来週の相場で注目すべき3つのポイント:米中小売売上高、米企業決算、台湾TSMC決算
■株式相場見通し
予想レンジ:上限32800円-下限31400円
来週の東京株式市場は一進一退か。米中の重要経済指標や米国の企業決算など海外発の材料が多い一方、国内は月曜が祝日休場となるほか、企業決算も少なく、海外市場を睨んだ動きとなりそうだ。米国の物価指標が軒並み予想を下回ったことでインフレ収束期待が高まっている。米金利が大幅に低下してきたことで、米国でハイテク株買いが復活していることは日本株のサポート要因となろう。
一方、米追加利上げ観測の後退と日本銀行の政策修正観測の高まりを背景に為替は円高・ドル安基調に傾いている。国内では半導体関連株の強さは続いているが、円高懸念もありハイテク株が広く買われる動きは見られにくくなっている。来週は半導体受託製造の最大手である台湾積体電路製造(TSMC)が20日に決算を予定している。月次売上動向で業績については概ね織り込み済みとは思われるが、生成AI(人工知能)向けの需要動向や市況の先行きについての経営陣のコメントに注目だ。相場を下支えしている半導体関連株のトレンドが続くか否かを占う上で重要な材料であり、週後半に相場の様相が変わる可能性があり注意したい。
ほか、引き続き米銀決算にも注目だ。18日にはモルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカの決算が控える。人材削減や預金流出を抑え込むための金利引き上げなどを背景にコストがどれ程増加しているかといった点が注目されている。インフレに対する懸念が収束しつつある今、市場の関心事項は再び景気に移ってきており、景気動向を敏感に映す銀行の決算次第では相場のムードが大きく変わろう。
引き続き米経済は底堅いといった見方が強まれば景気敏感株やバリュー(割安)株が買われやすくなるだろうが、反対に景気減速懸念が強まるようだと、金利低下を通じてハイテク・グロース(成長)株への買いに動きが偏りそうだ。ただ、翌週には日米の金融政策決定会合を控えているため、上値追いには至らないだろう。電気自動車のテスラや動画配信サービスのネットフリックスの決算もバリュー株とグロース株の物色動向を決定づける一つの要因として注目されよう。
経済指標では週初17日に発表される中国の経済指標が注目だ。鉱工業生産や小売売上高、固定資産投資、不動産投資の各指標は悪化傾向が続いているが、6月は揃って5月からの一段の悪化が予想されている。予想を下回れば追加の景気刺激策への期待が下支え要因にはなりそうだが、これまでのところ当局からは投資家を勇気づけるような決定的な政策は打ち出されていない。安川電機<6506>、ファナック<6954>、SMC<6273>など中国関連株のチャートはトレンド悪化を示唆している。指標の下振れは素直に景気減速懸念として関連株の一段の下落につながると考えられ、注意したい。
米国では小売売上高や鉱工業生産のほか、企業のセンチメントを示すニューヨーク連銀製造業景気指数、フィラデルフィア連銀景況指数が発表される。米供給管理協会(ISM)の製造業景況指数や製造業購買担当者景気指数(PMI)などからは製造業の低迷が示唆されており、景況感の悪化をさらに裏付けるものになるか注目だ。
一方、小売売上高は前月比の伸びが前月から加速する見通し。ただ、米バンク・オブ・アメリカによると、同社のクレジットカード・デビットカードによる世帯当たり支出は5月に前年同月比0.2%減少した。4月に約2年ぶりのマイナスに転じ、2カ月連続で減ったという。また、米経済分析局によると、コロナ禍での大規模な財政出動により一時急増した家計貯蓄はすでに大半が消費済みとみられる。加えて、3年以上、延長されてきた学生ローンの返済休止措置は8月末で打ち切られる。小売売上高の下振れには注意したい。
ドル円は一時75日移動平均線に続いて200日線を割り込んだが、今週末は両移動平均線上を回復して終えている。ただ、米経済指標が予想を下回れば、為替は再び円高・ドル安に振れる可能性がある。200日線を割り込んだ場合にはドル安・円高トレンドが加速する恐れがあり、日本株の上値抑制要因として注意したい。
■為替市場見通し
来週のドル・円は弱含みか。米インフレ指標の鈍化を受け、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めシナリオ修正の思惑からドル売りが優勢となった。今月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げは完全に織り込まれたが、金融引き締め長期化への期待は後退した。FRB内では年内2回の利上げで調整を進めているもようだが、市場では7月が最後との見方が広がっている。このため、FRBのタカ派方針緩和を見込んだドル売りに振れやすい地合いが続くだろう。
7月18日発表の米6月小売売上高は改善が期待されるものの、20日発表の米7月フィラデルフィア連銀景況調査(製造業景気指数)はさえない数値になると予想され、リスク回避のドル売り要因になりやすい。本格化する企業決算の内容も一部で材料視されそうだ。銀行破たんの影響などで企業業績が圧迫されていた場合、将来的な景気後退(リセッション)への警戒が強まり、株安・ドル安の展開が想定される。
■来週の注目スケジュール
7月17日(月):日・株式市場は祝日のため休場(海の日)、中・GDP(4-6月)、中・鉱工業生産指数(6月)、中・小売売上高(6月)、中・固定資産投資(都市部)、米・ニューヨーク連銀製造業景気指数(7月)、欧・ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁が講演、など
7月18日(火):日・第3次産業活動指数(5月)、米・小売売上高(6月)、米・鉱工業生産指数(6月)、米・NAHB住宅市場指数(7月)、米・決算発表:BofA、ノバルティス、ロッキード、モルガンS、など
7月19日(水):英・消費者物価コア指数(6月)、欧・ユーロ圏CPI(6月)、米・住宅着工件数(6月)、海外・決算発表:ASMLホールディング、ボルボ、ハリバートン、ゴールドマン、ネットフリックス、IBM、テスラ、アルコア、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス、など
7月20日(木):日・貿易収支(6月)、日・首都圏新築分譲マンション(6月)、日・決算発表:ニデック、ディスコ、中・ローンプライムレート(LPR)、トルコ・中央銀行が政策金利発表、米・フィラデルフィア連銀製造業景況指数(7月)、米・中古住宅販売件数(6月)、南ア・南アフリカ準備銀行(中央銀行)が政策金利発表、海外・決算発表:J&J、フィリップ・モリス、ブラックストーン、TSMC、ニューモント、SAP、など
7月21日(金):日・消費者物価コア指数(6月)、日・ナレルグループが東証グロースに新規上場、米・決算発表:アメックス、など
《YN》