明日の株式相場に向けて=EV電池関連に国策の風が吹く
週明け25日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比276円高の3万2678円と5日ぶり反発。前週は中銀ウィークで、日米の中央銀行の金融政策スタンスを確認したいとの思惑から見送りムードの強い地合いとなり、その投資家の不安心理を揺さぶるように先物主導の売り仕掛けが入った。日経平均は4営業日合計で1100円超の下落となったが、驚くことに前週末時点で日経平均ベースの騰落レシオ(25日移動平均)は144%と過熱感がほとんど解消されていない。騰落レシオは120%を超えると過熱ゾーンとされており、140%超えともなればいつ調整局面に入ってもおかしくない状態である。
ところが日経平均の騰落レシオは今月14日に140%台に乗せてから一度も140%ラインを下回っていないどころかむしろ水準を切り上げている。前週の4営業日続落した場面でも、19日と21日の騰落レシオは株価に逆行して上昇した。20日と22日に低下させた分とちょうど見合いで、前週は結局プラスマイナスゼロとなった。何のことはない前々週末と比較して日経平均は1100円も水準を切り下げているのにもかかわらず、騰落レシオは全く同じ数値という珍現象となった。
これは全体相場の個別株物色意欲の強さを反映するもので、日経平均寄与度の高い銘柄が売られれば全体指数は下がるが、指数と投資家マインドとは良い意味で遊離しているということになる。しかし、市場筋の話を聞くと、個人投資家の懐事情は二極化していて、主力どころの高配当株などを保有したまま、「動かざること山の如し」を貫いている投資家は順調な一方、グロース市場の銘柄にリバウンド狙いで逆張りから入っている投資家などが傷を深くしているという。今回のバリュー株シフト(グロース株売り)は思った以上に長期にわたり、かなりドラスチックな偏りをみせている。
個別株は27日の配当権利付き最終日を前に3月・9月期決算期の高配当利回り銘柄に駆け込みでの買いが観測されているが、一方で「短期スタンスのトレーダーは権利落ち直前の株主還元期待の大きい銘柄については回避する傾向が強い」(中堅証券マーケットアナリスト)という。権利落ち後のキャピタルロスを警戒するためだ。今週前半はそこを押さえたうえでテーマ買いの流れに乗った銘柄を探してみたい。
目先は国策の追い風が吹く2次電池関連株に波状的に資金が流入している。岸田政権は10月にまとめる経済対策で重要物資の供給力の強化を盛り込む調整に入ったことが伝わっており、そのなか半導体や蓄電池、バイオ関連などに優遇税制を検討しているという。また、西村経済産業相が21日にカナダの首都オタワを訪問し、カナダとEV電池サプライチェーンの強化で協力するための覚書を締結した。電池製造に必要な重要鉱物の開発などが骨子となっており、株式市場でも同関連株へ熱視線が注がれる背景となっている。
直近23日の株探トップ特集「EV電池関連・買い場到来の5銘柄」では同関連株が買われる背景と注目株が紹介されているが、内容についてはそちらを参考に、当欄ではそこで紹介されていないEV電池関連株をいくつか取り上げてみたい。まず、低PBR株物色の流れにも乗る新日本電工<5563>。日本製鉄系の合金鉄大手だが、リチウムイオン電池正極材など車載電池材料の製造を手掛けている。PBRは0.6倍台。12月期決算で今回の配当落ち後の調整圧力からも解放されている。また、足もと急動意しているが押し目買いを前提にオハラ<5218>もマーク。光学ガラスの老舗で、EV電池の長寿命化や充電効率向上に使われる添加剤を製造している。こちらはPBR0.7倍台で10月期決算だ。このほか、9月5日に取り上げたフロイント産業<6312>は急騰後に調整を入れ、再浮上をうかがうタイミング。同社は全固体電池用の粉体装置で商機をつかむ公算が大きい。決算期は2月だ。
あすのスケジュールでは、8月の企業向けサービス価格指数が朝方取引前に開示されるほか、午前中に40年物国債の入札が行われる。9月の月例経済報告も注目される。また、IPOが2社予定されており、東証グロース市場にネットスターズ<5590>、東証スタンダード市場と名証メイン市場にオートサーバー<5589>が新規上場する。海外ではハンガリー中銀の政策金利発表、7月の米S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、9月の米消費者信頼感指数、8月の米新築住宅販売件数など。米2年物国債入札も予定されている。このほか、米ボウマンFRB理事の講演にもマーケットの関心が高い。(銀)