今年4月末および今年4月末と過去10年平均の値と比較して、ともに「高い」と判断できれば、今回の上昇相場において予想PBRが急激に切り上がった高所恐怖症銘柄に該当する可能性があります。

しかし、急騰するだけの根拠が伴っている場合は、高所恐怖症に怯える必要はありません。この根拠になるのが予想ROEの水準です。

PBRの高騰に沿って予想ROEも改善しているのであれば、それは正しい株価の動きと考えられます。そのため予想ROEについても、「足元」「4月末」「過去平均」の3つの値で変化を計測します。最終的に予想PBRと予想ROEを組み合わせて、高所恐怖症状態なのか、そうでないのかを判定します。

東証プライム上場銘柄の中から抽出

母集団は東証プライム市場の上場銘柄のうちで、過去10年間のコンセンサス予想PBRおよびROEを取得可能な銘柄とします。

銘柄数は500程度と絞られ、過去10年間にわたってコンセンサスデータが取得可能な銘柄は大型株から中型株に限られます。しかし、冒頭で触れたように、今回の上昇相場を牽引したのはこうした銘柄であり、問題はないと判断します。

数字の高低については、

予想PBRの2条件については母集団内の上位20%以上もしくは下位20%以下、

予想ROEについては株価ほど大きく動きにくいため、プラスであったかマイナスであったか

――によって判断します。

予想PBRの変化が高騰し(上位20%以上)、かつ予想ROEがマイナスの変化(特に4月末以降に)を見せている銘柄を、高所恐怖症銘柄とします。

逆に、波に乗れなかった優良銘柄は、予想PBRの変化が下位20%以下で、かつ予想ROEがプラスに変化したものを特定していきます。

予想PBRが切り上がった42銘柄、切り下がった33銘柄

これらの条件で絞り込んだ銘柄を見ていきます。まずは、予想ROEの条件を加えず、予想PBRが4月末以降に急騰し、かつ過去水準からも大きく乖離している銘柄になります。

該当するのは、42銘柄と限定されます。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 予想PBRが切り上がった42銘柄、切り下がった33銘柄とは

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