「1勝2敗」でも利益が残る新ルールで、5年で5倍に成功
目指せ億トレ、頑張り投資家さんの稼ぎ技 伊達屋酔狂さんの場合-第1回
登場する銘柄
大阪府在住。大手電機メーカーを50代後半に自己都合で退職した後、中小企業勤務を経て2019年に専業投資家になる。株式投資は1987年から始めたが、ギャンブル要素の大きい投資法で資産を激しく増減させ、累計損益はマイナス。脱サラ後にグロース重視の順張り投資の勝ち技を体得する。直近5年で運用資産の1400万円は5倍の7000万円に膨らんでいる。画像は愛犬。「株探-個人投資家大調査-2023春」の回答者で、投資スタイルは「グロース重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
欲の皮が突っ張り、貴重な老後資金を溶かす大失態を演じてから一念発起、投資スタイルを根本から見直すと、運用資産は5年で5倍に拡大することに。今回から登場する伊達屋酔狂さん(ハンドルネーム)は、どん底の状態から億トレも視野に入る段階になっている人だ。
どん底にハマった詳しい経緯は次回に譲るとして、この5年で5倍にする復活劇の原動力となったのが、勝ちより負けが多いことを前提にした手法にコペルニクス的転回をしたことだ。
具体的には、「1勝2敗」でもリターンが増えるように、損切りと利確の基準を決め淡々と実行してきた。もちろん銘柄選びの着眼点も大転換させたことも奏功した。
この失敗を教訓に築いた新手法と、スタイルの大転換をもたらした経緯を2回に分けて紹介していく。初回は、どん底状態を抜け出すことにつながった「負けても勝つ技」の中身について見ていく。
テンバガー候補を「短中期」「長期」の二段構えで投資
伊達屋酔狂さんの投資スタイルは、将来的にテンバガーを期待できそうな小型成長株を発掘し、「短中期」「長期」の二段構えでリターンを狙うものだ。
信用取引のレバレッジを活用した短中期売買でキャピタルゲインを得る。ただ長期的な成長を期待できそうな場合は、すべてを売却せず、一部を現引きし、長期保有で含み益を膨らます。
伊達屋酔狂さんは本来、2段階目の長期投資のみで増やしていくスタイルを理想としている。そうした中で短中期投資を取り入れるのは、生活費を稼ぎ、長期投資に振り向ける資産を増やすためだ。
短中期売買では、1銘柄あたり1カ月で獲得するリターンは数十万~数百万円をメドにする。現時点では、これが資産全体を増やすドライバーの役割を果たしている。
ターゲットは「成長性」「注目度」が備わっている小型株
この長期投資を前提とする短中期売買では、具体的にどのように投資していくのか。
まず銘柄選定では、長期的にテンバガーを期待できそうな小型成長株を探していく。具体的には、株価上昇のエンジンと見なしている「成長性」「注目度」の2つが備わっている銘柄だ。事例として多いのが、IPO(新規株式公開)から間もない新興銘柄になる。
その場合の選別方法はシンプルで、
・ざっくり業績・株価が上向いている |
・売上高総利益率が極端に低くない |
・好業績が持続すると思えるポイントがある |
――の3つを満たせば投資に踏み切る。この3つを重視するのは、先に触れた通り、相場の流れに沿って売買する「順張り」を基本スタンスとしているため。
過去から未来にわたって好業績が続くのか、株価はついてきているか、売上高総利益率が高まる事業モデルになっているのかを見ていく。
M&A総研、企業サイトから上方修正のヒント掴む
この方法で、直近1年間で最も成功したのが、AI(人工知能)などを活用したM&A(合併・買収)仲介事業を行うM&A総研ホールディングス<9552>の取引だ。約1カ月間で300万円以上のリターンを獲得している。
2022年6月に東証グロース市場にIPO(新規株式公開)した同社に、伊達屋酔狂さんが買い出動したのは、IPOから約2週間後の7月11日。売却したのは、8月8日になる。
同社は7月29日に、IPO後初めての決算発表で2022年9月期の通期業績を上方修正、それを材料に株価の騰勢が強まった。その一巡感が出始めたのを見計らってイグジットした(下のチャート)。
■M&A総研の日足チャート(2022年6~8月)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
伊達屋酔狂さんが同社に注目したのは、
IPO前からの業績が堅調
IPO後の業績も高成長を期待できる
――と見たからだ。
上場前からの業績が、売上高と利益ともに倍以上のペースで伸びていたことに注目していた(下のピンクの囲み)。
注視する売上高総利益率は、当時確認できる21年9月期の実績で78%。同業他社との比較までは行っていないが、自身の経験に照らして「十分に高い水準」と判断した。
売上高総利益率を重視するのは、自身のメーカー勤務の経験を踏まえて、利益を生みやすい事業か否かの判断に活用しやすいと指標と捉えていることがある。
■『株探プレミアム』で確認できるM&A総研の通期業績の長期の成長性推移
IPO銘柄で注意が必要なのが、上場直後に業績を下方修正したり、業績の伸びが失速したりするような「上場ゴール」のおそれがないか。
その確認のため、伊達屋酔狂さんは、同社のウェブサイトに更新される成約案件のデータに目を向けると、件数が前の四半期に比べてハイペースで伸びていることが確認できた。
同社の売り上げはM&Aの仲介手数料になるため、この実績を数えていけば、足元の事業の好不調をおおむね掴めるようになっていた。さらにIR(投資家向け広報)に電話で詳細を聞くと、「掲載の許諾が取れているもの以外に、表に出ていない成約事例がもっとある」とのことだった。
この回答を受けて、本人は「公表ベースよりも実態の数字が強いなら、今後、公表値の上振れ、すなわち業績の上方修正もあるかもしれない」と期待を膨らまして投資に踏み切った。
見立ては的中し、購入の13営業日後となる7月29日発表の22年9月期3Q決算では、通期予想を下の表の通りに上方修正する内容となった。翌営業日はストップ高となり、株価上昇が一段落したタイミングで伊達屋酔狂さんは同社株を売却した。
■22年9月期業績の上方修正の内容
注:発表日は22年7月29日。第3四半期時点
ちなみに同社株では、長期的に成長を見込めそうであることから、先に触れた2段階目の長期投資に移行している。先ほどの売却と同時に、信用ポジションの一部を現引きし、現在も保有している。当時200万円超の評価額は足元で約6倍に膨らんでいる。
成長が続きそうだと思ったポイントは、売り上げ規模が同業に比べて小さいため、伸びる余地が十分にあることだ。同社のM&A仲介サービスは、成功報酬型なので成約までの費用が一切発生しないこと、M&Aの成約まで最短49日と比較的短期間で実現できる事業モデルを強みとしている。
そうした中で同社の売上高は数十億円にとどまっている。同業他社が100億円~400億円台なので、伊達屋酔狂さんはM&A総研もある程度は追いつくことができると見て、しばらく保有する方針だ。
リスクも多い短中期売買、着実に利益を残すには?
ただし、どの勝負もM&A総研のように読みが当たるとは限らない。
好業績を発表しても株価が反応しないこともあれば、期待外れの業績となり株価が下がるパターンもある。「公表資料から推測できることには限界がある」と語る本人は、読みが外れて負けることは珍しいことではないと言う。信用取引のレバレッジを最大2.5倍かけているため、負ければ損失も膨らみやすい。
着実にリターンを蓄積していくため、伊達屋酔狂さんが徹底しているのが冒頭で触れた1勝2敗ルールだ。このペースで負け越しても利益が残る仕組みだ。
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