為替週間見通し:ドルは底堅い値動きか、米インフレ指標が重要な手掛かり材料に
【今週の概況】
■日米金利差拡大の思惑後退でドルは伸び悩む
今週のドル・円は伸び悩み。日本の長期金利上昇を意識したドル売り・円買いが強まり、週初に一時140円台後半までドル安・円高が進行したが、日本銀行による臨時の国債買い入れオペ通知を受けてリスク回避のドル売り・円買いは縮小。8月1日発表の7月米ISM製造業景況指数は市場予想を下回ったが、米国経済のソフトランディング期待は根強く、長期金利は上昇し、リスク選好的なドル買い・円売りが拡大した。しかしながら、格付会社フィッチ・レーティングスが米国の外貨建て長期債格付けを一段階引き下げたことから、リスク選好的なドル買いはやや後退した。2日に発表された7月ADP雇用統計で民間部門の雇用者数は市場予想を上回ったものの、3日発表の7月ISM非製造業景況指数は市場予想を下回ったため、ドル売りが再び優勢となった。
4日のニューヨーク外為市場でドル・円は、142円82銭から141円55銭まで下落した。
この日発表された米7月雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びは予想を下回ったため、追加利上げ観測は後退し、日米金利差の拡大を想定したドル買い・円売りは縮小。ドル・円は141円76銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:140円70銭-143円89銭。
【来週の見通し】
■ドルは底堅い値動きか、米インフレ指標が重要な手掛かり材料に
来週のドル・円は底堅い値動きか。直近で発表された米国の経済指標は強弱まちまちとなったが、景気後退入りの懸念は後退しており、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め長期化への思惑からドル買いに振れやすい。日本銀行の金融政策をにらんだ円売りも見込まれる。
来週発表の経済指標では、7月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の主要インフレ指標が注目される。コアCPIは6月実績を下回る可能性があるが、市場予想を上回った場合、FRBの金融引き締め方針を後押しし、金利高・ドル高の要因となりそうだ。
一方、日本銀行は先月開催の金融政策決定会合で長短金利操作(YCC)の柔軟化を決めたが、金融緩和策の一環としており、一部でリスク選好的なドル買い・円売りが観測されている。ただ、日本政府は円安けん制を強めるとみられ、為替介入への警戒感からドル買い・円売りは限定的とみられる。
【米・7月消費者物価コア指数(CPI)】(10日発表予定)
10日発表の7月消費者物価コア指数(CPI)は、前年比+4.8%程度の見通し。市場予想と一致した場合、インフレ高止まりや年内追加利上げを期待したドル買いが強まる可能性がある。
【米・8月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値】(11日発表予定)
11日発表の8月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は、前回7月の71.6から改善するか注目される、市場予想を上回り、個人消費の拡大が示された場合、景気減速懸念は和らぎ、金利高・ドル高の要因となりそうだ。
予想レンジ:140円00銭-144円00銭
《FA》