明日の株式相場に向けて=繚乱の兆しみせる「AI関連株」
きょう(16日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比282円安の3万5619円と7日ぶりに反落。ようやくというべきか、上昇一服場面となった。しかし下落幅は300円未満で1%にも満たない。「過熱感が強い」「買われ過ぎ」などと周りが騒ぐから仕方なく足を止めたというイメージだ。外野が何と言おうと、マーケットは聞く耳を持たずとはいわないまでも、受け流して約34年ぶりの高値圏を満喫している印象を受ける。
仮に日経平均が10%の調整を入れたとしてちょうど3万2000円近辺となるが、そこまでの下値余地を見込む市場関係者は現状ではほとんどいない。10%の調整すら許さないというムードで、だからこそ押し目ではピラニアが群がるように買い注文がなだれ込む。前日に東証が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について開示した企業のリストを公表したが、これには二の矢、三の矢があるという見方が市場筋の間ではもっぱらだ。“東証の本気”は海外マネーの日本株買いを誘導する強力な呼び水ともなり得る。売り板に群がるピラニアは東証の経営改善要請が好餌となっている可能性がある。
とはいえ、足もとで構築されている上昇トレンドには危うさもある。どこかでクラッシュが起きる可能性も否定はできない。しかし、空売り筋が勝負できる雰囲気が醸成されるまでには、まだ時間がかかりそうだ。個別株の動向をみると、 半導体関連などは中小型株が草刈り場になってきている。中小型株物色の流れは全体指数が重くなったところ、上がりにくくなったところからが佳境となる。そういう意味では、個人投資家にとっては今までよりも相場と対峙しやすくなる面もあろう。
半導体製造装置関連が物色人気の中心軸にあることに変わりはないが、流れに変化が出てきた。それを象徴するのがソシオネクスト<6526>の値動き。前週も取り上げたが、その後も波状的な買いが続いている。ファブレス形態で半導体(SoC=システム・オン・チップ)の設計・開発・販売を手掛けるが、「世界的なスマートフォンの販売不振が続き風向きは悪かった」(中堅証券アナリスト)という。しかし、次世代2ナノ品で台湾の受託生産最大手TSMC<TSM>と協業体制を築き、既にテストチップ開発に動いている。エッジAI搭載の次世代スマホで、ソシオネクスの存在感は一気に高まることが予想される。きょうはレーザーテック<6920>や東京エレクトロン<8035>が高値圏でやや買い疲れ感を垣間見せるのを横目に、ソシオネクスは一時2900円台に買われ、前週10日につけた戻り高値を払拭した。ここから次第に戻り相場が本格化しそうな気配だ。
半導体と表裏一体となっているソフトウェア分野が人工知能(AI)で、周知の通り近年は生成AI市場の急拡大がサーバーやネットワーク機器の増強ニーズを通じて、半導体需要を押し上げている。そうしたなか、株式市場では半導体関連人気から再びシステム系の銘柄にバトンが戻ってきたような印象もある。その象徴がさくらインターネット<3778>で、同社株の大相場が恒星の輝きを放ち、周りのAI関連株に活力を与えている。
AI関連の中低位株で強烈なパフォーマンスをみせているのがデータセクション<3905>であり、時価総額は依然として100億円前後で超小型株に位置づけられるが、株価はきょうまで3営業日連続のストップ高を演じ耳目を驚かせた。フィックスターズ<3687>もAI関連の雄で、直近材料が出たとはいえ上げ足を一気に加速させている。このほか人気化前夜の銘柄では、ICT事業に注力し「AIチャットボット」関連でもあるサイネックス<2376>や、プロジェクト管理ツール「Backlog」を主軸に需要を開拓し、生成AIを使った高付加価値化にも余念がないヌーラボ<5033>などをマークしたい。
あすのスケジュールでは、午後取引終了後に12月の投信概況、12月の訪日外国人客数が発表される。海外では10~12月期の中国GDP、12月の中国工業生産高、12月の中国小売売上高、12月の中国固定資産投資・不動産開発投資、インドネシア中銀の政策金利発表、12月の英消費者物価指数(CPI)、12月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)、12月の米小売売上高、12月の米輸出入物価指数、12月の米鉱工業生産・設備稼働率、11月の米企業在庫、1月のNAHB住宅市場指数、米地区連銀経済報告(ベージュブック)など。なお、この日はバーFRB副議長やボウマンFRB理事、ウィリアムズNY連銀総裁の講演などFRB高官の発言機会が相次ぐ。(銀)