逆風吹くIPOは復活するか、市場活性化に向けた“制度改革”の波到来 <株探トップ特集>
―11月は3社が登場、公開価格設定プロセスの柔軟化の影響に関心集まる―
日経平均株価は6日まで4日続伸し一時、3万2700円台まで上昇した。全体相場は10月下旬に3万円割れに迫る水準まで下落した後、急速に切り返している。きょう7日は利益確定売りで大幅な下落となったものの秋相場に向けた市場の期待は高まっている。ただ、その一方、中小型株は依然として軟調展開が続き、堅調な大型株との二極化が目立つ。そんななか、11月IPO が始まる。今月の新規上場企業は3社にとどまるが、IPO市場改革に向けた動きが始まっており、その動向が関心を集めている。
●中小型株不振のなかIPOも公開価格割れが目立つ
東京株式市場は、大型株が高値圏で活況が続く一方で中小型株は物色圏外という構図が続いている。売買の主力となっている海外投資家にとって、「時価総額の小さい中小型株は投資の対象になりにくい」(市場関係者)という声は少なくない。また、今夏以降、米国を中心にインフレ懸念が高まるなか、「成長性を評価するグロース系の中小型株には投資資金が向かいにくい状況が続いた」(同)ことも指摘されている。ただ、米追加利上げに打ち止め観測も強まり、米長期金利に低下期待が高まるなか、グロース系の中小型株にも徐々に反発期待も膨らみつつあるようだ。
そんななか、IPO市場では夏場以降には、初値が公開価格を割り込む銘柄が目立った。例えば、9月は新規上場した10社のうち3社の初値は公開価格を下回った。10月は12社のうち5社が公開価格を割り込んだ。10月IPOを振り返ると、キャスター <9331> [東証G]のように初値が公開価格の3.1倍に跳ね上がった銘柄もあるが、くすりの窓口 <5592> [東証G]や全保連 <5845> [東証S]などが公開価格を下回った。やはり資金調達額の大小によって株価パフォーマンスが左右された面はありそうだ。
●11月はIPO市場改革が関心を集める
その一方、25日に東証プライム市場に上場した半導体製造装置のKOKUSAI ELECTRIC <6525> [東証P]は別格の動きとなった。資金吸収額は1200億円強でコロナ禍後では最大規模のIPOとなった。ただ、半導体関連の成長性に対する期待は強く、海外投資家からとみられる買いも流入し、初値は公開価格を15%上回り、セカンダリー(流通)市場でも堅調な動きを続けている。
そして11月は3社が登場する。その内訳は、グロース市場への上場企業が2社、スタンダード市場が1社となる。昨年11月の5社からは2社の減少となる。例年11月は12月の年末IPOに向けての端境期となるため、上場銘柄数は減少することが多い。そんななか、今月は東京市場のIPO改革に絡む銘柄が登場することが関心を集めている。
●公開価格や上場日の設定などの柔軟化進める
日本証券業協会は10月1日以降のIPOに関して公開価格の設定プロセスが一部変更されたことを公表している。具体的には(1)仮条件の範囲外で公開価格が設定されたり、公開価格の設定と同時に売り出し株数が変更されたりする可能性がある(2)上場承認日や上場日までの期間を短縮する方式での上場が可能となる(3)公開価格などの条件が決定するまでは、特定上場日ではなく1週間程度の幅を持った上場日が目論見書に記載されることがある(4)訂正目論見書の交付により上場日が延期される場合がある――といったものだ。
例えば、一定の範囲内で公開価格は仮条件の下限の80%以上から上限の120%以下の範囲内で決定されることがありえる。また、これまでは1カ月程度だった上場承認日から上場日までの期間を21日程度まで短縮することが可能となる。IPOの価格設定プロセスに柔軟性を持たせ、市場環境の変化に機敏に対応できるようにすることが目的とみられている。
●上場日程を柔軟化のJEHなどに関心高まる
この上場日程の柔軟化が適用されるのが、今月に東証スタンダード市場に上場するJapan Eyewear Holdings <5889> [東証S]だ。同社の上場日は16日から22日のいずれかの日(上場日の4営業日前までに決定予定)となる見込みだ。同社は福井県鯖江市に本社を構えており、眼鏡の製造・販売が主な事業。世界トップクラスのラグジュアリー眼鏡ブランドとしての地位確立を目指している。発行価格は未定だが、仮条件の上限から弾いた資金吸収額は100億円前後の見込みだ。上場日柔軟化に踏み切った同社株の動向が関心を集めている。
また、8日には東証グロース市場にDAIWA CYCLE <5888> [東証G]が上場する。同社は自転車及び自転車パーツ・アクセサリーなどの販売や自転車整備・修理などのサービス提供を行っている。資金吸収額は15億円程度だ。22日には同じく東証グロース市場にバリュークリエーション <9238> [東証G]が上場する。同社はマーケティングDXや不動産DX(住宅解体のマッチングプラットフォームの運営)などを手掛けている。仮条件から弾いた資金吸収額は6億円程度だ。
今回のIPO改革により、投資家は一層小まめな情報の確認を求められることになるが、そこに新たな投資機会が生まれることも予想される。
■11月IPO一覧
上場日 コード・上場市場 企業名 主幹事
11月8日 5888・東G DAIWA CYCLE 三菱UFJ
16~22日 5889・東S Japan Eyewear Holdings 三菱UFJ、大和
22日 9238・東G バリュークリエーション SBI
(注)東Sは東証スタンダード、東Gは東証グロース
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