【植木靖男の相場展望】 ─11月初めの急騰はなにを暗示する?!
「11月初めの急騰はなにを暗示する?!」
●米長期金利に変化の足音
日経平均株価は10月末にきて再び下値目標値であった3万0500円前後に到達した後、日銀金融政策決定会合の結果をみて、11月月初に一気に爆発的な大幅高をみせた。結果として大陽転となった。まさにこの数週間は波瀾万丈の展開である。
注目された日銀会合の結果は、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の修正というほどの変化はなかった。また、米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の会見内容も市場予想に沿ったものであり、米国株価も強気に転じている。
なぜ、日本株はこれといった好材料が顕在化したわけでもないのに急騰したのか。好材料が表れて株価が上昇するのは当たり前。しかし、そうでもないのに急騰するのは、株価が下げすぎていたからか、さもなくば先行きに好材料が顕在化することを株価が予見し始めたか、のどちらかである。
理屈で見ると、これまで米国長期金利はFRBの利上げや米国景気の底堅さ、さらには国債需給の悪化リスクで上昇し、つれてドルインデックスも上げてドル一強の世界となった。
こうしたドル・金利の上昇は、日米金利差の拡大となり、円安をもたらしてきた。だが、米国株にとっては逆風である。結果、NYダウ、ナスダックは下降に転じた。足もとで反発しているが、流れとしてはNYダウも、ナスダックもなお調整中である。さらに景気の先行指標といわれ、中小型株で構成するラッセル2000株価指数は早くから調整に入っている。
ところが、ここへきて米長期金利になにか変化の足音が聞こえる。まだ明確ではないが、その足音は次第に大きくなってきたようだ。
これが間違いでなければ、いずれ米長期金利の低下、円の反転となるかもしれない。
であれば、米国株はさらに一段の調整があったとしても反発は近い。そうなると、欧米株に周回遅れの日本株は逆に強くなってくることも考えられる。
しかも、世界のマネーが日本株に流入する可能性は高い。日銀の国債買い取りに要した資金はかれこれ1500兆円といわれる。海外に向かったこうした資金が日本に回帰する、あるいは不穏な世界情勢のなか、“不思議に安定した日本”に世界のマネーが避難先として集まってくるかもしれない。
昔からマネーが集まってくると、景気が活況となる大原則があり、株式市場はバブルになるといわれる。平成バブルがよい例だ。
だとすると、ここでの日本株の突如の大幅高は、それを暗示しているとも読める。
●短期目標で浮上する銘柄を拾う
当面の物色はどうみるか。ある程度までは底入れの際の特徴として、グロース株、ディフェンシブ株などはほぼ全面高に近い形をとるとみてよい。そして、そうこうしているうちに主役探しが徐々に進展してくるのではないか。
国内インフレ相場の到来になるとすれば、内需主導型の景気上昇になる。よって設備投資関連や陸海空運関連、小売り、サービス、 金融、 不動産、電力・ガスなどの内需関連に注目することになる。
もっとも、目先的にはとにかく、しっかりと浮上してきた銘柄を短期目標で拾いたい。
タカトリ <6338> [東証S]、富士電機 <6504> [東証P]、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]、東急不動産ホールディングス <3289> [東証P]、大豊工業 <6470> [東証S]、日本ドライケミカル <1909> [東証S]、東京精密 <7729> [東証P]、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]などに妙味がありそうだ。
2023年11月2日 記
株探ニュース