明日の株式相場に向けて=決算プレーは空売り筋の土俵
週明け30日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比294円安の3万696円と反落。中東情勢や欧米株安という外部環境をにらんで下げたというよりは、きょうは上値を買う気がしないという投資家の思惑がそのまま投影されたような地合いだった。今週が中銀ウィークで手を出しにくいという事情とも若干ニュアンスが違う。10月末のTOPIX浮動株比率見直しに伴う銘柄リバランスで売買代金は後場に急膨張し、5兆6600億円あまりに達したが、俗に言う活況相場とは次元を異にしている。
前週末27日に事前の見方とは日経平均が逆方向に動き、400円近い上昇をみせたことは、空売り筋の買い戻しのニーズもかなり強いことをうかがわせた。実際、26日の木曜日時点で空売り比率が48%強に達していたが、これが通常50%を超えてくると統計的に“陰の極”を暗示する。今はその一歩手前ということだ。
しかし、仮に空売り比率が50%を超えて、いったん反転しても再び下に引っ張られるまでさほど時を要さない。いわゆる現状は押し目を買いたい投資家も確かに多いのだが、それ以上に戻り売り圧力の方が強いといえる。下値に突っ込んだ局面では空売りの手仕舞いと押し目買いが全体を押し上げるが、それは中空を舞う紙飛行機が風に煽られるのと同様、風が止むまでの時間にとどまる。それを本能的に察知して、上値では買いの手が引っ込むというのが今の相場のメカニズムだ。
グロース市場が先行する形で個別株の売り仕掛けが横行しているのは、今の相場つきを見れば一目瞭然である。国内でも決算発表期間に入り、企業の上方修正の動きが4~6月期と比べて活発化するとの見通しが強気筋の根拠となっていた。その見立てに間違いはないはずだが、実際にフタが開き始めたところで株価動向を俯瞰すると、決算内容を売りの手掛かりとされているケースの方が目立つ。もちろん上振れ方向のサプライズ決算は素直に買われるが、そうでない場合、つまり内容が悪かったケース、あるいは良くても期待に届かなかった際に強烈な売りを浴びせられる銘柄が多い。つまり、今のように閉塞感に覆われている相場では、好決算先取りの決算プレーはなかなか成就せず、むしろかなり不利感の漂うトレードといってよい。「決算発表直前は空売りの目線でターゲットを探す方が、よほど期待値が高い」(中堅証券ストラテジスト)という市場筋の言葉が残念ながら的を射ている。
きょうの相場では前週末の決算で24年3月期の業績予想を減額したトプコン<7732>、オムロン<6645>、日野自動車<7205>、エンプラス<6961>などがストップ安に売り込まれた。また、同じく下方修正を嫌気されたスクロール<8005>は値幅制限いっぱいではなかったものの、一時20%近い急落を強いられた。一方、コマツ<6301>は24年3月期の最終利益予想が従来計画の2990億円から3400億円と大幅に上方修正され、減益から一転して増益予想に変わり、連続最高利益更新というオマケ付きだったが、コンセンサス未達を理由に株価は大きく売り優勢に傾いた。ここで重視すべきは、コマツの決算内容に対する株価の上げ下げというよりは、決算前の同社の株価位置の方である。9月19日に年初来高値をつけてから急速に値を崩し、目先は下げ過ぎといえる水準まで株価を急降下させていたが、この決算発表を受けてリバウンドするどころか、更にマドを開けて売り崩されたことが今の全体相場に吹く向かい風の強さを物語っている。
当然ながら、決算を好感され大きく買われている銘柄もある。海外製粉事業が好調で今期利益予想を大幅増額した日清製粉グループ本社<2002>は13%を超える急騰をみせた。また同じく好決算モノでは栗本鐵工所<5602>やM&A総研ホールディングス<9552>なども買い人気を集めたが、決算を嫌気されて売られる銘柄と騰落率を比べればそのインパクトの違いは歴然である。投資家にとって、今敢えて荒海に出る必要性は感じられない。
あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の結果発表と植田日銀総裁の記者会見が注目されるほか、9月の失業率、9月の有効求人倍率、9月の鉱工業生産指数、9月の商業動態統計、9月の自動車輸出実績、9月の建機出荷、10月の消費動向調査、9月の住宅着工など。海外では10月の中国製造業PMI、7~9月期香港GDP、7~9月期台湾GDP、10月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)、7~9月期米雇用コスト指数、10月の米シカゴ購買部協会景気指数、10月の米消費者信頼感指数など。(銀)
最終更新日:2023年10月30日 18時30分