2023年「ノーベル賞」発表目前、日本人の受賞復活なるか 有望株総点検 <株探トップ特集>
―10月2日から発表スタート、次世代を切り拓く画期的技術に世界の視線集中―
今年も「ノーベル賞」の季節が迫ってきた。10月2日から各賞の受賞者が発表される。2022年は日本人の受賞はなかっただけに、今年もし日本出身者が受賞すれば21年の真鍋淑郎・米プリンストン大学上席研究員(米国籍)以来、2年ぶりとなる。例年この季節になると、株式市場でも話題を集めるノーベル賞関連株の動向を探った。
●英クラリベイトは2人の日本人を有力候補に挙げる
23年のノーベル賞は、2日の生理学・医学賞を皮切りに、3日に物理学賞、4日に化学賞、5日に文学賞、6日に平和賞、9日に経済学賞が発表される。10月第1週からの「ノーベル賞ウィーク」を前に株式市場の関心も高まっている。
最近の日本出身者のノーベル賞受賞では、21年に真鍋淑郎氏が物理学賞を受けたが、気候変動の研究ということもあり、目立った関連銘柄はなかった。株式市場が沸いた受賞は、19年の旭化成 <3407> [東証P]の吉野彰名誉フェローによる「リチウムイオン電池」の開発での化学賞受賞まで遡ることになり、今年の受賞が期待される。
英調査会社のクラリベイト<CLVT>は19日、今年のノーベル賞有力候補23人を発表した。このうち、日本人では生理学・医学賞に筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史機構長、化学賞に川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター長の片岡一則・東京大学名誉教授の2人が候補に挙げられた。
●生理学・医学賞は筑波大・柳沢氏など有力
2日に発表される生理学・医学賞の有力候補とされるのが、前出の筑波大学の柳沢正史氏だ。同氏は睡眠と覚醒の制御に関するタンパク質「オレキシン」を発見。睡眠のメカニズムの一端を解明したことが評価されている。同氏は任天堂 <7974> [東証P]などが出資する株式会社ポケモンの睡眠ゲームアプリの監修なども手掛けた実績を持つ。帝人 <3401> [東証P]やパラマウントベッドホールディングス <7817> [東証P]などスリープテック関連銘柄なども注目されそうだ。
東京都医学総合研究所の脳・神経科学研究分野長である長谷川成人氏は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭葉変性症(FTLD)などの発症に関わるタンパク質「TDP-43」を発見。ALS関連では、三菱ケミカルグループ <4188> [東証P]傘下の田辺三菱製薬やエーザイ <4523> [東証P]などが関連銘柄となる。
また、岸本忠三・大阪大学特任教授と平野俊夫・量子科学技術研究開発機構理事長顧問は、体の免疫で重要な役割を担う「インターロイキン6(IL-6)」を発見。その発見は関節リウマチ治療薬「トシリズマブ(アクテムラ)」の開発につながった。同薬は、中外製薬 <4519> と大阪大学が共同開発している。
大阪大学の坂口志文特任教授は、免疫が過剰に働くのを抑える「制御性T細胞」を発見した。同細胞を巡っては、関連した抗体などの製品を扱う医学生物学研究所を子会社に持つJSR <4185> [東証P]などが注目される。
京都大学の森和俊教授は、がんや糖尿病、パーキンソン病と関わりのある異常なタンパク質の蓄積を防ぐ「小胞体ストレス応答(UPR)」の仕組みを解明。アステラス製薬 <4503> [東証P]は、米国企業とUPRを調節する治療薬に関して提携契約している。
●物理学賞では「カーボンナノチューブ」や「光格子時計」など
3日には物理学賞が発表される。理化学研究所の十倉好紀・創発物性科学研究センター長は新材料「マルチフェロイック物質」を開発。将来的に省エネメモリーにつながると予想されている。日本電子 <6951> [東証P]や住友化学 <4005> [東証P]などが関連銘柄だ。
東京工業大学栄誉教授の細野秀雄氏は、鉄化合物系の高温超電導 物質を発見したことで注目されている。関連銘柄は高温超電導コイルに絡む住友電気工業 <5802> [東証P]や古河電気工業 <5801> [東証P]など。「カーボンナノチューブ」研究の飯島澄男・名城大学終身教授も有力候補だ。同氏はNEC <6701> [東証P]の特別主席研究員でもある。クラレ <3405> [東証P]やGSIクレオス <8101> [東証P] などが関連銘柄となる。
また、電気自動車(EV)やドローンなどに使われる「ネオジム磁石」を開発した大同特殊鋼 <5471> [東証P]の佐川眞人顧問も候補だ。更に東京大学の香取秀俊教授は「光格子時計」を開発した。光格子時計は300億年に1秒しかずれないといわれる。島津製作所 <7701> [東証P]やNTT <9432> [東証P]が共同研究機関となっている。
●化学賞では「DDS」や「ペロブスカイト型太陽電池」などに注目
4日には化学賞が発表される。前出の片岡一則氏は薬を効率的に患部に届けるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)と呼ばれる研究に取り組んでいる。同氏は創薬ベンチャーのNANO MRNA <4571> [東証G]の創業者で社外取締役を務めていることが注目されている。
桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授は、「ペロブスカイト型」と呼ばれる結晶構造物を用いて、板に塗るだけで発電が可能という薄くて軽い低コストでの次世代太陽電池を考案した。積水化学工業 <4204> [東証P]やホシデン <6804> [東証P]などが関連銘柄だ。東京大学卓越教授の藤田誠氏は、分子同士がひとりでに結びつく「自己組織化」と呼ばれる現象を活用。金属イオンと有機分子を混ぜることで複雑な構造の材料を作ることに成功した。自己組織化ペプチドを手掛けるスリー・ディー・マトリックス <7777> [東証G]などが関連銘柄となる。
中部大学の澤本光男特任教授は合成ゴムなどの高分子を精密に合成する「リビングラジカル重合」の発見・開発が評価されている。カネカ <4118> [東証P]や大塚ホールディングス <4578> [東証P]などが関連銘柄となる。
太陽光と水、二酸化炭素(CO2)を使ってプラスチック原料を作る「人工光合成」では、大阪公立大学の神谷信夫・特別招へい教授と岡山大学の沈建仁教授が注目されている。中国出身の沈教授が受賞すれば、日本で働く外国籍の研究者として初の受賞となる。関連銘柄は三菱ケミカルグループ <4188> [東証P]など。
●文学賞では村上春樹氏や多和田葉子氏、小川洋子氏など
5日には文学賞が発表される。常連となった村上春樹氏のほか、ドイツ在住の日本人作家である多和田葉子氏、それに小川洋子氏などが候補に挙がる。関連銘柄は、KADOKAWA <9468> [東証P]や丸善CHIホールディングス <3159> [東証S]、文教堂グループホールディングス <9978> [東証S]、三洋堂ホールディングス <3058> [東証S]など。
更に9日の経済学賞では、米プリンストン大学教授の清滝信宏氏が候補となっている。同氏は金融危機の理論を確立したことが評価されている。同氏は旧・池田銀行の創業家の生まれで、池田泉州ホールディングス <8714> [東証P]が関連銘柄だ。
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