明日の株式相場に向けて=「インバウンド出世株探し」の旅
きょう(16日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比472円安の3万1766円と急反落。売買代金3兆円台で薄商いというのは憚(はばか)られるが、ここ商いが減少傾向にあるのは確かで、きょうは先物主導の売りで揺さぶられて結局安値引けに。75日移動平均線をマド開け陰線で下回ったが、現状はまだ“徳俵”に足が乗った状態だ。ここで踏ん張れるか、それとも下放れるか、まさに明日以降に正念場を迎えることになる。
前日の米国株市場はハイテクから金融セクターまで主力どころの銘柄が全面安となり、1%あまりの下げにとどまったNYダウやナスダック総合株価指数と、相場の実態悪とはカイ離があった。野中の一本杉のごとくエヌビディア<NVDA>だけがプラス圏を維持した格好だが、きょうの東京市場でも半導体株安のなか、エヌビディア関連のツートップ銘柄ともいえるアドバンテスト<6857>とディスコ<6146>が高かったのは暗示的だった。半導体も生成AI市場に次の成長シナリオを託しているようなところがある。しかし、今月23日に発表されるエヌビディアの決算を見るまでは慎重なスタンスは崩しにくい。
全体は向かい風の強い地合いとなっているが、個人投資家の物色意欲は健在のようで、国内ネット証券大手の話では「きょうは個人投資家の信用枠を使った逆張りの動きが非常に活発となっている。大手海運や総合商社、メガバンクなどが主な投資対象で、このほか日経平均連動型のETFである日経レバなども買い越しが目立つ」(マーケットアナリスト)という。これは、調整場面を狙う個人マネーのしたたかさを如実に物語るものだが、一方で気になるのは、高水準の買いを入れている以上、当然ながらそれに見合う形で売り方に回っている投資家もいるということだ。
売り主体が海外筋であることは容易に察しが付く。例えば“バフェット効果”で大きく居どころを変えた商社株なども、ここからの上値が保証されるものではない。25日移動平均線を絡め高値圏もみ合いを続けていた三菱商事<8058>などを、仮に下放れたところで拾うような形となれば、結果としてナンセンスなタイミングということにもなりかねない。中国景気の減速懸念で原油市況などが下落に転じているが、このほか、非鉄や穀物などコモディティ全般も右に倣えで下落している。こうした局面では、元来であれば商社株には手は出しにくい。そうした常識的な判断を飛び越え、単に待っていた押し目が来たから急いで買いつくというのはリスクが大きい。
逆張りでも流れに逆らわない投資スタンスを心掛けるのであれば、目先はやはりインバウンド関連 に優位性がある。きょう引け後に発表された7月の訪日外国人客数は232万人と、6月と比較しても一段と増勢にあり、これに加えて来月発表される8月のデータでは中国の団体旅行解禁に伴い、更に大きく上乗せされる可能性が濃厚である。全体相場は足もと逆風でも、インバウンド関連という範疇でみれば局地的なフォローウインドはしばらく続くことになる。中国経済の変調が相場のリスク要因として取り沙汰されるなかで、日本に訪れる中国人観光客の消費熱がテーマ物色の原動力となるのは皮肉な構図ではある。だが、ここは全体と個別は切り離して考えておかなければならない。
ただ、相場は常に新しさを求める傾向がある。物色対象の裾野は広いだけに、視野も広くして出世株候補を絞っていきたい。ホテル関連では通販大手のベルーナ<9997>に意外性あり。銀座での複合商業施設のほか北海道では高級ホテルを買収するなど、訪日客需要取り込みに精を出している。また、高級時計やカメラの買い取り販売を手掛けるシュッピン<3179>はインバウンド特需を受けやすい。人手不足でアルバイトが必要ということになれば求人サイトを運営するリブセンス<6054>にも商機が生まれる。
あすのスケジュールでは、7月の貿易統計、6月の機械受注が朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に1年物国庫短期証券と20年物国債の入札が予定されている。また、午後取引時間中に6月の第3次産業活動指数、7月の首都圏マンション販売などが開示される。海外では7月の豪雇用統計、フィリピン中銀の政策金利発表、ノルウェー中銀の政策金利発表、6月のユーロ圏貿易収支などのほか、米国では週間の新規失業保険申請件数、8月のフィラデルフィア連銀製造業景況素数、7月の景気先行指標総合指数などにマーケットの関心が高い。なお、インドネシア市場は休場となる。(銀)
最終更新日:2023年08月16日 17時09分