明日の株式相場に向けて=米長期金利上昇のネガティブインパクト
きょう(4日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比711円安の3万526円と大幅安で5日続落。3万1000円台ラインは車輪止めにならず、寄り付きから崩れ落ちるように3万円トビ台へと舞台を移した。ジャパンウイークにおける「投資の日」、皮肉にも日経平均はおよそ4カ月にわたったボックス圏もみ合いを下放れる格好となった。先物主導の売り圧力は執拗であり、下値模索の動きからなかなか脱却できない局面が続いている。今の株安は国内要因ではなく、米国発あるいは中国発の材料で海外市場がリスクオフに傾けば日本株は“トバッチリ売り”に晒される構図となっている。台風は上陸していなくても、その進路をよく確認しながら慎重な投資を心掛けるよりない。
今の東京市場がとりわけ海外株安の煽りを受けやすいのは、今春以降、日本株がバフェット効果や東証大号令による低PBR見直し期待を背景としたバリュー株人気によって、世界株式市場のなかで優位性を発揮し頑強な値動きをみせていたことが理由である。なぜかといえば、ここ最近は「欧州や米国での想定外の金利上昇を受け、機関投資家が債券の含み損解消のため利益の乗っていた日本株との合わせ切りに動いている」(ネット証券アナリスト)という背景があるからだ。これとは別に、前日に触れた年金資金のリバランスの売り圧力が2兆円規模で発生しているという話も、債券安と株高を背景に全体ポートフォリオに占める株式保有比率が想定以上に拡大してしまったことが、そのトリガーとなっている。「ここまで強かった日本株」という事実が足もとの下げを大きくしている。
「相場がグローバルに堅調な時は問題ないが、地合いが弱体化した時に含み利益の残っているセグメントが穴埋めのターゲットになってしまうのは、機関投資家の投資行動の規則性を考えれば仕方のないところ」(中堅証券ストラテジスト)というように、足もとの日本株の先物主導による売り崩しは、そうした実需面の背景を踏まえての仕掛けと思われる。
最大のカギを握っているのは米国の長期金利。ここ上昇基調が顕著となっているが、前日は10年債利回りが一時4.81%と16年ぶりの高水準をつけたことで、株式市場の割高感が改めて意識されたという解釈。もっとも、0.01%でも前日の水準を上回れば長期金利は“16年ぶりの高みを進み続ける”ことになり、そのたびに株価下落の材料として囃(はや)されるとしたならキリがない話ではある。株式市場の方で金利高に対する耐性がつけば、長期金利上昇ネタによる株叩きのステージから脱却できるのだが、実際は金利高の影響が実体経済を含めさまざまなところに及んでおり、一筋縄ではいかない状況だ。例えば、金利高の影響はファンドやスタートアップへの投資を着実に萎えさせている。これがGAFAMやエヌビディア<NVDA>などビッグテックへの業績に影響を及ぼすのにそれほど時間はかからないという見方もある。
しかし、米株安はFRBによる金融引き締め長期化を懸念しているという解説に違和感を覚える投資家も少なくないはずだ。政策金利の引き上げは多くてあと1回、最終的な金利の到達点が見えているにも関わらず、引き締め長期化というフレーズが再登場しているのは、FRBの一挙一動とは関係なく、米長期金利の上昇が青天井と化していることが言わせている部分もある。10年債利回りの上昇スピードの速さは2年債利回りのそれをはるかに上回り、逆イールドが急速に縮小している。だが2年債利回りが低下しているわけではない。「上昇する2年債利回りを、10年債利回りが倍速で追いかけ抜き去っていくパターンは株式市場にクラッシュの恐怖を感じさせる」(ネット証券)という声もある。
大型連休中で沈黙の中国株市場だが、きょうは香港や韓国などアジア株市場の弱さも日本株の急落と共鳴する形となった。中秋節・国慶節明けの中国株市場の動向も警戒されるところで、目先突っ込み買いチャンスには見えるが打診買いにとどめ、今しばらくは“蛮勇を振るわず”が賢明といえるかもしれない。
あすのスケジュールでは、9月の輸入車販売、9月の車名別新車販売、9月の軽自動車販売など。また、午前中に6カ月物国庫短期証券の入札及び30年物国債の入札が行われる。海外では8月の豪貿易収支のほか、米国では8月の貿易収支、週間の新規失業保険申請件数などにマーケットの関心が高い。また、バーFRB副議長が討論会に参加する予定。なお、中国市場は休場となる。(銀)
最終更新日:2023年10月04日 19時42分