明日の株式相場に向けて=「決算ノイズ」の間隙を縫う低PBR株戦略
週明け24日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比396円高の3万2700円と3日ぶり急反発。今週は日米欧の中銀が金融政策決定会合を相次いで開催することで、この内容にマーケットの関心が高い。金融政策を発表する順番は26日にFRB、27日にECB、そして週末28日に日銀となるが、この3つのイベントについて、カードは伏せたままでも既に解答は透けて見えているような状態にある。つまりFRBとECBは0.25%の利上げ、日銀は大規模金融緩和策を維持。これらはかなり前からのコンセンサスであったはずだが、ここ最近は日銀のYCC修正の可能性が盛んに取り沙汰され、やや不安定な動きとなっていた。だが、ゴール目前で改めて植田日銀のハト派姿勢が浮き彫りとなったところで、為替が急速に円安方向に押し戻され日経平均の上昇を後押しした。
個別では、きょうは半導体製造装置の主力銘柄が総じて水準を切り上げ、全体相場を牽引した。売買代金ランキングでは相変わらず群を抜く商いをこなしているレーザーテック<6920>が高く、そのレーザーテクに次ぐ2位にランクインしたアドバンテスト<6857>も上昇、東京エレクトロン<8035>が買われ、ディスコ<6146>も値を上げた。こうなると、グロース株復活の流れかとも思えるが、実際に全体相場を俯瞰すると、やはり下値抵抗力を発揮しやすい低PBR株に投資資金が流れる状況が見て取れる。
きょうは東京製鐵<5423>が24年3月期業績予想の増額を受けてストップ高に買われ鉄鋼株全般に物色人気が波及したが、鉄鋼セクターはPERが低いうえにPBRも大きく1倍を下回る銘柄のオンパレードで、ここ最近のバリュー株シフトの象徴セクターともいえる。東京製鉄はストップ高に買われた時点で、ようやくPBRが1.0倍に達し会社解散価値と並んだ。年間配当は前期実績で40円、一株利益は今期予想ベースで217円、PER換算で7倍台に過ぎない。きょうのストップ高水準に喰いついた投資マネーは蛮勇かもしれないが、株価1700円で頭打ちとはならないという判断が働いたものと思われる。
これに連動して日本製鉄<5401>やJFEホールディングス<5411>、神戸製鋼所<5406>の大手3社のほか、東京製鉄と同じ電炉株である合同製鐵<5410>や共英製鋼<5440>といった銘柄の上げ足の強さが際立った。ちなみに、順にPBRを見ていくと日本製鉄が0.7倍、JFEホールディングスが0.6倍、合同鉄と共英製鋼が0.5倍前後という状況にあり、東証の1倍割れ企業への改善要請が鶴の一声となって、一段の水準訂正余地が意識される局面にある。
ただ、タイミング的には今週以降は難所に差しかかる。いうまでもなくこれから4~6月期の決算発表ラッシュとなるためだ。3月決算期企業にとってはまだ序盤の第1四半期にあたるわけで、ここでの数字に振り回されるのは決して賢明ではないと思えるのだが、理屈はそうでも、最近はAIトレードの介入もあって決算プレーに振り回されるのは回避できない状況だ。好決算銘柄でも株価上昇の条件としてコンセンサスを上回る必要があり、であるからこそ好決算先取りというのはあまり期待値の高い手法ではない。ノイズを避けるために決算跨ぎの銘柄については触れないというのが、おそらくは最強の選択肢である。
この時期、決算発表の絡まない銘柄で、業績が悪くない低PBR株を選ぶというのは一つの考え方としてある。今なら2月期、5月期、8月期決算などの銘柄が該当する。例えばここ株価の居どころを大きく変えた三協立山<5932>は5月期決算企業だ。24年5月期は営業2.2倍増益予想と急拡大予想にあるが、今の株価で換算してもPBRは0.3倍強に過ぎない。このほか、2月決算企業では和田興産<8931>、タキヒヨー<9982>、三協立山と同じ5月期決算企業では東洋電機製造<6505>、8月期決算では日創プロニティ<3440>などがある。決算発表のノイズに悩まされない低PBR銘柄としてマークしたい。
あすのスケジュールでは、6月の全国スーパー売上高、6月の外食売上高が発表されるほか、40年物国債の入札が予定されている。海外では4~6月期の韓国GDP、インドネシア中銀の政策金利発表、7月の独Ifo企業景況感指数、7月の米消費者信頼感指数、5月の米S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数など。このほか、米5年物国債の入札も予定される。(銀)
最終更新日:2023年07月24日 17時02分