原油上昇でサウジの不満はやや後退、産油国の主導権回復なるか <コモディティ特集>

特集
2023年8月9日 13時30分

●米国の需要最盛期は穏やかに終了

先週、米エネルギー情報局(EIA)が発表した週報で原油在庫は前週比1704万9000バレル減と、大幅な取り崩しとなった。米原油輸出が堅調に推移していることが在庫取り崩しにつながっている。先週の米原油輸出量は日量528万3000バレルと、過去最高水準に迫った。

ただ、米国の石油輸出が堅調である一方、米国内の需要は冴えない。先週の製油所稼働率は92.7%まで低下した。米メキシコ湾岸(PADD3)の稼働率は94.8%まで上昇した一方で、西海岸(PADD5)は87.6%、中西部(PADD2)は91.8%まで急低下しており、今年の需要の最盛期を通過したような雰囲気がある。

毎年、夏場が来るたびにドライブシーズンによる石油需要の拡大が期待されるが、近年では需要の盛り上がりは限定的だ。EIA週報で需要拡大があまり確認できない反面、月報では見えやすいという統計的な落とし穴はあるものの、製油所稼働率の推移からすると、今年もドライブシーズンは穏やかに終わりを迎えるのではないか。

●値動きの軸は需要から供給へ

7月以降の原油相場は上向きで、ニューヨーク原油は昨年12月以降のレンジ上限に達している。このレンジ上限を突破できるかどうかが目先の展開を左右するだろう。ただ、すでに述べたように、世界最大の石油消費国である米国の需要は特に強くも弱くもない推移となっており、需要の高まりと供給の減少が相まって需給がタイト化しているわけではない。石油輸出国機構(OPEC)プラスが一方的に生産を減少させ、供給を絞っていることが需給引き締まりの背景である。主要産油国が相場の主導権を取り戻しつつあるといえる。

今年は主要国の金融引き締めの継続による景気悪化、需要下振れ懸念が延々と相場を圧迫してきたが、米利上げ打ち止め観測が高まったほか、米経済のソフトランディング期待が広がりつつあり、需要下振れ懸念に牛耳られてきた相場はそろそろ終わろうとしているのではないか。値動きの軸が需要から供給へ移り変わる過渡期といえそうだ。需要見通しが相場の主役の座から降り、供給見通しが取って代わろうとしているなら、主要産油国は値動きを制御しやすいだろう。

自らの行動に値動きが沿っているなかで、産油国の盟主であるサウジアラビアの不満は後退していると思われる。ただ、サウジは日量100万バレルの自主減産を9月も継続すると発表しており、足元の原油高に満足している可能性は低い。主要国の原油在庫が減少し、流れがしっかりと上向くまで、サウジは積極的かつ先制的なアプローチを続けるだろう。自主減産の終わりは見えない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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