TOPIXはバブル崩壊後高値、強気転換か?/後場の投資戦略
日経平均 : 32820.80 (+201.46)
TOPIX : 2352.58 (+20.58)
[後場の投資戦略]
前日に発表された米7月個人消費支出(PCE)コアデフレーターは前月比および前年同月比ともに市場予想に一致した。前年同月比は+4.2%と米連邦準備制度理事会(FRB)のインフレ目標である2%を依然として大幅に上回っており、前月比も+0.2%と上昇が続いているが、前月比の伸びは6月から横ばいで小幅な伸びにとどまっている。FRBが特に重要視している指標なだけに、無難に消化できたこと、そして米長期金利の低下基調が続いたことは投資家心理の一段の改善につながっている。
今晩は米雇用統計が発表されるが、米雇用動態調査(JOLTS)、ADP全米雇用リポート、米PCEコアデフレーターと、今週発表された雇用・物価に関する指標は全て市場予想以下に収まっていることで、雇用統計に対する警戒感は大きく和らいでいる。余程大きく予想を上回らない限り、市場への影響は限られそうで、投資家の株式の買い安心感が強まっているように見受けられる。
東京市場は日経平均および東証株価指数(TOPIX)ともに今週は5日続伸と、負けなしの状態できている。TOPIXは遂に8月1日高値を上回り、ザラ場ベースでちょうど1カ月ぶりにバブル崩壊後の高値を更新している。日経平均もようやく25日線や75日線に続いて、50日線、13週線の上値抵抗線を上抜いてきており、これで日足・週足・月足ともに目立った上値抵抗線は見当たらない形となった。テクニカルな好転は鮮明になっている。
東証プライムの売買代金は8月29日まで8日連続で2兆円台にとどまっていたが、30日には3兆円台を回復。前日の31日はMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が算出する指数の銘柄入れ替えに伴うリバランス(再調整)というテクニカルな要因もあったが、売買代金は4兆円台を超えた。本日も3兆円は超えてきそうなペースと思われる。
夏季休暇入りの海外投資家が本格的に相場に戻ってくるのは4日のレーバーデー以降と言われている。ただ、ジャクソンホール会議を通過したことで、一部の海外投資家は早くも相場に戻って日本株に買いを入れているのではないかといった指摘もあり、足元の売買代金の増加はそうした指摘を表しているのかもしれない。
一方、前日に日本取引所グループ(JPX)が公表した投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物・先物合算で2103億円と2週連続の売り越しとなり、現物だけでも2095億円と2週連続の売り越しだった。海外投資家が現物で2週以上連続での売り越しを見せたのは3月下旬以来となる。全体の売り越しに占める現物の割合も大きく、海外投資家の投資スタンスの変化はやや気がかり。
しかし、本日が特にそうだが、東京時間に入ってからの動きが予想以上に強い展開が今週は印象強い。来週に発表される今週分の投資部門別売買動向では、海外投資家が再び買い越しに転じている可能性はありそうだ。
他方、来週は週末に9月限先物・オプション取引の特別清算指数算出(メジャーSQ)を控える。9月限の日経平均のオプション取引の建玉残を確認すると、行使価格30000円のプットに1万6000枚と建玉残が大きく積み上がっている一方、行使価格33000円のコールにも1万枚と建玉残が積み上がっている。8月上旬は極端にプットの建玉残の多さが目立っていて、株価の下落ヘッジを意識した動きが優勢だった。しかし、8月下旬にかけてはプットの建玉残が漸減していく一方でコールの建玉残が徐々に増加し、足元では株価上昇に備えたヘッジの動きも増えてきているようだ。
こうしたなか、現物の売買代金も徐々に回復してきてはいるが、足元の相場の強さは、ジャクソンホール会議通過後のデリバティブ取引を主体としたメジャーSQ前の買い戻しに過ぎないという見方もできそうだ。本日から9月相場に入ったが、今月は日米ともに先物・オプション取引の清算や金融政策決定会合など重要イベントが多い。9月は例年、株価パフォーマンスが軟調であるという季節性もある。基調の強さが続くかについてはまだまだ予断を許さないだろう。(仲村幸浩)
《AK》