新興市場見通し:弱含みをメインシナリオとしつつ反発の可能性に期待も、IPOは6社
■日米の長期金利上昇で大幅続落
今週の新興市場は大幅続落。イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザでの地上戦準備で中東情勢が緊迫化。原油価格が上昇し、インフレ懸念を煽った。そこへ、米国の9月小売売上高など市場予想を上回る米経済指標発表が相次ぎ、米国経済の基調が想定以上に強いことが確認され米長期金利が大きく上昇。これを受けて、日本の長期金利も上昇した。中東情勢緊迫化で投資家がリスク回避の姿勢を強めたうえ、日米の長期金利上昇で株価収益率(PER)の高い銘柄に売り圧力が強まったため、高PER銘柄の多い新興市場では売り優勢の展開に。日経平均、TOPIXをアウトパフォームする形での大幅続落となった。ただ、値頃感からの押し目買いが入り、週末はやや反発したが戻りは限定的だった。今週の騰落率は、日経平均が-3.27%だったのに対し、東証グロース市場指数は-3.76%、マザーズ指数は-3.80%だった。
個別では、8営業日続落で見切り売りが継続したデータHR<3628>、24年8月期の会社側業績見通しが市場期待に届かなかったとの声が聞かれたバリュエンスHD<9270>、23年12月期業績予想を下方修正したAtlas Technologies<9563>などが週間騰落率の値下がり上位に入った。その一方、導出先の米社が固形癌対象のフェーズ1試験情報を治験サイトへ登録と発表したカルナバイオ<4572>、26年8月期の営業利益目標を19億円とする中期経営計画を発表したグッピーズ<5127>が週間騰落率の値上がり上位となった。
■米経済指標発表で長期金利見通しを探る展開か、IPOは6社
来週の新興市場は弱含みがメインシナリオだが、中東情勢等についての懸念後退局面では反発の可能性もあるとみる。米国では26日に7-9月期国内総生産(GDP)速報値が発表されるが、消費の堅調さを受けて想定以上の数字が発表されるとみられ、米金融引き締め長期化観測および米長期金利の上昇を後押しする公算が大きい。高バリュエーション銘柄の多い新興市場では、引き続き売り材料となりそうだ。
ただ、中東情勢に関して、イスラエルは米国や欧州の意向に沿う形で、ガザ地区の地上戦で民間施設の被害や民間人の犠牲を最小限にするような配慮をしつつ、地上戦を進める可能性もあり、その場合は戦禍の拡大は限定的となり、これまで懸念拡大で値を上げてきた原油価格は下げに転じる余地があろう。その際には、GDP上振れでも9月小売売上高などから織り込み済みと捉えられ、米長期金利についても上昇一服となる可能性もある。マザーズ指数は、コロナショック直後の20年3月安値に迫る水準となっており、値ごろ感が増していることも頭の片隅には入れておきたい。
来週の新興市場では24日にはマクアケ<4479>が、25日には弁護士コム<6027>、サイバトラスト<4498>、シーユーシー<9158>が、26日にはドリコム<3793>、Jストリーム<4308>が、27日はAiming<3911>、SBIリーシング<5834>が決算発表を予定しており、注目を集めそうだ。なお、今週の新規株式公開(IPO)は6社が予定。なかでも今年最大規模となるKOKUSAI ELECTRIC<6525>は、IPO市場への資金流入復活のきっかけになるかという点からも注目となりそうだ。
《FA》