「上方修正サイン」点灯中! 上期決算シーズン接近で要注目の6銘柄 <株探トップ特集>
―好業績&高進捗銘柄に照準、過去データから増額有望な妙味株をリストアップ―
小売業を中心とする2月期決算企業の上期決算発表が一巡し、今週後半からはいよいよ3月期決算企業の上期(4-9月)決算発表シーズンに突入する。決算発表の集中期間入りを前に、業績予想を修正する企業が増えている。通常、上場企業は期初に立てた業績予想について期末までに何回か見直しを行い、より実態を反映した数値に修正する。業績修正を発表する企業が1年で最も多い時期が、上期決算発表のピーク期間にあたる10月下旬から11月中旬だ。今回は3月期決算企業を対象に、第1四半期の業績が好調で通期計画に対する進捗率が高く、業績上方修正が期待できそうな銘柄を探った。
●慎重な予想多く上方修正相次ぐとの見方も
上場企業の24年3月期第1四半期(4-6月)業績は、世界的なインフレや中国経済の低迷といった逆風材料があったものの、全体としては底堅い決算を示す企業が目立つ。新型コロナウイルス感染症の5類移行などを背景に内需企業の業績が回復したほか、輸出関連企業は急速な円安進行が追い風となった。世界景気後退など先行きに対する警戒感が強く、足もとの業績が好調でも慎重な姿勢を崩さない企業が多くみられるものの、これから迎える決算発表シーズンで上方修正する企業が相次ぐとの見方も出ており、ここは業績上振れ余地が大きいとみられる企業を改めて見直しておきたいところだ。
●業績修正履歴から上方修正候補を選出
上場企業が算出する業績予想は企業ごとに習性を持ち、毎年保守的な計画を出す企業があれば、強気な見通しを立て続ける企業もある。業績修正についても同様で、期中に修正を繰り返す企業がある一方、計画値から大きく外れても修正せずにそのまま期末を迎える企業も多く存在する。
ここでは業績予想を上方修正する傾向がある企業に照準を合わせ、前期の上期決算発表シーズンに上方修正した実績のある銘柄群から、第1四半期経常利益の通期計画に対する進捗率が過去5年間の平均値を上回り、かつ足もとの業績が好調に推移している6社をピックアップした。中東情勢の緊迫などで全体相場が波乱含みの展開にあるなか、調整局面にある好実態株に注目してみたい。
●サンゲツは今期減益予想も値上げ浸透で上方修正の公算大
サンゲツ <8130> [東証P]はインテリア商社最大手で、主力の壁紙は国内で50%強のシェアを有する。原材料価格や物流コストの高騰を受けて一昨年から値上げを3回実施しているが、豊富な商品点数や在庫機能の保有などを強みに販売数量への影響は限定的で、四半期ベースの増収増益が続いている。24年3月期はコスト増加などを考慮し、経常利益154億円(前期比25.6%減)と大幅減益を見込むが、第1四半期実績(55億8600万円)の対通期進捗率は36.3%に達しており、業績上振れが視野に入る。今期配当は年130円(前期比25円増)の計画で、配当利回りは4.5%台と高水準で推移している。同社は株主還元に積極的で業績が上振れすれば、配当増額や自社株買いの実施も期待される。
●ジェイテクトは円安追い風に利益拡大、PBR改善策にも期待
ジェイテクト <6473> [東証P]はトヨタ系の自動車部品メーカー。世界トップシェアを誇るステアリングや駆動系部品のほか、軸受・ベアリング、工作機械なども手掛ける。第1四半期の業績は税引き前利益段階で249億4000万円と前年同期比2.7倍に膨らんだ。自動車生産の回復で北米や国内を中心にステアリングなどの販売が大きく伸びたほか、原価低減や円安効果も利益改善につながった。税引き前利益は第1四半期実績だけで通期計画(655億円)に対する進捗率が38.1%と高水準なうえ、想定為替レートを1ドル=128円と実勢より約20円も円高に設定しており、上振れ余地は大きそうだ。指標面ではPBRが0.6倍台と解散価値を大きく下回っている。PBR1倍回復に向けた株主還元策の強化などにも期待がかかる。
●萩原電気HDは過去5年で3回上方修正の実績
萩原電気ホールディングス <7467> [東証P]は自動車向けを主力とする半導体・電子部品の商社。トヨタグループ企業を主要取引先とし、デンソー <6902> [東証P]向けが売上高の半分近くを占める。第1四半期は自動車生産台数の回復や供給品の採用車種拡大などを背景に半導体や電子部品の引き合いが旺盛だったほか、IT投資ニーズを取り込んだソリューション事業も大きく伸び、経常利益は25億2900万円(前年同期比72.1%増)と四半期ベースの過去最高を記録した。通期計画の60億円に対する進捗率は42.2%に達する。また、直近5年間で3回も11月上旬に通期計画を上方修正した実績を持っており、増額期待は大きい。業績予想とともに配当も増額することも多く、株主還元の切り口でも注目だ。
●石原産は2年連続で8月と11月に上方修正
石原産業 <4028> [東証P]は塗料などの白色顔料として使われる酸化チタンと農薬を2本柱とする化学メーカー。第1四半期業績は売上高376億700万円(前年同期比12.9%増)、経常利益58億300万円(同31.4%増)と2ケタ増収増益を達成した。有機化学事業で欧州など海外を中心に殺虫剤の販売が好調だったほか、持ち分法投資利益や為替差益が増加したことも利益を押し上げた。好調な業績を踏まえ、第1四半期決算発表と同時に上期の経常利益予想を上方修正したが、通期計画は据え置いた。第1四半期実績の対通期進捗率は55.3%と高水準で業績上振れは濃厚とみられる。同社はここ2年連続で第1四半期決算発表時に上期計画、上期決算発表時に通期計画をそれぞれ上方修正した経緯があり、今年も同様のパターンとなるか注目したい。
●力の源HDは国内の回復基調強く海外も好調維持
博多ラーメン店「一風堂」を運営する力の源ホールディングス <3561> [東証P]は海外展開に注力している。毎年20~30店舗のペースで海外出店を加速し、28年3月期に売上高500億円(23年3月期は261億1600万円)を目指す。足もと第1四半期業績は回復が遅れていた国内事業が持ち直したうえ、円安が追い風となった海外事業も増益基調が続き、売上高70億4900万円(前年同期比28.5%増)、経常利益6億8300万円(同84.2%増)といずれも大幅な伸びを示した。通期の経常利益は25億6400万円(前期比10.5%増)を計画するが、客数増加を伴ったトップラインの成長に加え、想定為替レートを実勢より円高に設定するなど、業績上振れに含みを持たせている。国内で7月に実施した値上げの効果も見込まれる。
●ゲオHDは対通期進捗率5割超で上振れ濃厚
ゲオホールディングス <2681> [東証P]の第1四半期業績は、経常利益が70億6800万円(前年同期比49.5%増)と四半期ベースの過去最高益を7年半ぶりに塗り替えた。物価高騰による生活防衛手段としてのリユース需要が継続するなか、積極出店を進めてきた「2nd STREET」で衣料・服飾雑貨の販売が好調だったほか、新品販売で家庭用ゲーム機「プレイステーション5」本体やゲームソフトのヒットタイトルが伸びた。通期計画135億円に対する進捗率は5割を超えており、業績上振れは有力とみられる。株価は9月1日に約16年ぶりの高値をつけたあと調整色を強めたが、足もとでは75日移動平均線をサポートラインに切り返す動きにある。予想PER12倍台と割高感はなく再浮上に期待したい。
株探ニュース