明日の株式相場に向けて=相場浮揚のカギ握る「半導体製造装置関連」
きょう(9日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比172円安の3万2204円と4日ぶりに反落。弱いようで下値は固く、強いと思いきや上値も伸びない。ただ、なんとなく遠方にある灰色の雲が気になる、というのが今の相場のイメージだ。モヤモヤとした視界不良の地合いが続いている。
日経平均は前日まで3営業日続伸とはいっても、合計で上げ幅は200円強に過ぎず、その前の2営業日が波乱安の地合いだったことを考慮すると、自律反発の域にも達していない。重苦しさを意識せざるを得ない局面だ。今週末11日は山の日で東京市場は休場であるため、変則的に明日がオプションSQ算出日となるが、きょうはその前日ということもあって警戒感は拭えない。日本時間の明晩9時半に発表される7月の米消費者物価指数(CPI)の結果を見極めたいという思惑もある。日経平均は一時プラス圏に浮上する場面もあったが買いは続かず、結局最後は手仕舞い売りを浴びて安値圏での着地となった。
4月新年度入りから怒涛の日本株買い攻勢に動いた外国人投資家もここにきてトーンダウンしているようだ。ちなみに8月は過去10年間をさかのぼって、外国人が買い越したのは2020年のみ。10回のうち9回は売り越している。20年の買い越しも、春先のコロナショック暴落後のリバウンド局面にあったという特殊事情が背景にあるだけに、元来“8月は海外投資家が日本株を買わない月”という鉄壁アノマリーが存在しているといってよい。売買ウェートの大きい海外投資家が売りから入ってくるケースが多いことが、この時期決まり文句となっている“夏枯れ相場”の正体ともいえる。
企業の決算発表は佳境にあるが、明日に800社以上が予定されており、ここがピークであるとともに決算シーズンの最終盤となる。花火で言えばフィナーレの連発場面が近づいているわけだが、来週明け14日に300社あまりの発表が行われほぼ終了形となる。ここまでの結果を見る限り、内容は内需系企業を中心に良好なものが多い。銘柄によりけりだが、総論として企業のファンダメンタルズでは買いに分がある。ただ、全体相場が上昇トレンドに回帰するためにはハイテクセクター、特に 半導体関連株が買い戻される展開となるかどうかにかかっている。
半導体関連株の決算内容はまちまちながら、急成長する生成AI市場やEV市場の拡大を取り込めるエリアに属する銘柄が強く、販売低調なスマートフォンに絡む半導体の周辺株は弱いということがはっきりとしている。ただし、スマホ関連も先行きに光明が見え始めている。今下期以降はスマホ新機種の市場投入に伴う新たな半導体需要が喚起されるという時間軸にあり、これまで勝ち組に属さなかった銘柄群にも7~9月期の決算発表あたりから復権の気配を漂わせそうだ。
前日の決算発表を受けた半導体関連では先端半導体パッケージ製造装置 などを手掛けるAIメカテック<6227>がストップ高、次世代パワー半導体精密切断装置で需要を囲い込むタカトリ<6338>も一時16%高と値を飛ばす場面があった。いずれも好決算が素直に好感された。一方、半導体樹脂封鎖装置を手掛けるTOWA<6315>や半導体フォトレジストの東京応化工業<4186>などは決算内容が低調だったにもかかわらず大幅高に買われている。半導体関連については、業績面の切り口でかなりハードルが低くなってきたような印象を受ける。スマホ関係の市況回復の遅れも大方織り込み、新機種を見据えた需要の発現に目が向けば、半導体関連全般に対するマーケットの視線も変わりそうだ。決算発表通過後は、半導体関連株を製造装置メーカー中心に洗い直すタイミングかもしれない。
あすのスケジュールでは7月の企業物価指数、7月のオフィス空室率、6月の特定サービス産業動態統計など。なお、この日は株価指数オプション8月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日となる。海外では4~6月期フィリピンGDP、インド中銀の政策金利発表、7月の米消費者物価指数(CPI)、7月の米財政収支、週間の米新規失業保険申請件数など。国内主要企業の決算発表では楽天グループ<4755>への注目度が高いほか、メルカリ<4385>、ENEOSホールディングス<5020>、リクルートホールディングス<6098>、東京エレクトロン<8035>、三菱地所<8802>、第一生命ホールディングス<8750>などが予定されている。(銀)