明日の株式相場に向けて=引け際の垂直降下、中国大型連休で要警戒
きょう(28日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比499円安の3万1872円と急反落。前日は先物主導で朝安後に一貫した戻り足をみせ、大引けはしっかりとプラス圏に浮上しこの日の高値で着地した日経平均だったが、今日は一転してダムが決壊したかのような売り圧力に屈する形となった。実質10月相場入りとなった東京市場だったが、配当権利落ち分224円の下押しがあったとはいえ、それに輪をかけてリスクオフに傾斜した背景は何か。期末のリバランス売りとひと言では片付けられない要素もありそうだ。
これに先立って前日の欧州株市場では主要国の株価指数が総じて軟調。ユーロ圏の景気減速に対する懸念が色濃く、独DAXや仏CAC40はともに5日続落と調整色が強い。更に、米国株市場ではNYダウが続落。引き続き米長期金利の上昇が重荷となっている。米10年債利回りは一時4.64%と約16年ぶりの水準に上昇した。米国では富裕層の間でもノーリスクで5%近い利回りが確保できるのならそちらを選ぶ、という動きがドミノ化しているもようで、ヘッジファンドの解約が相次いでいるという。
今の米国の金利動向は原油市況との連動性が高いことが指摘されている。「原油先物価格が上昇するとそれだけで金利が上昇した気分になってしまう。実際は必ずしもそうではないが、そういうムードが醸成されていることが問題だ」(中堅証券ストラテジスト)という。前日にWTI原油先物が急騰し一時1バレル=94ドル台をつけた。フシ目の100ドル大台が見えてきたが、こうなると100ドルというメルクマールを一度は通過しないと原油価格が沈静化するというシナリオが想定しにくくなってきた。それに付随して米長期金利の5%台乗せも意識されることになりそうだ。
原油高騰は米景気のソフトランディングの方向性を大きく揺るがすことになりかねない。サウジの原油減産が反米感情によるものであるとすれば米国にとっては厄介である。市場関係者によると「バイデン米大統領は石油備蓄の放出をしたくても、今に至って在庫は空に近い状態で減産アタックに太刀打ちできない。原油の100ドル突破は時間の問題と思われ、昨年6月の120ドルを視界に入れる展開となると、米景気減速とのセットでスタグフレーションも想起される」(ネット証券アナリスト)とする声もある。これを回避するシナリオとして、今からちょうど15年前、2008年9月のリーマンショックのような強烈な負のスパイラルが発生すれば話は別だが、もちろんそれでは本末転倒である。
そして、今日の東京市場。配当権利落ち日ということもあり日経平均が安く始まるのは避けられないとしても、外国為替市場で円安が進んでいることや、機関投資家による配当再投資の動きなどが下支え要因となり、売り一巡後は早々に戻り足に転じるのではないかとする見方も多かった。しかし、それは大きく裏切られることになる。朝安後に日経平均は下げ渋る動きをみせたが、前引け間際に突然フリーフォール状態の急落に見舞われた。前引けは558円安。後場寄りにも売り残した玉の処分売りが出て一段安。その後は押し目買いや買い戻しで再び戻り足をみせたものの、戻し切れず500円近い下げで取引を終えた。
前引け直前の急落についてはマーケットでも諸説入り乱れる状況で真相は不明。為替のレートチェックつまり為替介入の下準備があったという話しや、香港市場で中国の恒大集団が売買停止となったことで不動産リスクに身構えたという話。しかし、同じタイミングで為替市場では大きな動きがなく、恒大の売買停止は午前10時過ぎには分かっていたことである。あるいは日経225入れ替えに伴う差額分の換金売り。3銘柄入れ替えに際し時価総額に大きな差があるためだが、これが222銘柄で4000億円分の売り圧力になるという説。しかし、「前引けのこのタイミングでドカンとマーケットに売りを出すようなやり方はまずあり得ない」(ネット証券アナリスト)と断言する。不気味ともいえる突然の急降下。今週末から中国の国慶節などに伴う大型連休に入ることで、日本が身代わりのヘッジ売りに晒されるリスク、もしくは売り仕掛けも念頭に置いておくところかもしれない。
あすのスケジュールでは、8月の失業率、8月の有効求人倍率、8月の鉱工業生産指数、8月の商業動態統計、9月の都区部消費者物価指数(CPI)、8月の自動車輸出実績、8月の住宅着工統計、9月の消費動向調査など。海外では9月の独失業率、9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)、8月の米個人所得・消費支出(PCEデフレータ)など。(銀)
最終更新日:2023年09月28日 17時17分