鈴木英之氏【10月下期相場入り目前、東京市場の展望を読む】(2) <相場観特集>
―中銀ウィーク通過、為替の円安横にらみにどう動く?―
25日の東京株式市場は強弱観対立のなかも自律反発狙いの買い優勢に傾き、日経平均株価は5日ぶりに反発した。9月期末を目前にして配当権利取り狙いで投資資金が流入したことも全体相場に浮揚力を与えたようだ。中銀ウィークを通過して日米の金融政策の違いが改めて認識され、外国為替市場では円安に振れているが、今週28日から実質下期相場入りとなる株式市場は果たしてどういう動きをみせるのか。先読みに定評のある業界関係者2人にここからの展望と物色の方向性を聞いた。
●「全体相場は横ばい基調、グロース株に復活期待も」
鈴木英之氏(SBI証券 投資情報部長)
今年度相場も10月から下半期入りする。10月下旬からは中間決算の発表が本格化するが、その内容はそんなに悪くはないだろう。足もとの円安を考慮すれば、中間決算で業績の増額修正を発表する企業も出てくると思う。また、10月2日に発表される日銀短観の結果も悪い内容ではないとみている。ただ、その一方で10月からはインボイス(適格請求書)制度も始まる。同制度は一部中小企業などにとっては負担になる面もあると言われていることなどは警戒要因となる。
米国経済は、コロナ禍でたまった個人の過剰貯蓄の効果が解消に向かうことも想定されるなか、いまの強い経済状況が続くかは不透明要因が多い。米国景気の足もとの好調さは、これまでの状況を反映した「余熱」の部分も少なからずあるのではないか。
日銀は先週の金融政策決定会合で「現状維持」を決めた。前出のインボイス制度やトラック運転手の労働時間規制が強化される「2024年問題」などが逆風となることも予想されるなか、しばらくはマイナス金利政策の解除はできないのではないか。
そんななか、今後1ヵ月程度の日経平均株価の想定レンジは3万2000~3万4000円前後を予想している。10月相場は、上値を意識しながらも基調は横ばいとなりそうだ。
個別銘柄では、9月の配当権利取りを経ていったんバリュー株物色の流れは一巡する可能性もあるとみている。東京エレクトロン <8035> [東証P]やレーザーテック <6920> [東証P]といった半導体関連株や人工知能(AI)関連株などグロース株が反発に転じることも想定しておきたい。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資情報部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。
株探ニュース