プラチナはもみ合い、ドル高が上値圧迫も供給不足見通しが下支え <コモディティ特集>

特集
2023年9月27日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は9月、景気減速懸念などを受けて売り優勢となったが、900ドル割れで買い戻されて下げ一服となった。

ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告で供給不足見通しが示され、更に米連邦公開市場委員会(FOMC)の金利据え置き見通しを受けて950ドル前後に戻したが、パウエル米米連邦準備理事会(FRB)議長の講演でタカ派姿勢が示されると、戻りを売られた。

中国の不動産業界に対する懸念や各国中銀の高金利維持で景気減速懸念が強い。また、9月のユーロ圏のHCOB総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は47.1となり、節目となる50を下回った。33ヵ月ぶり低水準だった前月の46.7や事前予想の46.5は上回ったが、ドイツの景気後退懸念もあり、先行き懸念が残っている。9月の欧州中央銀行(ECB)理事会では追加利上げが決定し、高金利が維持される見通しとなっている。

一方、9月の米総合PMI速報値は50.1と前月の50.2から小幅に低下したサービス部門のPMIが今年2月以来の低水準となったことに加え、新規受注も落ち込んだが、節目となる50を維持した。全米自動車労組(UAW)のストライキ拡大や、米政府機関閉鎖の可能性などで先行き不透明感も残るが、イエレン米財務長官は、米経済のソフトランディング(軟着陸)シナリオは崩れないとの見方を示している。

しかし、米10年債利回りが2007年以来の高水準となる4.56%まで上昇しており、ドル高が続くと、プラチナの上値は抑えられることになりそうだ。

中国当局の不動産政策や景気刺激策はプラチナの下支え要因である。ただ、不動産開発大手、恒大集団は25~26日に予定していた主要債権者会合を取りやめた。同社は示していた再編案を見直す必要があると説明したが、新規債券の発行資格を満たせないと発表しており、再編計画が行き詰まっている。10月30日に香港の裁判所で会社清算の審問を受ける予定であり、デフォルト(債務不履行)となれば中国の金融危機からリスク回避の動きが広がりそうだ。

●プラチナは2四半期連続で供給不足

WPICの四半期報告によると、第2四半期のプラチナは11トンの供給不足(前四半期16トン)となり、2四半期連続で供給不足となった。半導体不足の緩和による自動車生産の堅調や、ガラス・化学部門での生産能力拡大による工業用需要の増加が背景にある。投資用需要の堅調や供給量が抑制されたことも供給不足の要因となった。2023年は31トンの供給不足と前年24トンの供給過剰から供給不足に転じる見通しである。プラチナは景気減速懸念やドル高が圧迫要因だが、供給不足が続くと、900ドル前後の支持帯で下げ止まることになりそうだ。

●プラチナETFから投資資金が流出

プラチナETF(上場投信)残高は9月25日の米国で30.65トン(8月末30.67トン)、21日の英国で13.28トン(同13.41トン)、南アフリカで11.99トン(同12.74トン)となった。景気減速懸念や各国中銀の高金利長期化の見方を受けて投資資金が流出した。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、9月19日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは9994枚(前週6721枚)に拡大した。買い越しは8月29日の1万5038枚をピークとして縮小したが、900ドル割れで買い戻され、拡大に転じた。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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