年後半は超円安を回避か【フィスコ・コラム】

市況
2023年6月25日 9時00分

世界的なインフレはピークを越したとはいえ高止まり、2023年後半も引き続き各国の金融政策がテーマとなりそうです。ただ、日銀の政策修正は見込めず、円売りは継続。ドル・円は日本政府が昨年介入に踏み切った140円台に定着し、再び緊張感が高まっています。

ドル・円相場は米シリコンバレー銀行破たん前に付けた137円90銭付近を5月下旬に上抜けると、上昇基調を維持しながら140円台に到達。6月に入ってからは140円付近でもみ合った後、21日以降は142円台に浮上しました。足元は利益確定売りに押されながらも徐々に上値を切り上げています。昨年10月の151円90銭台から今年1月に127円20銭台に下げ、5カ月半での戻りは半値を越えました。

今年前半のドル高・円安の主要因は日米金利差。日銀は4月に植田和男総裁が就任して新体制が発足しました。黒田東彦前総裁下で10年間続いた大規模金融緩和で債券市場などに歪みが生じており、植田日銀が修正に動くとの期待が高まっています。コロナ禍やウクライナ戦争で日本にも徐々にインフレが波及するなか、今後は日銀が引き締め路線に向かうというのが専門家やマスコミの論調です。

ところが、植田氏は4月の就任直後から一貫して従来の金融緩和路線を引き継ぐ方針を示しています。金融政策決定会合では、賃金の上昇を伴う2%の物価目標を実現するまでは現行の政策を継続する考えを表明。市場関係者はそれでも年後半には緩和政策を修正するとの見立てですが、植田氏や他の当局者の見解や言葉のニュアンスから、少なくとも1年半は現行の政策が据え置かれるとみる方が現実的になってきました。

一方、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は議会証言に臨み、足元のインフレ率が物価目標を大きく上回っているため、緩やかながらも引き締め継続の必要性を強調。利上げは6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で見送られ、7月も不透明です。ただ、年内の追加利上げはあと2回と示唆。利下げは2年程度先としており、インフレ撲滅への最終決戦に向けドルはなお買い余地がありそうにもみえます。

しかし、昨年は日本政府による142円台と145円台での円買い介入が「実績」となり、最近でも円安けん制発言は有効です。さらに、米バイデン政権は為替報告書で日本を為替操作国の監視対象から除外。介入を容認しているわけではありませんが、円安けん制をバックアップする材料にはなるでしょう。また、年後半はリセッション入りの回避が主題になり、円高対策を準備する必要もありそうです。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《YN》

提供:フィスコ

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