金はレンジ形成、行き過ぎた利下げ期待の後退で調整 <コモディティ特集>
金は1月、米生産者物価指数(PPI)の下落を受けて押し目を買われる場面も見られたが、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測の後退を受け、戻りを売られて軟調となった。
昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融当局者の利下げ見通しが示され、利下げ期待が高まった。CMEのフェドウォッチでは3月から利下げを開始し、年末までに150ベーシスポイント(bp)利下げすることを織り込んだが、これは市場からは行き過ぎとみられた。その後、米消費者物価指数(CPI)や米小売売上高が事前予想を上回ると、利下げ観測は後退し、米ミシガン大消費者信頼感指数の上昇を受けて米FRBの3月利下げ確率が50%を下回った。
1月22日時点では5月に利下げを開始し、年末までに125bp利下げすることを織り込んでいる。ただ、金融当局者の「3回利下げ予想」とかい離しており、今後発表される経済指標で修正されるとみられる。
一方、イスラエルがガザに侵攻し、中東情勢の緊張が高まったことは金の下支え要因である。イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海で商船を攻撃したことを受け、米国を中心とする同盟国部隊が商船護衛を発表すると、米英軍がフーシ派の軍事拠点を空爆するなどした。ただ、イスラエルは22日、ハマスに対し、最長2ヵ月の戦闘休止を提案した。商船が紅海を迂回したことが今後のインフレ要因になるとみられているが、ハマスが提案を受け入れ、中東情勢が落ち着くようなら、インフレ鈍化を待つことになるとみられる。金の現物相場は1973~2088ドルのレンジを形成しており、金融政策の見通しを確認しながら方向性を模索することになりそうだ。
●国内金は円安再開が支援
国内金は1ドル=148円台後半まで振れる円安を受けて堅調となり、JPX金先限が昨年12月5日以来の高値9701円をつけた。23日の日銀金融政策決定会合では、春闘での賃上げ期待を受けて日銀のマイナス金利解除の見方が出ていたが、年明けの能登震災の影響もあり金融緩和の継続が決定された。また、昨年12月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年同月比2.3%上昇と2ヵ月連続で伸びが鈍化しており、引き締めを急ぐ必要もなかった。ただ、今年前半にマイナス金利が解除されるとの見通しも強く、どの水準で円が買い戻されるかを確認したい。
●金ETFは利上げ観測後退で投資資金が流出
世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、1月22日に858.93トン(12月末879.11トン)となった。米FRBの利上げ観測後退を受けて投資資金が流出した。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは1月16日に17万9893枚(前週18万8614枚)に縮小した。米FRBの利下げ見通しを受けて昨年12月26日に20万7718枚まで拡大したが、利下げ期待は行き過ぎとの見方から手じまい売りが出た。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース