決算トレードの王道を行く! とっておき「好業績中小型株6連弾」 <株探トップ特集>
―日銀ショックも強い個別株は買いチャンス到来、好決算銘柄をセオリー重視で攻略へ―
株式市場はしばしば資本主義経済を映す「鏡」に例えられるが、実際、投資家として至近距離で相場と対峙した場合、そこは人間心理が錯綜するジャングルにも等しい。全体指数は個別企業の株価の集大成であるが、マクロの視点とミクロの視点では見える景色は大きく異なる。いうまでもなく全体相場の方向性と個別株の動向は軌を一にするものではない。全体指数が大きく動揺するような場面であっても、我が道を行く強い株というのは常に存在する。今回のトップ特集では決算発表を通過した好業績銘柄の中から、とりわけ強い輝きを放つ中小型株を厳選して紹介する。
●嵐を呼んだ日銀の決定会合
実質8月商いとなった週末28日の東京株式市場は波乱展開を余儀なくされた。今週は日米欧の中央銀行が相次いで金融政策を発表する中銀ウイークとなったが、米連邦公開市場委員会(FOMC)、ECB理事会と無難に通過したものの、最後に来て日銀金融政策決定会合の結果発表で横殴りの突風に見舞われる格好となった。
時計の針を27日の欧州時間に戻すと、主要国の株価指数は総じて強調展開で、独DAXは史上最高値を更新、イタリアFTSE・MIBも15年ぶりの高値圏に浮上するなど順風満帆。ECB理事会の0.25%利上げ決定はもちろんのこと、ラガルドECB総裁の記者会見中も楽観ムードに水を差されることはなかった。
しかし、米国時間に入ると流れが変わった。米国株市場は27日午後の取引でにわかにバランスを崩すことになる。NYダウはこの日の前日まで36年ぶりとなる13連騰を記録していただけに、調整局面に遭遇すること自体に理由は必要としないが、午後の取引に入った時点ではプラス圏にあり連騰記録の更新が見込まれる状況にあった。そこから一転、利食い圧力を増長させたのは日銀の金融政策修正を巡る思惑だ。イールドカーブ・コントロール(YCC)修正観測が米金利の上昇を誘発したことで、NYダウ、ナスダック総合株価指数、S&P500指数いずれもマイナス圏に引きずり込まれた。
●ヘッドライントレードが暴風雨を助長
そして、それは東京市場の嵐の予兆でもあった。28日付の日本経済新聞朝刊が「日銀は28日に開く金融政策決定会合でYCCの修正案を議論する」と報じ、それまで植田和男日銀総裁の事前の発言などから、金融緩和策の現状維持が濃厚とみていたマーケットは大きく動揺することとなる。しかも、朝方大幅安で始まった日経平均株価はその後の乱高下も想像を超えて激しいものとなった。市場では「まず、会合後の結果開示で『現状維持』のニュースヘッドラインが流れ、それに呼応したAIトレードで一気に円売り・株買いに火がついた。しかし、中身をよく読むと実質的にはYCC許容変動幅の大幅拡大に等しい内容であったことから、今度は慌てて円買い・株売りへと急速に傾く状況となった」(ネット証券マーケットアナリスト)という。
午後0時半の後場寄りから約30分の間に日経平均はいったん垂直上昇した後に、フリーフォール状態の下げに見舞われた。日銀のスタンスとして長期金利(10年債利回り)は、目標はゼロ%程度で推移し変動幅は上下0.5%程度をメドとすることを掲げながら、指し値オペは1%で行うとしたことが大きな波紋を呼んだ。「1%で指し値オペをするということは、事実上1%までの上昇を許容するということとなり、実質的には0.5%分の変動幅拡大を意味する。つまり、YCC運用の柔軟化という曖昧な言葉でごまかしてはいるが、実態は緩和政策の修正に動いた」(生保系エコノミスト)と指摘する。日銀は政策発表直前になって大手メディアへのリークでアドバルーンを上げたが、“時すでに遅し”でかえって混乱を招いた。「市場との対話という点で今回の会合は大きな反省点が残った」(同)とする。
●円安一服で内需系銘柄が優位に
しかし、この話にはまだ続きがある。日経平均は一時850円以上の下落で3万2000円トビ台まで売り込まれたが、大台を割り込むことなく、今度は強烈な巻き戻しが入り大引け間際に3万2800円台まで急速に下げ渋るというオチがついた。長期金利1%まで日銀は傍観する姿勢を明示したが、28日午後の債券市場で0.575%と約8年10カ月ぶりの高水準をつけたものの0.5%台の枠からはみ出ることはなかった。「影響は意外に小さいという見方が広がった」(前出のマーケットアナリスト)という。
これが株式市場で空売り筋の手仕舞い買い戻しを誘発し、日経平均は130円安あまりの下げで着地することに。まさに、引けてみれば大山鳴動して鼠一匹の状況となった。ただし、この日は三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]や第一生命ホールディングス <8750> [東証P]などメガバンクや生保株が株価水準を一気に切り上げており、全体相場の個別物色の流れには変化が生じている。今後、外国為替市場で円高誘導となれば相対的にハイテク系銘柄よりは内需株優位の構図が浮かび上がる。
●好業績で輝き放つ選りすぐりの6銘柄
国内ではくしくも企業の決算発表が本格化する。好決算銘柄に対するマーケットの関心は一段と高まるが、実際のところ決算跨ぎで好決算銘柄を先取りしようとする「決算トレード」は思惑通りにいかないことが多い。決算内容が良くても株価上昇にはコンセンサスを上回る必要があり、その意味であまり期待値の高い手法ではない。
それよりは決算を発表した後に、その内容が順当に評価されている銘柄にスポットを当て、強いチャートを形成しているものに照準を合わせていくのが実践的に有効な手法といえる。そして、企業のファンダメンタルズや成長性を吟味して銘柄を選出するのは、中期投資にもかなう株式投資の王道といえるものだ。今回は、2月、5月、8月決算期の銘柄を対象に、条件に見合う好決算企業の中から上値期待の大きい6銘柄を厳選した。
◎霞ヶ関キャピタル <3498> [東証G]
霞ヶ関Cは物流事業やアパートメントホテル事業を展開し、太陽光発電やバイオマス発電など再生可能エネルギーの電源開発及び販売も手掛けている。近年はeコマース市場拡大に伴う宅配取扱個数の増加が物流施設需要を喚起している状況だ。そのなか、同社がグループで企画・開発を行ったドライ倉庫の物件売却が進んだほか、アパートメントホテル事業も脱コロナによるリオープン効果で案件の収益性が高まった。これを受けて23年8月期の業績予想は営業利益段階で従来計画の32億円から41億円(前期比92%増)に大幅増額、これは過去最高利益の大幅更新となる。株価は7月6日の年初来高値5580円奪回から、最高値を形成した21年11月以来となる6000円大台を目指す展開が期待できる。
◎三協立山 <5932> [東証P]
三協立山は住宅用などを中心とするアルミ建材の大手だが、国際事業では独子会社でフォルクスワーゲン向けに電気自動車(EV)用アルミ部材製造を手掛けており、EV関連の一角にも位置付けられる。収益面では回復色が強い。24年5月期は建材値上げ効果の発現で利益採算の急改善が見込まれており、営業利益は前期比2.2倍の60億円を予想している。株価はここ10年間にわたって、戻っても上値が切り下がる長期下降トレンドを続けてきた。ただ、これは業績の浮き沈みとは必ずしも連動しておらず、時価は実態からかけ離れた水準まで売り込まれている。PBRは0.3倍強と解散価値の3分の1以下に叩かれており水準訂正余地は依然大きい。早晩4ケタ大台を地相場とする動きが有力視される。
◎BeeX <4270> [東証G]
BeeXはERPクラウド移行サービスなど企業システムの基盤環境を、自社保有からクラウドに移行させるビジネスを展開して時流を捉えている。テレワークの導入を契機にクラウド型サービスの法人ニーズが高まっており、既存顧客からの追加案件に加え、新規顧客の獲得が進み、収益拡大が顕著となっている。24年2月期第1四半期(3~5月)はトップラインの大幅な伸びを受けて営業利益が前年同期比64%増の1億5200万円と急拡大した。昨年2月に旧マザーズ市場に新規上場したが、その翌月に5880円の高値を形成している。その後は大幅な調整を入れたが成長期待に変化はなく、今年は一貫して下値切り上げ波動を維持。目先マド開け急騰後も上値指向の強さを発揮、5000円台を目指す流れに。
◎シイエヌエス <4076> [東証G]
シイエヌエスは独立系のシステム開発会社で人工知能(AI)やビッグデータ分析で実績が高く、クラウド基盤の構築や保守・運用も手掛ける。現場に精通したスペシャリストを揃えた人材力の高さと、顧客ニーズを基点にプロジェクト全体をデザインする技術力の合わせ技が同社の強み。NTTグループとの連携が強力でビジネス基盤も厚い。業績はトップラインの拡大が続き利益の伸びも特筆される。24年5月期は営業利益が前期比30%増の7億2400万円予想で5期連続のピーク利益更新となる見通し。この成長力を考慮すれば12倍のPERは割安感が強い。株価は7月14日にマドを開けて大幅高を演じたが、その後も売り物をこなし頑強な値動き。大勢2段上げから新値街道を走る展開を期待。
◎日創プロニティ <3440> [東証S]
日創プロニは金属加工を手掛けるが、材料調達から最終加工までの供給網を一元化した「オールインワン加工体制」を確立させている。太陽電池アレイ支持架台やソーラーネオポートなど太陽光発電関連の製品で実績が高い。M&A戦略を推進、買収子会社の寄与などで足もとの業績は回復色を鮮明としている。23年8月期はトップライン、営業利益ともに6割強の高水準の伸びが予想されており、営業利益は5億8000万円(前期比62%増)と3期ぶりの利益水準を回復する見通し。わずか3倍台のPERはのれん特益計上に伴う最終利益膨張によるものだが、それとは別に一株純資産は1500円前後あり、0.5倍強のPBRは再評価が必至。配当利回りも3%超あり、株価1000円大台ラインは通過点となりそうだ。
◎AFC-HDアムスライフサイエンス <2927> [東証S]
AFC-HDは健康食品・サプリメントの受託製造及び販売を主力展開するほか、ジェネリックや漢方薬なども取り扱う。取引企業は400社を超え、健康食品のOEMでは国内首位級。また国内だけでなく世界的にアンチエイジングに対する関心が高まっており、つれて同社の活躍余地も広がっている。現在、海外売上比率は全体の1割強にとどまっているが、今後の市場開拓の伸びしろは大きい。23年8月期営業利益は従来予想の14億8100万円から15億5500万円(前期比54%増)に上方修正した。株価は4月以降、一貫した下値切り上げ波動を形成しているが、時価総額120億円強と小型で急騰習性もあり、21年7月には短時日で株価900円台から1500円台まで一気に駆け上がった実績も。
株探ニュース