明日の株式相場に向けて=“中低位の大化け”相次ぐが基本は正攻法
きょう(23日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比153円高の3万2010円と3日続伸。現地時間23日の米エヌビディア<NVDA>の決算発表と24日に幕を閉じるブリックス首脳会議の結果、そして25日に予定されるジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演を控え、目先は売り買いともに手を出しにくい局面にあり、これは売買代金が約4カ月ぶりの低水準となったことにも暗示されている。
ただ、気がつけば日経平均は3万2000円台を回復し、75日移動平均線とのマイナスカイ離をほぼ解消する水準まで戻してきた。嵐の前の静けさという印象も受けるが、売り方にとってもここは怖い場面といえる。エヌビディアの決算については「中国向け比率が高いことが懸念材料だが、強気派はサウジとUAEが同社製品を大量購入しているという事実を拠りどころとしている」(ネット証券アナリスト)という。決算に対する事前のコンセンサスが高すぎるきらいはあるが、いずれにしても早晩その答えが示されることになる。
個別では株価3ケタの中低位株に大きく動意する銘柄が目立つ。全般相場は思いのほか頑強ながら、前方視界不良で日経平均に連動しやすい主力銘柄は手を出しにくく、やや古い言い方をすれば仕手系材料株が躍動しやすい地合いといえるかもしれない。その典型は、今日はまさに過激な上下動をみせたアジャイルメディア・ネットワーク<6573>。株価は7月末まで200円台で商いも少なく底這い状態にあったが、8月に入ってから突然変異的な大化けを果たし、短時日で10倍化した。ここまで連日のストップ高を演じてきたが、前日を含め一本値でザラ場中に商いが成立しない日も多かった。今日は朝方に380円高の2100円まで上値を伸ばし、値幅制限上限まであと20円というところで踵(きびす)を返して下落に転じることに。その後ストップ安の1320円まで売り込まれたが、そこからまた1990円まで怒涛の切り返し。終盤は再び1400円近辺まで売り直されるという、まばたき厳禁の大蛇がのたうつがごときハイボラティリティ相場を演じた。
このほか、直近では株価200円未満で推移していたアトラグループ<6029>が出来高を膨張させて急速人気化、今日は反落したが、一時70円高の412円まで買われる場面があり、こちらはわずか5日で2.3倍化した。マネーゲームと言ってしまえばそれまでだが、企業のファンダメンタルズは一朝一夕に変化することはなく、その意味で株の短期トレードはたとえ優良株を対象とした場合であっても、基本的にマネーゲームの域を出ない。
では、今の地合いにあわせて3ケタ銘柄に照準を絞るとしても、どのように初動を捉えるかは技術的に難しい問題である。できれば人気が加速する前の状態でホルダーとなっているのが理想的だが、“言うは易く”でなかなかそうは事が運ばない。業績が悪く機関投資家が触らないような銘柄は、需給面では枯れ切っていて仕手化しやすいケースも多いが、それをあらかじめ探し出すのは至難の業ともいえる。短期スタンスであっても、まずはファンダメンタルズで魅力ある銘柄を探すのが正攻法となる。
株価3ケタの中低位に位置する銘柄では、YE DIGITAL<2354>の安定した下値切り上げ波動に着目。安川グループのIoTソリューションを支えるフロントランナーで、富士通<6702>とも連携が厚い。企業のDX投資が加速するなか商機は今後一段と高まりそうで、時価600円台は中長期投資にも耐え得る。また、JMC<5704>は3Dプリンターによる試作品製造で高実績を有し、足もとの収益も絶好調に推移している。とりわけ電気自動車(EV)シフトの動きが同社にも大きな商機となっており、自動車業界からの引き合いが活発化しているもようだ。上期決算発表を受け今月15日にストップ高に買われたが、上値のフシとなっている1000円大台ライン突破は早晩実現に向かいそうだ。このほかタキロンシーアイ<4215>は年初来高値圏に再浮上しているが、600円絡みの時価は依然として値ごろ感がある。PBR0.6倍台は一段の水準訂正妙味をはらむ。
あすのスケジュールでは、前場取引時間中に7月の白物家電出荷額が開示されるほか、後場取引時間中に7月の全国スーパー売上高が発表される。海外ではトルコ中銀、インドネシア中銀が政策金利発表、韓国金融通貨委員会も行われる。米国では週間の新規失業保険申請件数、7月の耐久財受注額などが注目される。また、26日までの日程で米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(通称ジャクソンホール会議)が開催される。(銀)