窪田朋一郎氏【上値追い続く東京市場、日経平均の上昇どこまで?】(1) <相場観特集>
―短期急騰で過熱感も意識されるなか、個別物色意欲は旺盛―
15日の東京株式市場では、日経平均株価が上値指向を継続し一気に3万6000円台まで駆け上がる場面があった。前週末の米国株市場では目先高値警戒感が意識されNYダウが反落したものの、米長期金利が4%を下回る水準で推移していることなどを背景にハイテク株などが底堅さを発揮した。東京市場でも年明け以降の日経平均の短期急騰で過熱感が意識されやすいが、個別株の物色意欲は引き続き旺盛だ。ここからの相場見通しと物色の方向性について、先読みに定評のある市場関係者2人に意見を聞いた。
●「3万6000円台乗せも早晩調整局面か」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
日経平均株価は強力な上昇トレンドを継続しており、3万6000円台での強調展開が見込まれるが、過熱感も強く意識される局面にありいったん調整局面に移行する可能性もある。ただ、下値では買い意欲が強く下げても深押しには至らない公算が大きい。
全般は大型株物色の流れが続いている。きょうも日経平均が大きく買われる一方、東証グロース市場指数が一時軟調に推移するなど、新興銘柄には物色の矛先が向きにくい地合いとなっている。主力どころは海外投資家の活発な買いが観測されているが、これは欧米投資家というよりは、アジア系資金、特に中国マネーが日本株を選好している背景がある。中国では外貨投資枠の規制があるものの、その中で日本株に対する投資熱が高まっている。上海市場に上場する日経平均連動型ETFが4本あるが、いずれも物色人気化しており、その中で最も人気の高いETFは、日経平均の理論価格に10%もプレミアムが付いた状態にあるという。日経平均の直近の目を見張る上昇は、こうした中国人投資家からの買いニーズが反映されたものと解釈できる。
ただ、日経平均は現在の企業のファンダメンタルズや金利の動向などから、3万4000円台後半が妥当とみられ、足もとでは明らかにモメンタム重視で買われ過ぎの水準にあるといってよい。したがって、早晩調整局面への移行を想定しておく場面といえる。下げる時もオーバーシュートする傾向はあるが、向こう1ヵ月でみて3万4000円台を割り込むことはなさそうだ。新NISAの導入に伴って、「成長投資枠」では個人投資家のニューマネーが高配当利回り株などを中心に流れ込みやすくなっている。また、「つみたて投資枠」では海外投信などが人気だが、為替市場では外貨を買う動きとして顕在化し、これが足もとの円安につながっており、結果的に株式市場では株高誘導材料となっている。
個別の物色対象としては引き続き半導体関連で、ソシオネクスト <6526> [東証P]やディスコ <6146> [東証P]など。また半導体素材を手掛ける化学株では四国化成ホールディングス <4099> [東証P]などがマークされる。一方、新NISAを意識した高配当株ではJT <2914> [東証P]に上値余地があるほか、連続増配で存在感を示す三菱HCキャピタル <8593> [東証P]などにも注目したい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「アクティビスト追跡ツール」など、これまでにない独自の投資指標を開発。
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