佐藤正和氏【波に乗れない日本株、為替相場横目に次の展開は】(2) <相場観特集>
―9月相場は強弱拮抗、下期相場にポジティブ材料はあるか―
週明け11日の東京株式市場は、朝方は買い先行で始まったが、その後は不安定な値動きで下値を探る展開に変わった。前週末の米国株市場ではNYダウが続伸するなど強気優勢の地合いながら上値の重さも意識された。米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが長期化することへの警戒感が買いを手控えさせているが、日本国内でも物価上昇を背景に日銀の金融政策変更の思惑がマーケットで高まってきた。ここから日経平均株価はどういったトレンドを描くのか。また、為替相場への影響はどうか。株式市場と為替相場の動向について、それぞれの業界で活躍する市場関係者2人に話を聞いた。
●「日銀の政策動向に関心高まる、当面はドル高・円安トレンドが継続か」
佐藤正和氏(外為オンライン シニアアナリスト)
週明け11日の東京為替市場では、ドル安・円高方向にドル円相場は大きく振れた。読売新聞が9日に報じた植田和男日銀総裁のインタビューが、このきっかけとなった。このインタビューで同総裁は「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば、(解除を)やる」とし、「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と述べている。
これまでに比べて、踏み込んだ発言内容といえるが、足もとの日本の消費者物価指数(CPI)も前年同月比で3%を超える状況にあることなども、今回の発言の背景となっているのかもしれない。
市場では、来週の19~20日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)が注目されているが、今回の植田総裁の発言で21~22日に予定されている日銀金融政策決定会合に対する関心が急激に高まっている。
とは言え、今月の日銀金融政策決定会合でマイナス金利の解除に踏み切ることは考えにくい。ポイントは植田総裁が、更にどこまで踏み込んだ発言を行うかだろう。
FOMCに関しては、13日に発表される米8月消費者物価指数(CPI)の結果に左右される面はあるものの、9月は政策金利の据え置きの可能性が高いだろう。9月を除き年内残り2回の会合のどちらかで利上げがあるか、2回とも利上げは見送られるかが注目されそうだ。
こうしたなか、今後1ヵ月程度のドル円相場のレンジは1ドル=143円00銭~149円00銭を見込んでいる。現時点では、ドル高・円安のトレンドは継続すると予想している。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(さとう・まさかず)
邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。通算20年以上、為替の世界に携わっている。
株探ニュース