国内金の最高値更新が続く、日銀の緩和姿勢堅持による円安再開が支援 <コモディティ特集>

特集
2023年8月16日 13時30分

国内は8月、日銀の金融緩和継続による円安を受けて上値を伸ばし、現物(店頭小売価格、税込)が9946円、先物(JPX金先限)が9010円と、ともに最高値を更新した。7月28日の日銀金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)柔軟化が発表され、長期金利の上限としていた0.5%を上回ることを容認すると円が買い戻された。

しかし、金融緩和の持続性を高める狙いと説明され、週明けの長期金利上昇に対し日銀が0.6%、0.65%で臨時の国債買いオペを実施したことで円安が再開した。その後は、中国経済に対する懸念からリスク回避のドル高となったことに加え、米国債の利回りが上昇したことから円安が続き、16日時点で1ドル=145円台後半と昨年11月以来の円安水準となった。植田日銀総裁は物価目標達成にはまだ距離があるとしており、賃上げ継続が確認されるまで金融緩和が続くとみられている。ただ、150円の節目に近づくようなら介入警戒感が高まるとみられ、当局者の発言を確認したい。

また、米国債の利回りは上昇したが、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げが最後となり、9月は利上げ停止との見方に変わりはない。CMEのフェドウォッチで、11月の利上げの確率は50%以下であり、来年5月には利下げに転じることを織り込んでいる。今後発表される経済指標で米連邦準備理事会(FRB)の金融政策の見通しを確認したい。

●中国の不動産業界に対する懸念でリスク回避の動き

金の現物相場は8月、リスク回避のドル高に加え、米国債の利回り上昇を受けて売り優勢となり、6月29日以来の安値1896ドル台をつけた。

格付け会社フィッチが米国の外貨建て長期債格付けを「AAA」から「AA+」に引き下げるなか、米債の大量供給が発表され、利回りが上昇した。米財務省の四半期定例入札で堅調な需要が示されると、利回り上昇は一服したが、7月の米消費者物価指数(CPI)や米生産者物価指数(PPI)でインフレの伸びが加速すると、利回りは再び上昇した。

米金融当局者のタカ派発言もあり、米国債の利回り上昇が続くようなら、金の現物相場の圧迫要因になるとみられる。中長期の節目となる200日移動平均線(16日1905ドル)を割り込んでおり、金ETF(上場投信)から投資資金が流出すると一段安となる可能性が出てくる。

一方、中国の不動産業界の先行き懸念を受けてリスク回避のドル高となった。中国で景気回復の遅れが懸念されるなか、第2四半期の国内総生産(GDP)の伸びが大幅に鈍化し、中国当局は不動産政策の緩和や消費回復策を発表した。また、7月の中国の消費者物価指数(CPI)が前年比0.3%下落と2年5ヵ月ぶりにマイナスとなり、需要低迷によるデフレに対する懸念が高まった。

更に中国の不動産開発大手「碧桂園」は米ドル建て社債の利払いを6日の期日までにできず、資金繰りが大幅に悪化。14日には同社のオンショア社債の取引が停止された。債務不履行(デフォルト)に陥れば、恒大集団よりも影響は深刻になるとみられている。バイデン米大統領は「時限爆弾」と表現しており、今後の中国経済の行方を確認したい。

●金ETFからの投資資金流出とファンド筋の買い越し縮小

世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は、8月15日に894.43トン(6月末921.90トン)に減少し、2020年1月以来の低水準となった。米経済のソフトランディング期待が高まったことなどを受けて投資資金が流出した。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは7月18日の19万3348枚をピークとして縮小し、8月8日は14万2985枚と3月14日以来の低水準となった。テクニカル面で上値の重さが確認され、手じまい売り、新規売りが出た。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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