テクニカル面では先高観強まる/後場の投資戦略
日経平均 : 32517.23 (+183.77)
TOPIX : 2326.94 (+13.56)
[後場の投資戦略]
株式市場について明るい材料がまた一つ増えた。30日に発表された米8月ADP全米雇用リポートの民間雇用者数は17万7000人増と、市場予想の19万5000人増を下回った。前月7分は37万1000人増と、従来値の32万4000人増から上方修正されたが、市場予想に対する下振れに加えて、前月からの大幅な鈍化が確認されたことはポジティブだ。また、同調査によると、同じ職にとどまった労働者の賃金は前年同月比で5.9%増と、2021年以来の低い伸びだったという。
29日に米労働省が発表した雇用動態調査(JOLTS)の求人件数も予想を下回り、自発的な離職件数は21年2月以来の低水準だった。逼迫していた米労働市場の緩和が連日にわたってデータで実際に確認できたことは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクル終了の期待を高めることにつながり、相場の支援材料になっている。
29日に25日線および50日線の移動平均線を上回ったナスダック指数とS&P500種株価指数が30日も同線上で推移したことで、上値抵抗線の突破がダマしに終わった可能性は低下した。東証株価指数(TOPIX)は主要な移動平均線を全て上回った位置で推移しており、8月1日に付けたバブル崩壊後の高値更新を窺う水準にまで上昇してきている。
一方、日経平均は引き続き75日線が上値抵抗線として作用しており、前日の後場の失速によって戻り待ちの売り圧力が確認された32500円水準での攻防が続いている。ただ、日経平均も前日の当欄で指摘した通り、米長期金利の低下を背景としたハイテク株高が続いていることで、トレンド転換が近づいている印象を受ける。
今晩の米個人消費支出(PCE)コアデフレーター、そして明日の米雇用統計で、米インフレ鈍化と米労働市場の逼迫緩和が改めて確認されれば、米長期金利の一段の低下によるハイテク株高を背景に、日経平均の75日線突破も見られそうだ。
他方、世界経済の景気動向については依然として先行き不透明感が強い。このため、上記のポジティブシナリオが実現された場合には、景気や為替との連動性が高い外需系のハイテク株などよりは、これらの要因との連動性が小さい内需系のグロース株の方が買い安心感が強まってくると考える。(仲村幸浩)
《AK》