明日の株式相場に向けて=AI関連が群生する中小型株エリア
週明け19日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比335円安の3万3370円と反落。前週末は欧州時間まではリスクオンが続き、独、仏、英など主要国を中心にほぼ全面的に高かったが、米株市場では朝方は強含みで推移していたものの午後取引時間中に崩れ足となり、NYダウ、ナスダック総合株価指数、そして「強気相場入り」がヘッドラインに躍ったばかりのS&P500指数も安くなった。
きょうの東京市場もこの米株市場の地合いをなぞるように、日経平均は後場寄りから一変した。先物を絡めた売り仕掛けで急速に下げ足を強め、下げ幅は一時470円あまりに及んだ。もっとも、これまでの上昇を考えれば、この程度の押し目は仕方のないところ。日経平均は前週まで10週連続で上昇し、これは第2次安倍政権がスタートする矢先の12年11月~13年1月に達成(この時は12週連続)して以来の記録という。当時の12週連続高は日経平均が長期波動における大底圏からの離脱初動で、いわゆるデフレ脱却に向けてのロケットスタートとなった。だが、今の株価水準における10週連続高は、それとはだいぶ意味合いが異なる。デフレ脱出ではなく、バブル突入の号砲を想起させるものだ。
いずれにせよ、テクニカル指標は総じて前週末時点で日経平均の過熱を示唆していた。とりわけ、9日から前週末まで6営業日で日経平均の上昇幅は2000円を超えており、その意味できょうの調整に理由はいらなかった。ただし、引き金となったのは、岸田政権に対する海外投資家の過度な期待感の剥落であった可能性がある。この場合は注意が必要だ。前週末の内閣不信任案で解散・総選挙という伝家の宝刀を抜かなかったが、これが先物主導とはいえ売りの根拠とされた公算は決して小さくない。直近の内閣支持率の急低下(毎日新聞調査では前回比12ポイント下落の33%)は、一部の海外筋を夢から醒めさせるだけのインパクトを十分に持つ。日経平均の押し目は基本的に買いで対処したいが、慌てて買いつく必要もなさそうである。
一方、個別株は総論とは違う。案の定というべきか中小型のグロース(成長)株への物色シフトが鮮明となっている。日経平均が一時470円あまりの大幅な下げを示すのとは対照的に東証グロース市場指数、マザーズ指数ともに上値追い態勢を明示、連日の年初来高値更新と気を吐いた。プライム市場でも中小型株が買われており、値上がり銘柄数は1000を超え、全体の約6割を占めている。
買われているのは引き続き人工知能(AI)関連だ。米国株市場ではエヌビディア<NVDA>の時価総額が1兆ドルを上回り、メタ・プラットフォームズ<META>、テスラ<TSLA>を抜き去って第5位にランクインした。エヌビディアは生成AI関連のシンボル的な買われ方をしているが、実際にGPUの売上高が急拡大しており、ファンダメンタルズの裏付けを伴うものだ。バブル的な要素も否めないが、かつての仮想通貨ブームでマイニング特需により収益を上積みした時とは様相が違う。
東京市場では、ソフトバンクグループ<9984>などを除いて、AI関連に位置付けられる銘柄は圧倒的に中小型株の範疇に偏っている。直近IPO銘柄のABEJA<5574>が爆発的人気となっているが、同社並みの成長キャパシティを内在させている企業は既上場銘柄の中にも少なからず埋もれていそうだ。プライム市場ではダブルスタンダード<3925>やフィックスターズ<3687>、JNSホールディングス<3627>、RPAホールディングス<6572>などが注目され、グロース市場ではヘッドウォータース<4011>、データセクション<3905>、エクサウィザーズ<4259>などに引き続き目を配りたい。このほか、AI人気の派生でサイバーセキュリティー関連も動兆しきりで、これまで取り上げてきたサイバーセキュリティクラウド<4493>のほか、No.1<3562>などもマークしたい。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に国際決済銀行(BIS)国際資金取引統計・国際与信統計の日本分の集計結果が開示、午後取引時間中には4月の鉱工業生産確報値が発表される。このほか、5月の主要コンビニエンスストア売上高など。海外では豪中銀の議事要旨(6月開催分)が発表、6月の中国最優遇貸出金利、ハンガリー中銀の政策金利発表などのほか、米国では5月の米住宅着工件数が注目される。また、ウィリアムズNY連銀総裁が討議参加予定でコメントに耳目が集まる。(銀)